シャンチー(象棋)甲級リーグの棋譜紹介【李少庚選手対王天一選手】

実戦譜を見る

今回はシャンチー(象棋)の甲級リーグの棋譜を紹介します!

はじめに

今回紹介する棋譜は甲級リーグの第1試合の李少庚選手(深圳)と王天一選手(杭州)の快速戦の棋譜です。

今年の甲級リーグは引き分けがなくなり、1試合目(20分+5秒)が和だった場合快速戦(5分+3秒)を行います。そしてその快速戦が引き分けだった場合、紅は6分+3秒、黒は4分+3秒で引き分けだった場合黒の勝ちになる対局を行います。

今回見て行く棋譜は紅6分+3秒、黒4分+3秒の3局目の快速戦の棋譜です。

紅の李少庚選手は勝たなければ負けになってしまいます。

レイティングトップの王天一選手に対して李少庚選手はどのような対局をされたのでしょうか…!

見て行きましょう!!(*´▽`*)


ちなみに…この棋譜はYoutubeで紹介するかブログで紹介するか悩んだのですが…長いのでYoutubeで話すと喉がかれそうだな…と思い、ブログで紹介させて頂くことにしました!(理由…|д゚)笑;;)


棋譜紹介

紅方:李少庚

黒方:王天一

結果:紅勝ち

(長い対局なので紅が優勢局面になるところまで詳しく見て行きます。)

  1. 兵七進一  卒7進1    2. 馬八進七  馬2進3

  3. 炮二平五  馬8進7    4. 馬二進三  車9平8

5. 馬七進六  象3進5(図1)    6. 炮八平六  車1平2

(図1)

第5回合までで中炮先鋒馬対屏風馬の開局になりました。この開局は伝統的な開局の一つです。

第6回合では炮八平七と指し、黒の3路の馬を炮で攻撃して行く指し方も大丈夫です。李さんは過去の試合でもこの開局を多く採用しており、ほとんどが炮八平六を採用しています。そのため、この開局は詳しく研究されている変化だと思います。

7. 車九平八  炮2進6(図2)    8. 車一平二  炮8進6

(図2)

この開局は紅の六路の馬の位置は良いですが、2つの車の動きが炮により規制を受けやすい変化です。ここまでで黒は空間的な優勢を持ちました。黒としては不満のない開局です。

例えば第8回合で紅が車一進一と指しても同じように炮8進6とされて紅の車は出ることが出来ません。また、第8回合の局面では紅には士四進五、相三進一と指し、一路の車を四路から出動させて行く指し方もあります。

第8回合の黒では炮8進4の手もあります。炮8進4と指すと仕四進五卒3進1兵七進一象5進3相三進一と進み、紅の車は再度車二平四と指し使って行きます。 

9. 馬六進七  馬7進6   10. 兵五進一  馬6進7

第9回合の紅の馬六進七は次に兵五進一と指して行くための手です。ここで直接兵五進一と指すと、黒には炮2退3の手があります。

第9回合で黒が士4進5と指すと、紅は炮六平七と指し、次に馬七進九と指す攻撃が出来ます。(例えば士4進5と指し、炮六平七馬7進6馬七進九車2進2炮七進五車2平3車八進一と進むと紅はコマ得です)

黒の王選手は馬を跳ね、空間的な優勢を拡大して行きます。

第10回合で黒が士4進5と指し、兵五進一馬6進7兵五進一馬3進5馬七進六と進むと、紅の馬は車と馬の両あたりになり、紅は優勢です。

 11. 兵五進一  馬7進5   12. 相三進五  卒5進1

13. 馬七退五  士6進5   14. 士四進五  車8進3(図3)

(図3)

ここまでで紅の2つの車は空間的に規制がかけられていますが、2つの馬と炮は比較的動きやすい位置にあります。紅には馬三進四や炮六平七等の先手があります。そのため、この局面はどちらも指せる局面ですが、やはり若干黒が指しやすいように見えます。また、この局面は必ず勝たなければいけない紅にとってはあまり理想的な局面ではありません。黒は引き分けで勝ちになるため、局面を簡単にしたければ車2進3と指し2つの車に根を付け、車交換を狙うことも出来ます。

(実戦ではここまでの局面で紅黒ともに持ち時間は3分以下でしたが、紅は次の馬三進四の手を長考し、紅はここで持ち時間が35秒ほどになりました。)

15. 馬三進四  車8平6(図4)   16. 馬四退六  車2進4

(図4)

第16回合の馬四退六は妙手です。紅の馬は連環馬になりました。次に紅には兵七進一や炮六平七と指し、黒の馬を攻撃して行く手があります。黒の8路の車の位置は良い位置だったので、車8平6以外の手もあったかもしれません(車2進4なども考えられる選択です)。

 17. 炮六平七  炮2平4   18. 車八進五  馬3進2

19. 兵七進一  馬2進1(図5)   20. 炮七平八  車6平2

(図5)

ここまでで車が1つ交換され局面は簡単になりました。黒は車交換のタイミングで馬を前に進めましたが、8路の炮の位置はあまり良くありません。紅には士を上げて炮の根を切る先手があります。また紅には過河兵が出来、攻撃のコマが増えました。

21. 炮八進二  馬1進3   22. 兵七進一  車2進1(図6)

(図6)

