鄭一泓さんがスターターになって下さった「トークリレー」ですが、第二走者にバトンがまわりました!!2人目にバトンを受け取ってくれた方は、汪洋さんです。
汪洋さんは2018年の中国個人戦で優勝された、中国の特級大師です。
鄭さん、中国シャンチー(象棋)界を代表する素晴らしい選手にバトンを渡して頂き、ありがとうございます!
中国個人選手権について
Q、まずはじめに、中国個人戦の優勝、おめでとうございます。(おそらく何度も聞かれて何度も答えていることと思いますが、)試合の簡単な総括と感想を聞かせて下さい。
A、今回の個人選手権は波乱万丈な試合でした。中でも許国義選手との試合はとても危険な局面になり、ほとんど負けが決まったような局面でした。しかし、私は諦めずに指し続けました。最終的には相手は持ち時間が少なかったため、勝つチャンスを逃しました。そして二局目の快速戦で勝ち、次の試合に進むことが出来ました。 この一局以外は全て内容的には満足しています。
私のプロとしての生涯において個人選手権の優勝は宿願でした。2005年と2012年の個人選手権では優勝するチャンスがありましたが、様々な原因からミスが出てそのチャンスを逃してしまいました。そして、今回の個人選手権で、ついに私は自分の運命をつかむことが出来ました。
最終ラウンドの一局は陳泓盛選手との試合でした。精神的にもとても安定していました。そして素晴らしい内容の試合を指すことが出来、優勝することが出来ました。
一人のプロ棋士として、高い目標に挑戦し続けることは天職です。私は優勝することが出来、「棋王」(中国個人選手権で優勝するとそのように呼ばれます)になることが出来、心から嬉しく思います。
Q、個人戦の棋譜を拝見させていただいたのですが、先手では仙人指路を多く採用されていたと思いますが、今回の試合は仙人指路を多く採用される予定だったのですか?
A、布局に関しては、私はとくに仙人指路の開局が好きです。もちろん対局相手を見て異なる戦略を採用します。
柳大華先生の印象
Q、汪洋選手は柳大華先生のお弟子さんだと伺ったことがあります。またシャンチーの勉強で柳大華先生に実戦譜を暗記するように教えられたと言うお話しを聞いたことがあります。当時読んでいた棋譜や勉強方法、柳大華先生の授業で印象に残っていることなどを教えて下さい。
A、そうです。私の恩師は柳大華先生です。
柳大華先生の教えは棋譜を暗記することを主とした内容でした。私はシャンチーの勉強をしていた段階では多くの棋譜を暗記しました。暗記した棋譜には全ての種類の開局が含まれています。あの当時はまだパソコンは普及しておらず、全て本の棋譜を暗記していました。本の中からも暗記する棋譜は出来るだけ良いものを選びました。
私の中で最も深く残っている柳大華先生の印象は、先生がとにかく忙しい人だったと言うことです。会うことも難しく、出くわすことは滅多にありませんでした。
柳大華先生は私たちに一番新しい試合の棋譜から、色々な変化を並べて教えてくれました。しかし、棋譜を並べる速度はとても早く、全部を理解しきる前に並べ終わり、先生が帰ってしまうことがよくありました。そのあと私は長い時間をかけ先生の授業を思い出し、そしてまた自分でもその棋譜を研究しました。
苦しかった時期に生まれた思い
Q、シャンチーを始めて最も辛かった(苦労した)時期のことを教えて下さい。
A、私が専門棋士になるための訓練を始めて以降、一番苦しかった時期は試合で結果が出せるようになるまでの時期です。当時は試合がとても少なく、一年に2、3個の試合しかありませんでした。そのため、試合以外の時間はひたすらシャンチーの勉強に打ち込みました。この過程で最も難しいことは孤独に耐えることでした。毎日毎日誰とも話すことなく、一人で盤と向き合いました。
また残った時間でどうにか試合へ参加するための費用を稼がなければいけませんでした。私の家はそんなに経済条件が良くありませんでした。そのため早くから私のシャンチーの勉強費をサポートすることが難しい状況になっていました。
この生活の中で、私に一つ変わることのない信念が生まれました。家族の大きな支えに対して、「私自身が他の誰よりも努力して、成功しなければいけない」と言う思いです。
勉強方法の変化について
Q、シャンチーのプロになるためにどのような勉強をされましたか。また、プロになった後、どのようにして自分のレベルを保っていますか。(まだ自身に進歩する空間がある段階の勉強と、プロのレベルに到達してからの勉強方法の違いを教えて下さい)
A、プロの棋士になるためには骨身を惜しまない訓練をするしかありません。
他の優秀な棋士のミスや、高い技巧を分類し、総括し、自分のものにします。プロの棋士になってからはその中でさらに上に行くために、誰よりも真面目にシャンチーと向き合わなくてはいけません。そしてまた、勇気をもって新しいものを作らなければいけません。失敗を恐れてはいけないのです。
このようにプロになるまでの勉強は自分以外の人から学ぶことが基本だったのに対し、プロになってからは、ただ全体を理解するだけでなく、新しいものを打ち出すことを考えています。これが私のアマチュア時代とプロになってからの各段階の勉強方法の違いです。
試合に向けた準備について
Q、試合前や試合後に必ずすることがありますか。また、大きな試合に向けて、コンディションを整えるために心がけていることがありますか?
