田中篤選手によるシャンチー(象棋)局面考察

中残局・殺法

(写真は田中選手と上海の特級大師孫勇征選手、良い写真を発見!←撮ったのは私、笑)

今回は田中篤選手にシャンチー(象棋)の中局局面の解説を頂きました!

今月日本で試合があり、その時の棋譜から今回の記事を頂くこととなりました。

内容は初心者(~中級)の方を対象としています。 

普段対局相手と復盤をすれば相手に「この時どのように考えていましたか」等を聞くことは気軽に出来ます。しかし、日本ではあまり実際の対局機会を持っていることが少なく、復盤も一人で自分なりに考えることが多いと思います。そこで今回は対局の中から部分的に局面を取り上げ、その局面での田中選手がどのようにその局面を考えていたのか、記事にして頂きました! (ありがとうございます!)

それでは、記事をお楽しみください! 

(本文は田中選手の文章そのままです↓)

1つ目の局面

開局から中局にさしかかるところで、有利を拡大するためにはどういうことを考えてどう指せばよいか、センバツトーナメントの実戦を例に考えてみます。

図は黒が車4進6と炮取りをかけた局面。ジャン、殺、捉、こういう性質を持った手は先手を維持して攻撃を持続させる上で大事なものです。

炮取りになっているので、まずこの炮を逃げるかどうか。炮を逃げずに炮取り以上の強力な手があれば…というところですが、黒の車、炮、馬を取りに行く手はなさそうです。

ジャンになるのは炮五進三ですが、象3進5と守られると、車二平三の馬取りには馬3進5で、黒のコマが次々連携していきます。ということで、「炮取りを無視して強い手を指す」という選択はなし。

「炮取りを解除する」方針になりますが、解除するならするで、後々指しやすい展開になるように指さなければなりません。

そこで、私は炮八平七と指し、馬の利きで根をつけました。根がついて炮を取られずに済む以外に

・炮が動いたことで、車九平八と出られる(この局面では黒の炮取り)

・七路に炮が移動したことで、黒の馬を攻撃できる

・4路の黒車が縦にしか動けなくなる

と、思いつくだけでもこれだけの効果が見込まれます。黒としては炮取りに出るより、車4進5と図より一つ手前の位置で止まり、次の炮2進4(馬取り)を狙う方がよいように思います。(将来車九平八とされても、炮でこの車を抑え込む形になっている)

2つ目の局面

で、もう少し進んだのが図の局面。

馬7進6とされて私の手番。

素直に馬五進四と馬を取ると、車4平3と炮を取られたりしてややこしくなります。いい悪いは抜きにして狙いはあるので、こういう思いつきは嫌いじゃない。

「アイデアとしては面白いけど、ここではうまくいかないんだよね」と、士六進五と上がりました。まず車取り。炮八平七の解説で「車が縦にしか動けない」と書きましたが、ここでも車を縦に逃げるしかない。

縦に逃げるとどうなるかというと…「車4平3と炮を取る」が不可能となり、そこで馬五進四。駒得となりました。自分の駒を守るにせよ、相手の駒を取るにせよ、少しでも得になるような工夫が必要で、その工夫がうまくいったのが今回の局例でした。

大師レベルだと「なんでこう指すの?」という手がこういう工夫で、あとで劇的な効果が現れる、なんてこともよくあるので、そういうところに気をつけて並べてみる、のもいいかもしれません。

おわり

○おわりに

今回は田中選手に実戦譜から、2箇所の局面で田中選手がどのように局面を考え、自分の手を選んだのかと言うところを記事にして頂きました!ありがとうございます!

この対局の田中さんの対局相手がシャンチーの勉強をはじめたばかりの若手プレーヤーだったので、彼の勉強の参考になれば良いなと言う思いもこもっています!

田中選手、またよろしくお願いします(*´▽`*)

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