シャンチー(象棋)トークリレー6人目「鄭惟桐さん」へのインタビュー

トークリレー

シャンチー(象棋)トークリレーの6人目はシャンチー特級大師の鄭惟桐さんです!

前回のインタビューは党斐さんでしたが、党斐さんから鄭惟桐さんにトークリレーのバトンが渡りました(*^^)

○このコーナーの説明


ちなみに現在までのバトン受け渡し状況はこちら↓

鄭一泓さん→汪洋さん→趙鑫鑫さん→曹岩磊さん→党斐さん→鄭惟桐さん(今ここ)


はじめに

○はじめに  

前回のトークリレーのコーナーの走者であった党斐さんに次の方の紹介をお願いしたところ「鄭惟桐特級大師を推薦したい」と返信が…!!…とっても素晴らしいです!!と言うことでワクワクしていました(*’▽’)

そしてこれまた長期間をかけてインタビューを続け、やっと本日記事のアップとなりました!党斐さんの記事作成と鄭さんのインタビューと色々時期が重なりつつも頑張りました(*´▽`*)

今回インタビュー記事を紹介させて頂く鄭選手は中国の特級大師で、去年三冠王(世界チャンピョン、アジアチャンピョン、中国チャンピョン)を獲得したとてもホットな選手です!また鄭選手は年齢も若く、今後の活躍がとても期待されている大注目の選手です。

ちょうど私が国際大会に出場し始めたころに鄭選手も中国代表で国際大会に参加されていたので、私にとってはとても身近な選手です!毎年大会後の観光の際に記念写真を撮っていたのですが3年目ぐらいになると「今年も一枚増えたね!」と言った感じになりました。個人的にはとても仲良くさせて頂いておりますが、印象はとても親切で、穏やかな方だなと言う感じです。また同時に鄭さんからは芯の強さも感じます。そして何よりもシャンチーに対して非常に真面目な方です。

ちょっとしたエピソードですが、私が四川に行った際に鄭さんとお食事をすることになっていた時のお話です。別の方がお店を予約して下さり、その日は急遽鄭さんと私はその方の予約して下さったお店で一緒にご飯を食べることになりました。鄭さんもすでにお店を予約して下さっていたので、そちらはキャンセルしなければいけなくなりました。その際の電話で「本当にすみません、次回の機会で必ずあなたたちのお店に行きますので!」と言っており、とても親切だな…と思いました。単に聞くと自然な言葉に感じるかもしれませんが、実際の中国でこのような状況での会話でこんな言葉が自然に出てくることはそんなに多くありません。鄭さんは普段から謙虚な方なのだなと思いました。

さて…今回はそんな鄭さんのインタビューです!

みなさん是非お楽しみ下さい!!

三冠王の獲得とこれから

まずは三冠王の獲得については触れなければいけません!

その時の記事と棋譜はこちら↓


Q、三冠王の獲得、本当におめでとうございます!三冠王を獲得した去年のことについての感想をお聞かせください。また今後はシャンチーのプロとしてどのように進んで行きたいと考えていますか(この質問のやり取りは去年の年末ごろのやり取りになります)

A、この一年(去年)の試合の成績は総体的に見て概ね予想通りです。多少の収穫があり、また多少思い残すこともあります。確かにいくつかの成績を残すことは出来ましたが、同時にいくつかの間違えや上手く処理出来ていない場所もありました。

今後の専業棋士としての生涯についてですが、私は現在25、6歳で、今の歳はシャンチーと言うスポーツではちょうど黄金期の年齢です。私は今後の何年間かは止まることなく成長し続けたいです。技術の方面では技術を高め、更に上に進んで行きたいです。そして成績の方面では、より多くの好成績を取りたいと思います!


○三冠王を獲得した時の鄭さん

(2019年のアジア選手権の優勝で三冠王を獲得しました!)


これまでの歩み

Q、これまでに多くの大会で優勝経験があると思いますが、鄭さんにとって今まで一番価値のある優勝はどの大会での優勝ですか。また鄭さんにとって今までで一番満足できた一局はどの対局になりますか。

A、私にとって一番重要な優勝ですか。おそらく多くの人がそれは2014年の全国個人選手権の優勝だと思っていると思います。しかし、実は違います。私にとって一番重要だった優勝は2006年の全国大会12歳組みでの優勝です。なぜならこの大会で優勝したことで、私が専業棋士になる目標をはっきりと決めたためです。私にとってこの大会は、専業棋士としての人生の開始地点になりました。