A、試合の前に必ずすることは試合相手への対策のためのしっかりとした準備です。試合後は、結果の勝ち負けに関係なくその試合で得た経験の総括をします。そして試合のミスを把握します。
また重要な試合の際は平常心を保つことが重要です。しっかり睡眠をとり、必要な準備をし、出来る限り私心と雑念を取り除くように心がけています。結果のことをあまり気にかけないようにし、自分の一番良い状態で試合に臨めるようにしています。
Q、「私心と雑念を取り除く」と言うのは、具体的にどのようなことをするのですか?
A、精神的に良い状態に調整するために試合のことをあまり考えないようにします。これが、私心と雑念を置くことです。でも、本当にそうすることは難しいです。
Q、精神面でのお話しを聞かせて下さい。
重要な試合で出だしに躓いてしまったとき、残りの試合で気持ちを入れ換えてささなければいけないと思います。しかし、試合経験が豊富でないとどうもそうすることが出来ず、最後までズルズル力が出しきれないことがあります。そんな経験はありますか?
A、試合の前半で上手く指せないと言うことは私たちも良くあります。
必ず今を把握しなければいけません。いつまでも思い悩んでいることは無駄なことです。前半の試合の結果を引きずると実力を発揮することにも影響が出ますし、よりひどい結果につながることになります。
ベストゲーム
Q、汪洋さんのこれまでのシャンチー人生の中でのベストゲームを3つ選ぶとしたらどの試合ですか?
A、良く指せた試合はいっぱいあります。
私の思う代表的なベストゲームは下記の三局です。
2007年 甲級リーグ、汪洋 先手勝 于幼華(対兵局転兵底炮开局)
2013年 国手賽、汪洋 後手勝 王天一
2018年 個人選手権、汪洋 先手勝 陳泓盛
おわりに
Q、汪洋さんにとってシャンチーとは何ですか。また汪洋さんの思うシャンチーの魅力を教えて下さい。
A、私にとってシャンチーは趣味であり、仕事でもあります。
シャンチーは私たち中国の国粋です。長い歴史のある、深い文化遺産です。
シャンチーには勝ち負けがあり、知力を競い合うものです。
また、シャンチーの魅力はシャンチーを通して人生の道理を理解することが出来ることです。
Q、日本のシャンチーファンに一言お願いします!
A、日本のシャンチーファンの皆さん、こんにちは。
私もいつか機会があれば日本に行ってシャンチーを広めに行きたいです。
普段はライブ放送でシャンチーの話しをしているので、そこにも遊びに来てください。
下のページでみるか、
携帯アプリの「企鹅电竞」をダウンロードし、
「象棋特级大师汪洋」をフォローすればすぐに見ることが出来ます。
○おわりに
今回は汪洋選手にインタビューをさせて頂きました。
みなさん、楽しんでいただけましたか(*´▽`*)?
長いインタビューでしたが、一つひとつ丁寧な回答を頂けてとても嬉しく思います。
また汪洋選手のインタビューで専業棋士と言う立場で生きている方の真面目なシャンチーへの向き合い方を知り、とても深い感銘を受けました。
汪洋選手の今後のご活躍を応援しております!
(本ページの写真は全て汪洋選手に提供して頂きました。ありがとうございます!)
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