シャンチー(象棋)のハンデ戦について

棋論・考察

今回はシャンチー(象棋)のハンデ戦についての記事です!

はじめに

○ハンデ戦について

シャンチーでは対局者同士のレベル感が異なる場合に、先に2手指すことやコマを減らす等のハンデを付けることがあります。

中国などに遊びに行くとこのようなハンデ戦に出会うこともちょこちょこありますが、日本国内の選手同士の対局でこのようなハンデが用いられることはあまり多くありません。

国内でシャンチーを勉強している層の中で、もしもある程度のレベルの違いがあったとしてもそのぐらいの差の中ではハンデを付ける必要はないのかな…と思います。(シャンチーのハンデはとても大きいので…一般的にそれぐらいのレベル感ではハンデは付けません)

ちなみに中国の特級大師に前に「私にハンデをくれるならどれぐらいくれる??」と聞いてみたことがあるのですが、「僕が負けてもいいならいくらでもあげるけど、ちゃんとした内容にするのであれば2先でしょう!3先は…やってみてもいいけど…あげたら大変だ」と言われました。内心…「それだけ??」と思いました(が、それはケチなのではなく、実際に2先はそれぐらい大きなハンデと言うことです)。

また日本のまわりのシャンチー仲間の中では、人によっては研究の主軸を開局に置いている方もいらっしゃいますので(主軸にしていなくても皆さんそれなり以上に開局を学んでいらっしゃいます)、そのような方にとってハンデ戦でコマの位置が異なると勉強してきた局面にならず逆に指しずらい…と言ったことも起こり得ます。(これはわりとアルアルかもしれません…)


○プロとアマチュアトッププレーヤーのハンデはどれくらいか…

シャンチーの本場中国のアマチュアプレーヤーは非常に高いシャンチーのレベルを持っており、大師のタイトルを持っているような方とも互角に戦えるような方が多くいます。そんな中国で以前アマチュア選手の大会で優勝した方と中国のトッププロ王天一選手が対局すると言うイベント大会がありました。その時に採用されたのが2先と言われる先手です。(2先のハンデについては下↓をご覧ください)

結果は2先のハンデでアマチュア選手がレイティングトップの王天一さんに勝ちました!一見そんなに大きくは見えないかもしれませんが、レベルの高い選手同士では2先は非常に大きなハンデになります。

そもそもシャンチーは紅が先手で始まりますが、先手の紅の勝率は37%、黒の勝率は28%、引き分け率は35%ぐらいとされており、元々普通の対局でも紅の勝率は黒よりも高いです。そのことを考えると2手先に指して始まるのはそれだけでも実はとても大きなハンデだと言えます。


↓こちらの記事の中にもハンデ戦について書かれた箇所があります


ハンデの種類について

よく使われるハンデをハンデの軽い順に紹介します!

↓↓↓

1、2先(紅が先に2手指してから黒が一手目を指し、その後は普通に一手ずつ交互に指す)

2、3先(紅が先に3手指してから黒が一手目を指し、その後は普通に一手ずつ交互に指す)

3、馬1枚落ち(一般的には馬が1枚ない方が先に一手指して対局が始まります、4、5↓も同じ)

4、馬2枚落ち

5、車落ち(相手ははじめの一歩で相手の馬を炮でとることが可能になりますが、このハンデ戦の場合、一般的に車に守られていない馬が一度動くまでとらない決まりで対局します。そのような決まりがない場合必ず車落ちの方は馬を一手目に上げる開局か、馬の前の炮を動かす開局しか指せず、練習になりません)


上記とは別に

・9枚落ちハンデ(士相と兵を全て落とすハンデです。この場合も士相兵がない方が先に一手指して始めます)

と言うものもあります。

このハンデはハンデをもらう側にとっては相手の守り駒や兵がないため攻撃がしやすいですが、ハンデをあげる方にも大きいコマが動きやすいと言うメリットがあります。なのでハンデをもらう方も相手のコマの早い動きに気を付けなければいけません。(おそらくハンデをあげる方にしてみればコマを出してどんどん攻撃して行こう!と言う指し方になると思うので…)


ちなみに・・・

普通の対局は紅から指してはじまるので、2先、3先と言った書き方とそろえるのであれば、紅の1先ということになります(そのようには呼びませんが理論上はそう言うことです)。

また、一般的にシャンチーでは炮を落とすハンデは採用されていません。理由は、炮は開局での移動速度が速いためです。馬と炮ならコマの価値は同じように考えられますが、馬は初期位置から戦闘場まで進むために手数がかかります。しかし炮は開局ですぐに要所へ動くことが可能です。そのためシャンチーの開局段階で炮を落とすことは非常に大きなハンデになります。(だから採用されない)