最も満足できた一局は、今のところまだありません。そのような一局が未来で生まれるように努力します。この質問はまた数年後まで解答を保留させて下さい。


○対局中の鄭さん


Q、シャンチーを専門的に勉強し始めた時期と、プロを目指したきっかけを教えて下さい。

A、プロを目指したきっかけの出来事は先ほど話した全国シャンチー少年大会の12歳組での優勝です。なぜならその優勝をきっかけに私の両親やコーチ、先輩やシャンチー仲間が私自身に対して信頼の気持ちを持ってくれたためです。彼らの全力の支持に、私は心を奮い立たせました。そしてプロになろうと誓ったのです。

Q、プロとしてシャンチーに向き合う生活の中で苦労した時期などはありますか。

A、シャンチーの勉強の過程では数えられないほどの挫折がありました。

今一番深く印象に残っていることは、はじめて全国少年大会で優勝した時の、第1ラウンドでの試合です。初級レベルのミスが出てすぐに負けてしまいました。当時の私にとってとてもショックなことでした。幸いなことに対局後すぐに精神状態を調整することが出来、その後6連勝し、最終的に大会で優勝することが出来ました。

また、はじめて参加する全国少年大会では、私の試合経験は不足していました。規則の理解不足により、動かせないコマに触れてしまい負けてしまいました。その時の試合の成績もあまりよくありませんでした。本当に落胆しました。

棋芸の角度から話すと、私には何度か伸び悩んだ時期がありました。1回目は10歳から11歳ごろのことです。そのあと17歳から19歳ごろもそうでした。この段階の時期は、どれだけ勉強をしてもなかなか進歩することが出来ませんでした。それどころかレベルが下がっているようにすら感じました。今思えばおそらくあの時は蓄積するための段階だったようです。それでも当時の私にとってとても大きなストレスでした。

シャンチーの勉強と快速戦について

Q、プロになってからのシャンチーの勉強とプロになるまでの勉強の方法の違いを教えて下さい。

A、プロの棋士になるまでシャンチーは私にとって1つの趣味でした。そのため自分の好きなものを研究してきました。例えば自分の好きな種類の開局を多く勉強したりしました。しかしプロの棋士になってからは比較的重要な開局と残局定式を研究しなければいけませんでした。また自分の最も苦手としているところを補う必要もありました。これはやはりプロになる以前とは明らかに異なるものです。またプロの棋士になってからは研究方法も系統化したものが多くあります。

Q、鄭さんは快速戦が得意なのかな…と感じるのですが、快速戦が強いことについてポイントがあれば教えて下さい!

A、実際のところ私の超快速戦は少し良いと思います。快速はまあまあと言ったところでしょうか。快速戦は他の選手と比べて明らかに良いわけではありません。

私が快速戦よりもさらに早い超快速を比較的得意としていることについて、私の思う理由は、私が開局を比較的得意としているためだと思います。このことは超快速の環境で、局面と時間的な優勢を取りやすいです。また私は盤面の全体理解と大局観が良い分類の選手です。これらは超快速等の計算をする時間があまりない状況下で、比較的良い手を指すこと或いは大きなミスを出さないことに繋がります。このような大きなミスが出ないことが超快速での成績の良い理由です。

シャンチー人生での出会いについて

Q、これまでのシャンチーのプロとしての人生で鄭さんに大きな影響を与えた人との出会いについてお聞かせ下さい。

A、私に大きな影響を与えた人ですね。1人目ははじめに私にシャンチーを教えてくれた李艾東先生です。なぜなら私がシャンチーを指すことが出来るようになった後(ルールを覚えたあと)、すぐに少年宮(日本の青少年活動センターみたいなもの)で李先生について勉強をはじめたためです。はじめは車を2つ取って先生と指しました。それから車馬炮を取った対局、そして車炮、車、炮、馬と取るコマが減ってゆき、最後はハンデなしで対局をするようになりました。

李先生は最初に勉強をはじめた時から現在までずっと私の先生で、私自身が一番大きな影響を受けた方です。

私は今でもはじめて全国少年チャンピョンになった時のことを覚えています。その時李先生もその場所にいらっしゃいました。その時先生は私のところに来てこう言いました。

「私はずっと金の卵が光輝く日が来ることを信じていました」

この一言はとても深く印象に残るものでした。なぜなら私は多くの大会に参加して来ましたが、この大会の優勝は私がはじめて手にした優勝でした。そのため当時、優勝しても自分でもすぐには自分の力を信じることが出来ませんでした。そんな私にとって李先生の言葉は自分自身を信じる大きな励みになりました。またこの言葉はシャンチーの勉強をはじめたばかりの私にとって、大きな助けになりました。

