シャンチー(象棋)トークリレー1人目「鄭一泓さん」インタビュー

トークリレー

鄭一泓さんの紹介

【紹介】

1975年福建省、アモイ生まれ

シャンチー特級大師の称号を持つトッププレイヤーの一人

現在は福建省アモイ市に厦和棋院を設立し、院長を務めている

福建省での選手育成に励む他、選手としても活躍中

【私との関係】

鄭さんは私のシャンチー(象棋)の先生です。

遠い中国からオンライン上で講義をして頂いたり、実戦譜をみて頂いたり、研究中の開局へ意見をもらったりととてもお世話になっています。

シャンチーとの出会い

Q シャンチーを始めた時期ときっかけを教えて下さい。 また当時の勉強する環境はどうでしたか。 (同年代のシャンチーの専門棋士の方と比べて勉強環境は良いものでしたか。)

A 私は6歳のころに父の影響でシャンチーの勉強を始めました。

父は私の住んでいた地域では名手として有名で、私以外にも蔡忠誠選手と林文漢選手の二人の大師を育てました。 私がシャンチーの勉強を始めた時、私の住んでいた地域ではシャンチーの本が不足しており、書店でもほとんどシャンチー関連の書籍はありませんでした。当時、シャンチーの本は広州や上海等の大きな都市へ行かなければ買うことが出来なかったのです。 ただ少し香港で出版された書籍がありました。私は父と研究する以外は、ただそれを読破することに努めるだけで、他の勉強方法はありませんでした。

私の同年代では許銀川選手がいます。彼と私は年齢も同じです。彼は広東省の専門棋士チームの選手で、特級大師の先生から指導を受けることが出来ました。また、私の生活している福建省と広東省では行われる試合のレベルも全て違っていました。そのため、勉強の環境はスタートラインから異なるものでした。

苦労したこと

Q シャンチーをはじめてから一番苦しかった時期はいつでしたか。どのように克服しましたか。

A シャンチーをはじめて最も苦しかった時は、自分で独自で使用する布局体系をまとめていた時です。

独自の布局をまとめるための書籍はなく、何もない状態から自分で分類するしかありませんでした。布局を分類する作業は自分一人でひとつひとつ考えて行くので、布局への考え方や私のまとめる布局の変化は限られていました。そのことは知っていましたが、それでもそのようにするしかありませんでした。

レベルの高いシャンチープレイヤーとともに研究することや、指導を受ける機会もなく、自分のレベルも低く、自分で布局を並べても良い手を見つけることは難しかったです。

(克服)

ノートを使い不明確な布局を書き出し、学校の授業がない日に車で二時間ほどかかるアモイの他区へ行き、強い人を探し教えてもらったり、一局指してもらったりして勉強しました。

価値のある優勝トロフィー

Q 今までに参加した試合の中で何度も優勝経験があると思います。その中で鄭さんにとって最も価値のあるトロフィーはどの大会のものですか。理由も教えてください。

A 今まで参加した試合の中でもっとも価値のある優勝は2001年の全国シャンチー大師賽での優勝です。

この試合に参加することの出来る選手は象棋大師のタイトルを持った人だけです。また、同時にこの試合の優勝者と勝率77パーセント以上(1勝1ポイントの試合で9ラウンド中7ポイント以上)の成績をとると特級大師のタイトルをもらえることになっていました。

私はこの試合の優勝によって全国で21人目の特級大師になりました。また当時最も年齢の若い特級大師でした。

私はこの大会で特級大師のタイトルを取ったことにより、より多くの試合に参加することの出来る機会を得ました。多くの試合への参加の機会は、私に当時のシャンチー界の中心的な有名選手との対局を可能にし、強い選手との対局は自分の棋力向上にとても大きな助けになりました。

