所司和晴選手に実戦譜の評注を頂きました。
所司選手は日本シャンチー(象棋)界の第一人者として、現在も多くの国際試合に参加されています。今回は先月行われた「2019周荘杯国際団体招待戦」の評注を頂きました。強豪である地元中国チームの選手との棋譜です。
○ みなさん、お楽しみください!
○●○●○●○●
紅方 所司和晴
黒方 高建宁
結果 引き分け
1. 相三進五 馬2進3 2. 兵七進一 炮8平5
3. 馬二進三 馬8進7 4. 車一平二 車9平8
5. 炮二進四 馬7退9
私が紅方で布局は飛相局対右起馬から左中炮となりました。 これは飛相局の中では比較的多い布局の1つです。黒方は右馬の動きは押さえられますが、車の動きを速めて戦う指し方です。
私の5着目炮二進四の封車は馬八進七、車8進4、炮二平一の布局を普段は多く採用しています。 本局の布局も一時研究を深め、連採した時期があります。
対して馬7退9も布局の1つです。 世界選手権や国際名人戦で経験があります。他では炮2進7、車九平八、車1平2、炮八進四の布局もあります。 馬7退9に対して炮二進一や炮二退一を採用したことがあります。 本局の布局は実はあまり経験がないです。
6. 炮二退二 車8進4 7. 馬八進七 卒3進1
8. 兵七進一 車8平3 9. 炮二平七 馬9進7
10. 車二進四 卒7進1(図1)
10着目黒方卒7進1(図1)では馬3進4を予想していました。
本譜なら紅方がリードできそうに感じましたが、実際は難しいです。
11. 馬七進六 炮2進3 12. 炮八平七 車3平4(図2)
図2の局面で車九平八と指しましたが、この局面は一見すると後炮進五でコマ得できそうです。しかしそれに対しては馬7進6と指されると紅方は先にコマ得しても大変です。
13. 車九平八 馬3進2 14. 車八進四 馬2進4
13着目黒方馬3進2など秘術を尽くした攻防に感じました。
さすが本場中国の選手です。
15. 後炮進一 馬4退6 16. 前炮平五 車4進2
15着目黒方馬4退6は渋いです。馬7進6もありますが、後炮平六とブロックされる形なのでバックして次のチャンスを待ちます。
17. 車八平七 炮5進3 18. 車二平五 象3進5
18着目単に車二平五と取り返します。 炮七進六、士4進5のジャンを入れるのは炮が負担となり味消しです。車二平五に馬6退4の両取りは車五平六で紅方大丈夫です。 お互いミスのない攻防が続き、ほぼ互角の形勢です。
19. 兵三進一 士4進5 (図3)
19着目黒方士4進5(図3)は罠を狙った手です。
もし兵三進一とすると車1平4、士四進五、馬6退4の両取りで決まります。 私はそれを受けて先に士四進五から車五平四で先受けして辛抱します。
20. 仕四進五 車1平4 21. 車五平四 卒7進1
22. 車四平三 馬7進8 23. 兵九進一 馬6進4
23着目紅方兵九進一は地味ですが、いずれ炮七退一と形を整える可能性が高いので必要な手と思いました。
24. 車三平二 後車進4 25. 炮七退一 前車進2
26. 馬三進四 馬8進6
26着目黒方前車進2とされ、次に馬4進5を狙われました。
このあたりでどうも紅方不利になってきたと感じました。
相五退三も考えましたが、コマの連携が悪くなり危険です。 それで意を決し馬三進四で対抗しました。相を取られてしまいますが、コマが少なくなれば守り切れるかもしれません。
27. 車二平四 馬4進5 28. 車四退二 馬5進3
29. 帥五平四 後車平8 30. 炮七平五 卒5進1
30着目紅方炮七平五に期待しましたが、卒5進1で軽く受けられるとすぐに反撃は出来ません。 ただ黒方の車の動きも限定されるので、バランスは取れています。 再度車七退二で馬を押さえ、黒方も難しいです。
このあたりでお互い残り時間は2分ぐらいです。 5秒加算だけなので、切れ負けに近いです。 高選手は1分ぐらい考えてから黒方十分ながら勝ちを狙うのは難しいと判断され、馬3進1からの繰り返しになりました。
31. 車七退二 馬3進1 32. 車七平九 馬1退3
33. 車九平七 馬3進1 34. 車七平九 馬1退3
35. 車九平七 馬3進1 引き分け (図4)
私の方も若干苦しさを感じましたので、引き分けとしました。
お互いベストを尽くした好局だったと思います。
私としてはいくつかのわなを見破り、しっかり対応できました。 本局でようやく引き分けが取れ、ほっとしました。 周荘杯全体ではいい内容が多かったですが、5秒加算のみは厳しく、0勝3敗1和でした。
レベルが高い大会で、どの対局もいい経験になりました。
○おわりに
所司選手、評注を頂き、ありがとうございます!
今後のご活躍も応援しています!(^^)!
コメント