色々

○ハンデ戦についての考察等

ハンデ戦は一般的に対局者同士の間で明らかなレベルの差がある時につかいます。

個人的に2先と3先のハンデの重さを理解する(対局の中で感じとる)ことが出来ることはシャンチーに対して一定以上の理解が出来ていることだなと思います。2先3先はその特性を理解して戦略を組むことが出来るようになると非常に奥の深いハンデです。

上の方でトッププロとアマチュア選手が2先ハンデで対局する大会についてお話ししましたが、そのような対局レベルになると2先には非常に大きな差がありますが、このハンデの本質を知る前の段階のレベルでは、そのようなハンデ戦を行ったとしても、お互い(ハンデをあげる方ともらう方)に2先や3先のハンデにそんなに大きな差を感じとることが出来ないかもしれません。

また、こちらも上で触れましたが、本来2先や3先で進む局面は開局の研究などをしている人にとって2先や3先の局面は絶対に現れない局面なので、そのようなハンデ戦はあまりやらない方が良いと言う考えを持っている方もいるようです(趣味で指す分にはあまり気にすることではないと思います)。


○ハンデを決める時の方法

とくに専門的に勉強しているわけではない方同士の対局では、おそらく一度馬1枚落ちで指してみることが良いのかな~と思います。馬1枚落ちで相手に簡単に勝てるのであれば馬2枚落ちにする、と言う感じで対局をします。もしも馬1枚落ちで相手が勝つことが出来るのであれば3先、2先として行くのが良いかな~と思います。

ただ、もしも3先2先で対局をしていてお互いにそのメリットが分からない、ないしはあってもなくても変わらない…と感じることがあるようでしたら、いっそのことハンデなしで対局をするのも良いかな~と思います!


○その他

ずっと前にシャンチーの初心者講習会で、初心者の方(本当に0からコマの動きを覚えたばかりの方)とスタッフが対局するときスタッフは馬2枚、車2枚、炮2枚すべてをとって対局をしたこともありました。この指し方の目的は簡単な殺法などを講習会で紹介するので、その知識を活かして、相手に勝つ方法を考えてもらうことです。(こちらには攻撃のコマが兵しかないので基本的には相手も苦労なく勝つことが出来ますが、本当に棋類の経験がないと勝ち方が分からず、兵だけに負けることも数十局に1度ぐらいはあります←これは全く分からない方の例ですが…)


おわりに

少しだけ私のハンデ戦の経験を書いてみます。

○私のハンデ戦経験

私は昔ベトナムのお友達にハンデ戦をしてもらったことがあるのですが(2先)、ハンデ戦では20回合ぐらいでボロボロにされ、逆にハンデ戦ではない対局では40-50回合ぐらいの安定した負け方(←どんな…と言う感じですが…穏やかな残局戦をしっかり負かされた感じです)をしました。

その友達と話していて言われたことは

「あなた(私)は開局を研究しているからハンデなしでも開局から中局まで上手く入ってしっかりした棋譜になる、だけど中局から残局になれば指した経験の少なさが出て弱点が見えやすくなるし、開局段階が終わるとあなたは局面の方向性が少し違うところに進んで行く(つまり発展の方向がちがう)みたい。ハンデ戦になると開局の研究は役に立たず、早い段階から全ての局面で局面の判断力が求められる。だけどあなたはこれまでに見たことのない局面の判断が遅く時間を使い過ぎたり、判断が正しくないことが多く弱点を突きやすかった」と言うことでした。

簡単に言ってしまえば、2先や3先では根本的な棋力の違いが分かりやすくなるのだろうな~と思います。

ただ本当に自分よりも強い人と2先のハンデ戦の対局をすると、すぐに局面の弱点を突かれて負けてしまったりはするのですが、一局が短く、悪かった手がはっきりするのでとてもシンプルに一局の学びがまとめられた記憶があります。そのため3時間ぐらいで数局指した後の学んだ感がとてもあって、充実した時間だったように思います^^


そう言えば昔こんなこともありました…↓

シャンチーの国際イベントに行った際にマレーシアのとある選手に「僕と一緒に対局しようよ」と何度も(ここ強調!)誘われたのですが…当時はあまり自分に自信がなかったので(今も自信はないですが)断っていたところ「じゃあ僕の炮あげるよ!だから対局しようよ」と言われたことがあります…。当時はそれでもちょっと私はこの人と対局するのには申し訳ないレベルかな…と思っていたので、「将くれるならやるよ(もはやハンデではない)」とサササ~とかわして逃げたのですが…

今思うと…

一応国際大会に何回か出たぐらいのレベルだったら炮をもらえば案外勝てたのでは…と思ったりして「やっとけばよかった~~」と地味に後悔しています…笑(案外楽しめたかな~と…)。

なので皆さん!

海外に行ってハンデ戦に誘われたら気軽にジャンジャン対局しましょう!

わりと楽しい(はず)です!


○おわりに

今回はシャンチーのハンデ戦についての記事でしたがお楽しみ頂けましたか?

少しでも興味を持って頂けたなら嬉しく思います!


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