シャンチー(象棋)中国個人選手権の棋譜紹介【孫勇征選手対鄭惟桐選手】

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今回はシャンチー(象棋)中国個人選手権の準準決勝の第2試合の棋譜を紹介します!

はじめに

今回紹介する棋譜は準準決勝の第2試合目の対局です!

これは特級大師同士の重みのある対決です。紅は上海の孫勇征選手、黒は四川の鄭惟桐選手です。このお二人の対局は2014年の碧桂園杯でとても大きな注目を集めました!この大会で孫勇征選手はその年の全国個人戦優勝の鄭惟桐選手に勝ち、碧桂園杯の優勝で70万元の大賞を獲得しました。そしてその対決の棋譜はシャンチー史上の名局として後世に残りました。

さて、今回も再び重要な試合での二人の対決です!

この対局結果はどのように進んだのでしょうか…!

棋譜を見て行きたいと思います!

棋譜紹介

紅方:孫勇征

黒方:鄭惟桐

結果:黒勝ち

1. 炮二平五 馬8進7 2. 馬二進三 車9平8  

3. 車一平二 馬2進3 4. 兵七進一 卒7進1

5. 車二進六 炮8平9 6. 車二平三 炮9退1

両選手の開局はシャンチーで最も経典的とされる「中炮対屏風馬平炮兌車」の開局でした。この開局は初心者からベテラン選手まで多くの棋手が長年愛用している開局のため、この実戦例と攻防規律はトッププロの間ではほぼ熟知されています。そのため、逆にトッププロの試合では、この開局を使うことはあまり多くありません。 今回の両選手はあえてこの開局で勝負し、まっすぐぶつかり合う一局が始まりました。

7. 馬八進七 車1進1 8. 炮八平九 車1平6

第7回合での黒の車1進1は激しい選択です。

ここでは士4進5の変化がより多く指されます。士4進5の変化は平穏です。この手から、黒の求勝心を伺うことが出来ます。

9. 馬七進六 士6進5 10. 車三退一 炮9平7

第9回合で紅が馬七進六と指した手は黒の炮9平7の手を防ぐための手です。

第9回合で黒が炮9平7と指すと、馬六進五馬7進5(馬3進5車三進一と進むと紅が大優勢です)車九平八炮2平1兵五進一士6進5兵五進一馬5退7車三平七車6進1兵五平四と進むと、紅は攻勢が強く有利です。

11. 車三平八 炮2平1 12. 兵三進一 馬7進8

13. 車九進一 炮7進6 14. 炮九平三 馬8進9

第13回合の紅の車九進一は車九平二と指し黒の馬と車を牽制する狙いがあります。そのため、黒が炮を紅の馬と交換し、黒の馬を前に進めるのは自然な流れです。

ここまで、お互いに棋譜と棋理に従う王道な開局して来ました。

お互いに戦える局面になりました。ここから中局の力の勝負です。

15. 炮三平一 車6進4 16. 車九平六 象7進5

第16回合で紅には馬六進五馬3進5炮五進四と進める選択肢もあります。そのように進めると局面が平穏になります。実戦で紅はもう少し複雑な変化を保留するため、馬を交換しませんでした。

17. 仕六進五 馬9進7(図1) 18. 炮五平七 卒3進1

(図1)

第18回合で紅が炮五平七と指し、威力の強い中炮を外した手は敗着のようです。もし相の上がる位置を作るのであれば、ここでは馬六進五と指す手もあったかもしれません。その後馬3進5炮五進四と進むのは自然な着法です。

また、黒の左側の2つ車と馬による可能な攻勢が強いため、ここでは車八平四と指して車を交換する(ついでに黒卒3進1の先手を避ける)のも選択肢としては良いかもしれません。

第18回合で紅の七路の炮が黒の3路線を狙っていますが、黒は恐れずに卒3進1と指しました。黒のこの対攻の手は深く計算し、黒が有利になれると判断した上の手で、勇気と知恵の溢れる妙手です。

19. 車八退三 車8進9 20. 兵七進一 車8平7

第19回合での紅の車八退三は次に黒が卒3進1と指した場合、紅が炮七進五卒3平4車八平三と進め、馬をとる先手がある手です。もちろん、第19回合で黒は簡単に紅の罠にかかることはありませんでした。

黒の車8進9は紅の弱点を突いた一撃です。

21. 馬六退五 炮1進4 22. 兵七進一 馬3退1

第21回合で、黒には次に車7平6士五退四車6進4の殺があるため、紅の馬六退五は唯一の選択です。

第22回合、紅が間違えて炮七進五と指すと、黒は馬7進5で、次に車7平6の殺があります。

第22回合で黒が馬7進5と指すと、紅は炮一平四で対抗することが出来ます。

23. 相七進九 炮1退2 24. 車八進三 車6進3

第23回合で紅は炮七平三と指し、コマ交換で局面を簡単にした方が良かったようです。理由は、黒の左側の双車馬の攻勢が強すぎるためです。

第24回合の黒の車6進3の目的は次に車6平5車六平五車7平6と進め、殺にすることです。

25. 炮七退二 車7平9 26. 炮一平二 車9平8

第25回合で紅が炮七平三と指すと、黒は車7退2でコマ得することが出来ます。

27. 車八平二 象5退7 28. 馬五進七 炮1平6

第27回合の紅の車八平二は最後の敗着のようです。紅の八路の車には黒の1路の炮を牽制する役割があるため、簡単に動いてしまうのは危険です。ここでは、紅が炮二平一と指し車6平9馬五進三車8退3馬三進五車9退1車六進一と進むと、黒がコマ得で優勢ですが、紅のコマの位置が良いので、まだ頑張れるチャンスがあるかもしれません。

第28回合の黒の炮1平6は妙手です。次に炮6進5と指し入局することが出来ます。

29. 仕五進四 炮6平5(図2)

(図2)

第29回合で紅の士五進四は最後の頑張りの手です。

第29回合で黒には車6平4も車6進1も、すぐに殺がありません。黒の炮6平5は正しい攻撃です。次に紅が士四退五と指すと、車6進1炮七平四車8平6と進み絶殺です。もし次に紅が馬七進五や車二平五と指すと、黒は車6平4と指し、車得することが出来ます。

ここまで、紅が投了しました。


〇おわりに

この試合は、王道で人気のある平炮兌車の開局の1つの経典的な戦例になりました。紅の中局で中炮を外すなどのほんの僅かの軟着により、黒はチャンスを掴み、凄まじい攻撃を展開して、見事に勝利を獲得しました!

とても勉強になる一局でした!

おわり

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