2001年の全国シャンチー大師賽の優勝トロフィー

講義について

Q 現在アモイでシャンチーの講義をしていると思いますが、授業の中でとくに意識していることを教えて下さい。また子供と大人では内容が異なりますか。

A 私が現在シャンチーの授業で話す内容の中心はシャンチー文化の話です。

中国の伝統文化について話し、子供たちに全てのことに対して感謝の気持ちを持つことの大切さを教えています。

シャンチー教室の学生の全ての生徒が皆シャンチー大師になり専門棋士になるわけではありません。そのため、私は講義を通じ、授業を受けた全ての生徒が、シャンチーを学ぶことを通じ、彼らの今後の人生の糧になる考え方や物事への対応の姿勢を伝えて行きたいと考えています。

シャンチーの盤面は人生に似ています。

例えば何かを棄てることでやっと手に入れることの出来るものがあります。何かを手放してでも進まなければ、得ることの出来ないものが人生にはあるのです。

また人生は時に立ち止まり、一歩後ろに戻って考えなければいけないことがあります。常に前に進むばかりの人生を送ることは出来ません。時に一歩引いて力を蓄え、そしてまた一歩前に進むのです。このようにすることでやっと人は元の自分の位置を越えることができるのです。

私はシャンチーと言う伝統文化を通じてこのような人生への向き合い方を子供たちに伝えて行きたいと考えています。

○大人への講義と子供への講義は異なります。

大人の人へ教えるときは、試合に勝てるようになることを教えます。

子供に教えるときは、勝ち負けだけではなく、彼らが人生の大きな盤上で今後どのように考え、歩んで行くのかと言う問いを導けるように教えます。子供は柔軟で、多くのことを素直に吸収することが出来ます。

シャンチーの魅力

Q 鄭さんにとってシャンチーとはどのようなものですか、また鄭さんの思うシャンチーの魅力を教えて下さい。

A 私にとってシャンチーは家族です。そしてまた、時には心の底を理解しあえる古くからの友人であり、時には一杯のお茶を飲む時のように静かで穏やかな心地の良い存在です。

シャンチーはただ試合の勝ち負けを求めることに魅力があります。

そしてまた、ただ試合の勝ち負けを見るだけではない魅力があります。

シャンチーを指すことは、シャンチーを指すことで人生の道理を悟ることなのです。

ひとこと

Q 日本のシャンチーファンに一言お願いします。

A シャンチーは伝統文化の精髄であり、心を持って向き合う価値のあるものです。 気持ちを静めて向き合うことで感じるものがあると思います。 是非シャンチーを指している時、その盤上から盤以外の何かを探してみて下さい。シャンチーはみなさんの視界を広め、教養を高めることの力になることでしょう。

あなたの境界(修養や経験を積んで形成された現在の心の状態)も修養(知識向上や人格形成のために努めてきたこと)も全て盤上から感じることが出来ます。

最後に、皆さん是非シャンチーをはじめて下さい!

鄭さんとシャンチー

おわりに

「トークリレー」の第一走者になって頂いた鄭一泓さん、本当にありがとうございます。

鄭さんとは私がはじめて国際試合に参加した年からずっと連絡を取らせて頂いています。そしてとても頼りになる私のシャンチーの先生です。

私が分からない開局や局面について鄭さん聞くと、鄭さんにとってすぐに答えられる局面であれば、すぐに教えてくれます。しかし鄭さんが普段使わない開局であったり、複雑な局面であった場合、一度鄭さんはその局面を持ち帰り、しっかりと研究し分析をした上で私に教えて下さいます。パッと見はこんな感じではないか、等の曖昧なことや確かではないことは絶対に言いません。

いつでも真剣に私の問いに向き合って下さる鄭さんの存在は、私がシャンチーを続けて来た中でとても励みになった存在です。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

次回

鄭さんから誰に「バトン」が渡るのか、楽しみにしていて下さい!!

【鄭さんの写真】

コメント

  1. 井上奈智 より:

    専門棋士の人となりが垣間見られてとても面白い記事でした!ありがとうございます!

    • Chizuru より:

      コメント、ありがとうございます!これからも専門棋士の方に色々なお話しを伺って記事にして行きます(*´▽`*)

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