可児宏暉選手と中国郭根生選手の試合評注(周荘杯)

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(写真の白ユニフォームの真ん中が可児さんです)

可児宏暉選手に周荘杯中国戦の評注を頂きました!

何と…強豪中国選手との引き分け棋譜の評注になります!!

はじめて出場する試合でポイントをあげることは大変なことです。本当に素晴らしい棋譜なので、みなさまお楽しみください(*´▽`*)

評注

2019年5月19日

2019周荘杯国際団体招待戦 準々決勝

持ち時間 40分+5秒

紅 郭根生 (中国昆山)

黒 可児

結果 引き分け

今回は、私が参加した2019周荘杯国際団体招待戦の準々決勝、中国昆山戦の対局を紹介したいと思います。 準々決勝というと少し聞こえは良いのですが、予選Aブロック1位通過の中国昆山チームと予選Bブロック最下位の日本チームの対戦なので、普通に考えれば圧倒的に中国昆山チームが優勢です。 ただ実戦は何が起こるか分からないので、諦めず全力で挑みました。

1. 炮二平五 馬8進7 2. 馬二進三 卒7進1

3. 車一平二 車9平8 4. 車二進六 馬2進3

5. 兵七進一 炮8平9 6. 車二平三 炮9退1

7. 炮八平七 車1平2

6回合までは中炮過河車対屏風馬平炮兌車のよくある形ですが、7回合の炮八平七がやや珍しい指し方です。 これに対する黒の指し方は馬3退5が最も多く、実戦例のほとんどがこの手を選んでいます。

私は炮八平七のこの形を詳しくは研究していなかったのですが、以前ソフトが推奨した車1平2の変化を少し調べたことがありました。 そして車1平2をちょうど直前の全日本選手権で服部さん相手に使って経験していたこともあり、「馬3退5で相手の研究に乗るくらいなら、こっちから定跡を外してしまおう」と強気に車1平2を選びました。

8. 馬八進九 車8進5   9. 兵五進一 馬3退5

10. 車三退一 炮2平5  11. 車三平六 炮9平7

11回合の車三平六からは時間を使って一手一手考えました。 すでに以前指した服部さんとの対局とは大きく展開が違うので、私にとっては経験がほとんどない形です。

12. 仕六進五(図1) 車8平5

(図1)

士六進五からの相手の狙いは分かりやすいのですが、それをどう受けるのかに非常に神経を使いました。 すぐに馬5進3だと、待ってましたとばかりに兵七進一とされて大変です。

本譜の車8平5はあまり自信がなかったのですが、ソフトの解析でも最善とのことでした。

 13. 帥五平六 馬5進3 14. 兵七進一 車5平3

14回合は相手も少し悩むかなと思っていたのですが、自信満々にノータイムで兵七進一と突いてきました。ただ実際にはあまり良い手ではなく、ソフトの評価でもすでに黒優勢です。 相手に油断があったのかもしれませんが、このあたりの読みに関しては時間を使って考えた私のほうが正確でした。

15. 炮七進一 車2進7

15回合の車2進7を見て相手もさすがにヤバイと思ったようで、20分以上開いていた時間の差もここから一気に縮まっていきます。 また団体戦の仲間の戦況を確認するため、自分の手番でも何度も席を立ち他の2人の対局を覗きに行くようになりました。 明らかに動揺している様子だったので、私は内心で「これは勝てる、団体としてもひょっとしたら・・・」と思いながらこの後の指し手を進めました。

16. 炮七平五 士6進5  17. 前炮進四 象3進5

18. 兵七進一 車3退2  19. 車六退二 馬7進6

20. 馬三退一 車2平3(図2)

(図2)

20回合、馬三退一と引かざるを得ないのではいかにも紅が苦しそうです。 黒は次の車2平3が相手の弱点を突いた冷静な後続手で、紅に立て直す間を与えずどんどん追い込んでいきます。 このあたり非常に良く手が見えて冴えていました。

21. 帥六平五 前車進2 22. 車九平七 車3進6

23. 仕五退六 車3退2 24. 馬九退八 炮7進8

25. 馬一退三 車3平5 26. 仕六進五 車5平7

27. 馬三進四 車7退1 28. 車六平三 馬6進7

26回合の時点で、2枚の象を削った駒得と馬の位置の差で大きく黒優勢です。 あとはどう勝つかを考えなければなりません。 本譜の車5平7から兵を取っての車交換も悪くない指し方でしたが、残局に課題がある身としては、車5平9から車を残す指し方を選ぶべきでした。

29. 馬八進七 卒5進1 30. 馬七進八 馬3進2

31. 兵九進一 卒5進1 32. 馬八進六 士5進6

33. 馬四進三 象5進7 34. 馬三進五 士4進5

35. 馬五進三 象7進5

相手は残局戦に慣れているようで、このあたり負けを覚悟した表情ながらノータイムで指し続けプレッシャーをかけてきます。 私もこれは絶対に勝てる残局だと分かっていましたが、経験不足と残局の力不足から、なかなか勝ちの図を頭に描くことができませんでした。

36. 馬三進二 卒9進1  37. 馬二退三 馬7進8

38. 馬三退一 馬8退9  39. 馬一進二 馬9進7

40. 馬二退四 卒5進1  41. 馬六進五 馬2進3

42. 馬五進七 将5平6  43. 馬七退八 馬7退6

44. 仕五退六 卒5進1  45. 仕四進五 馬6進7

46. 仕五退四 馬3進1

紅は士を上げたり下げたりしながら、黒の攻めの様子をうかがってきます。 最善かどうかは分かりませんが、このあたりの粘り方はさすが強豪といった印象で、指していて非常に困りました。

47. 仕六進五 馬1進3 48. 帥五平六(図3)  卒5進1

(図3)

時間もほとんどなかったため、やむなく卒5進1から2枚の士を取りに行く方針にしましたが、これは良くなかったです。 端に卒は残っているものの、現状使える攻め駒が馬二枚だけになってしまい、勝ちづらい残局になってしまいました。

49. 仕四進五 馬7進5 50. 馬四退五 象7退5

51. 馬八退六 象5退3 52. 馬六退八 馬5退4

53. 馬八退六 馬3退4

端に残っていた卒が取れられることが確定したので、馬5退4から馬交換を求め和になりました。 時間がないので馬交換を拒否して馬八進九とされると大変でしたが、相手も和で十分といった感じで正直ほっとしました。

まとめ

○総評  

経験があまりない布局でしたが、読みでそれをカバーし優勢を築けたのは収穫でした。ただあと一歩のところで残局の力不足が露呈し、最終的に勝ちきれなかったのは今後の大きな課題です。

結局団体戦もポイント数4―2で健闘したものの、中国昆山に負けてしまいました。

あとで話を聞くと、もし私が勝っていれば私より後に終わった所司先生が多少無理をしてでも和ではなく勝ちを目指して指し続けるつもりだったとのことで、そういった意味でも非常に悔しい引き分けになりました。

注:ポイント数3―3だと、規定により中国昆山の勝ち

○おわりに

今回はシャンチー(象棋)仲間の可児選手に実戦譜の評注を頂きました。

内容もとても素晴らしいです(*´▽`*)

可児選手には多くの評注を頂いていますが、どれも棋風の現れている素晴らしい棋譜ばかりです。可児選手には日本人には少ない攻撃的な棋風を持っている選手ですが、実際の人柄はさわやかな好青年です。いったいどこからこのような棋風が生まれていたのが・・・不思議です(笑)。

可児選手、これからも棋譜の評注等よろしくお願いします!(^^)!

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