紅は第20回合で紅は炮七平八と指し、炮を沈底炮へ使ってゆく準備をしました。これに対して黒は炮を来させないために車6平2と指しました。次に黒の車2進3と指されると空間が狭くなるため、紅は第21回合で炮八進二と指しました。紅には次に兵七進一や炮を中路に回して行く攻撃があります。

ここまでで紅の局面は少しずつ指しやすくなってきました。(ここまでの流れを見ていると、黒の第15回合の車8平6から流れが変わったように見えます)

第21回合で黒が象5進3と指し、士五進四炮8平7炮八平五と進むと紅には攻撃があり、満足な局面になります。そのため黒は兵をとることなく、馬1進3と指し炮を攻撃しました。もしも紅が直接炮八平五と指し中炮へ移動させると黒は車を6路へ移動させ安全な局面になります。実戦では第23回合で炮八平五と紅が指してから黒の車は左側へ移動させることが出来なくなりました。

 23. 炮八平五  馬3退4   24. 馬五進四  将5平6

第23回合で黒は馬3退4と指し、紅の馬に車があたりました。実戦では、この手を指すあたりで黒は持ち時間が10秒ほどになりました。紅も20秒を切り緊張感のある対局になりました。

 25. 馬四進二  将6進1   26. 士五進四  炮8平7

第25回合で紅が炮五平四と指し、車2平6馬四退二車6平4と進むと、紅には次に炮四退二や士五進四などの手があります。

第26回合で黒が炮8平6と指し、車二進六車2平6車二平三炮6平7相五進三と進むと、紅には次に車三進二と攻撃して行く手があり、黒は危険です。

 27. 車二平三  車2平5   28. 車三進一  車5進1

第27回合で黒が炮7平6と指すと、帥五平四と指し、次に車三進一で紅はコマ得です。

(この辺りは実戦ではお互いに5秒ぐらいの持ち時間でした。加算が3秒なので基本的に時間はたまることなく、ここから最後までずっとポコポコ指している状態が続きました。ここまでもとても緊張した試合観戦でしたが…、この辺で審判員も入力が追いつかなくなり盤の更新がされなくなりました…(´;ω;`)ガーン)

29. 車三平六(図7)  車5平8   30. 馬六退五  馬4退3

(図7)

第29回合までで紅は優勢局面になりました。

実戦はお互いに3秒ぐらいで指していた試合なので、細かい解説はここまでにします。

 31. 馬二退三  将6退1   32. 車六進五  馬3進1

 33. 馬三退五  馬1進2   34. 后馬退三  卒9進1

35. 車六平一  馬2進4   36. 帥五平四  車8平5(図8)

(図8)

確かに紅はコマ得で優勢ですが、1つの馬が自陣にあり攻撃に使うことが出来ず、紅も苦労して進めています。

(ちなみに…ここ辺りで試合のライブ中継が実際の盤のモニターにかわり復活しました!嬉しい(∩´∀`)∩)

 37. 馬五進三  将6平5   38. 車一退一  車5退2

 39. 車一進一  卒1進1   40. 前馬進二  車5進3

41. 兵一進一  車5平8   42. 馬二退三  馬4退5(図9)

(図9)

紅は優勢ですが、コマの位置が整わず(とくに馬の位置が良くないです)、勝つのも簡単ではない局面です。お互いに持ち時間の少ない対局ではこのような局面でミスが出て勝ち切れないことも多くあります。ここから先は棋譜の内容と言うよりは時間が問題と言った感じの実戦でした。

 43. 士六進五  馬5退3   44. 前馬退五  馬3進4

 45. 馬五退七  車8平6   46. 馬三進二  車6平8

 47. 馬七進八  士5進6   48. 馬二退三  士4進5

 49. 兵一進一  車8平6   50. 帥四平五  卒7進1

 51. 車一平二  卒7平8   52. 馬八進七  将5平6

 53. 車二平九  象5退3   54. 車九平三  象7進5

 55. 車三平二  卒8進1   56. 車二進三  将6進1

57. 兵一進一  馬4進3   58. 帥五平四  馬3退4(図10)

(図10)

このあたりで紅の勝勢局面になりました。紅は兵を進めて行けば基本的に勝つことが出来ます。

 59. 帥四平五  車6平7   60. 馬七退六  車7退3

 61. 馬六退四  車7進1   62. 馬四進六  車7退1

第61回合で黒が車7平9と指すと車二退一将6退1馬四進三と進み、ジャンで車をとられます。

 63. 馬六退四  車7進1   64. 馬四進六  卒8平7

 65. 兵一平二  馬4進3   66. 帥五平四  卒7進1

 67. 兵二進一  卒7進1   68. 馬三進一  車7退1

 69. 兵二進一  士5進4   70. 車二平五  士6退5

 71. 馬一進二  車7平4   72. 兵二平三  将6進1

73. 車五平二(図11)

(図11)

次に車二退二で紅の勝ちです。


○おわりに

この一局はライブ中継で王斌さんの解説を聞きながら観戦していたので、とても勉強になった一局です。お互いに持ち時間が10秒を切ってからも手は止まることなくポコポコポコポコ続いていました。プロの快速戦のレベルの高さを感じた試合でした。

時間がない中でも攻撃を考えながら進めて行き、最後の殺法局面になった時は感動しました!シャンチーの観戦は勉強になりますし、色々な面で刺激にもなります!!(*’▽’)

甲級リーグの後半戦も楽しみです!!


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