2人目は蒋全勝先生です。

私が少年チームに入ったとき、蒋先生は棋芸の上でとても多くの指導をして下さいました。蒋先生は成都棋院の院長です。そのため蒋先生は私の先生でもありリーダー(監督)でもあります。 蒋先生は多くの試合で、私に精神的な指導をして下さり、また同時に精神面での支えにもなって下さいました。

やはり蒋先生はプロの選手で、多くの経験を持っている方です。蒋先生はいつも高い場所から、高い角度で私の抱えている問題を分析して下さいました。そんな蒋先生の指導は私の精神面を成長させて下さいました。

多くの人が知っていることですが、蒋先生は成都棋院の監督です。しかし私が広東省チームの一員として甲級リーグに参加することを許可して下さいました。私は四川の成都の人です。以前は8年間四川チームの一員として甲級リーグに参加していました。後になって広東省チームに入ることの出来る機会を手にしました。これは外援選手として広東省チームに入ると言うことです。この時、蒋先生は私が広東省チームに行くことを支持して下さいました。私はこのことに本当に感謝しています。

Q、蒋全勝先生からの精神面での指導で印象に残っているアドバイスとエピソードがあればお聞かせ下さい。

A、最も印象に残っているのは2014年の中国全国個人選手権の決勝戦の時のことです。私と王天一特級大師の試合でした。第1局目は私が勝ちました。その後第2局目を指さなければいけませんでした(当時の個人選手権は2局指してその勝敗で勝ち進むトーナメント形式の試合でした)。

1局目が終わった日の夜、蒋先生は私に電話を下さいました。

蒋先生は電話で、「絶対に保守的な指し方をしないように、積極的に指すように!」と言いました。また「心の中で負けることへの気持ちの準備もするように」と言いました。

なぜなら第2局目は、私は後手でした。このことは心理的に大きなプレッシャーでした。結果的には2局目は大変な対局でしたが、引き分けを取ることが出来ました。これにより私ははじめて中国全国個人選手権で優勝することが出来ました。


○鄭さんとのお食事

(鄭さんが日本にいらした時に所司先生も誘ってお食事会をしました!)


四川省のシャンチーについて

Q、四川省は中国の中でもわりとシャンチーの愛好者の方が多いイメージがあります。四川省と他の地域ではシャンチーの環境等が異なるのでしょうか。

A、四川省のシャンチーの雰囲気は確かに比較的良いと思います。四川省には70年代から専業棋士のチームがありました。そして専業棋士のチームが途切れたことはありません。これらは1つの伝承のようにずっと続いています。

地域によっては少し残念です。専業棋士のチームが途切れてしまう時期がある地域もあります。またここ数年間、国家としても、地方地域としても、そして成都市体育局、成都棋院としてもシャンチーと言う種目を大きく支持しています。

そのため四川省では大きな大会が開催され、また甲級リーグや団体戦には大きな援助を頂いています。このことから、四川省は全国の中でもシャンチーの栄えた地域の1つと言うことが出来るでしょう。

四川省以外では広東省、上海市、浙江省、江蘇省もシャンチーが比較的発展した都市です。

Q、鄭さんがプロとして発展して行く上で、四川省のシャンチー要素から何か受けた影響があればお聞かせ下さい。

A、四川省はずっとシャンチーが伝統的に継承されてきており、シャンチーの雰囲気を持った都市です。そのため私は四川省のシャンチーの専業プロのチームで学ぶことで、成長出来る機会を得ました。例えば甲級リーグや全国団体戦への出場機会を得たこと、これらはプロとしての生涯における発展にとても大きな助けになりました。

Q、甲級リーグで四川チームから広東チームへ移動してみて感じた、2つのチームの雰囲気の違いなどがあれば教えて下さい。勝手なイメージですが四川チームは静かで落ち着いているイメージ、広東省チームは華やかなイメージがあります。チームカラーのようなものがあればお聞かせください。

A、広東チームと四川チームは客観的に見て、全国でも強豪と呼ばれるチームの2つです。この2つのチームは少なくともベスト6位に入る実力があります。

広東チームは古くからある強豪チームです。またシャンチーの歴史上総体成績はナンバー1と言えるチームです。このチームには自信に満ち溢れた雰囲気があります。これらは直接感じることは難しいです。しかし重要な試合の時、きっとみなさんも感じ取ることが出来ると思います。広東チームのメンバーはみんなそれぞれが自分自身に対する要求を持っています。そして広東チームのメンバーは自分自身が良く指せば優勝出来ることが正常なことだと考えています。ほかのチームと比べて自分自身の能力への自信と総合的な実力を信じています。

このことから重要な場面でも精神的に穏やかにいられます。そしてこれにより重要な大会で広東チームのメンバーの力が例え相手チームのメンバーよりもレベル的(選手の持っているタイトル等)に多少劣るように見える場合も、幾度となく他のチームに勝っています。

四川チームはここ数年でとても速い速度で成長したチームです。以前は大体中の上ほどのレベルのチームでした。その後四川チームは飛躍的に成長し、現在は上位ランクに入るチームになりました。

四川チームの特徴は力強く立ち向かって行く姿勢があることです。また、チームメンバー全員がシャンチーに対する熱い思いを持っています。そして一種の探求精神を持っており、シャンチーを指すことに対してとても真剣に取り組みます。彼らはシャンチーに対しての向き合い方もとても真面目です。また試合の訓練の中でも常に成長できることを願っています。チームメンバーはみんな自分の棋芸と成績を上げたいと常に考えています。そしてやる気に満ち溢れています。

もちろん最も重要なことは、これらのことに、私たち四川棋院の院長先生である蒋全勝先生の支持と助けがあると言うことです。


○四川省でのペアマッチの開会イベント

(鄭さんと陳幸琳とで開会イベントを盛り上げていました)

勉強のアドバイスを頂きました

Q、日本のシャンチー仲間に勉強のアドバイスをお願いします。勉強方法やコンピューターソフトの利用等、鄭さんなりのアドバイスがあれば教えて下さい。

A、これは私個人の意見です。一般的な愛好者の方でまだ高いレベルに到達する前の段階、例えば天天象棋で9-1より前あたりのレベルでは、ソフトを使って対局の分析をすることをあまりお勧めしません。ただ対局の中で自分ではどうしても解決できない問題や、自分が重要だと思う問題についてはソフトを使って勉強するのも良いと思います。ただ普段はやはり自分で考えることで答えを導くことが重要です。

またその他では、レベルを上げるためには多く対局することが重要です。とくに自分とだいたい同じぐらいのレベルの相手か自分よりも少し強い相手と指すことが良いと思います。そして一定数の対局数をこなした後、例えば5局から10局指したあと、定期的に思考の総括を書くことが必要です。ただ指しているだけでは自分の弱点や欠点を直し、改善することが出来ません。そのため定期的に1つの総括をすることが大切です。


○鄭さんの旅行記録

○海南島にて

(私も海南島に行ってボートに乗りたいです!!)

おわりに

Q、鄭さんにとってシャンチーとは何ですか、また鄭さんの思うシャンチーの魅力を教えて下さい。  

A、最初の頃、シャンチーは私にとって趣味でした。そしてシャンチーを指す時間が増えるにつれてどんどんシャンチーを好きになりました。またそれに伴って成績もどんどん良くなりました。そのうちに自分の中でより強い願望が生まれ、私は14歳の頃に専業チームに入り、プロの棋士になりました。この時からシャンチーは私の職業になりました。

その後、成績は徐々に上がり、私はずっと専業プロでいます。シャンチーへの思いもより深くなり、そこに費やすものもどんどん多くなりました。

今日までで私が専業プロのチームに入って12年になります。そして私がシャンチーにはじめて触れた時から20年になります。

シャンチーは今日の私にとって1つの事業です。それは私が全力投球することの出来る事業です。


Q、日本のシャンチーファンにひと言お願いします!

A、2019年に私は日本旅行に行きました!私はとても日本が大好きです!

今後多くの日本のシャンチーファンの方々と交流がしたいです!そしてシャンチーと言うスポーツをもっと好きになってもらいたいです! またシャンチーを通じて中国と日本の愛好者がもっと深く交流出来ることを祈っています!


○日本旅行の写真

スカイツリーです(*´▽`*)

逆光ですがこれでも一番明かるく移る場所で撮りました!(カメラマンは私です!しかしスカイツリーのチケットは鄭さんが買って下さいました←まさかの!笑)


○おわりに

みなさん、鄭さんのインタビューはいかがでしたか(*´▽`*)

次回のトークリレーもお楽しみに!!

今後も鄭さんのご活躍を応援しています!!

おわり

コメント

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  2. […] 決勝戦は鄭惟桐選手対趙鑫鑫選手の中国同士の対決になりました! […]

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