(写真は可児選手の多面指しの様子)
シャンチー(象棋)仲間の可児宏暉選手に実戦譜の評注を頂きました!個人的に可児選手と仲が良いこともありますが、私は可児選手のシャンチーの棋風がとても好きです。そのため可児選手の試合は見ていてとても面白いな~と思います!
そのことから、「ねえねえ可児さん○○試合なんだけどさ~評注もらえないかな?」とお願いしまくりです。笑。そして快く引き受けて頂くことで、私のブログの評注コーナーが潤っています(*´▽`*)
可児選手、本当にいつもいつもありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!^^
実戦譜評注
2019年5月18日
2019周荘杯国際団体招待戦 第2R
持ち時間 40分+5秒
紅 可児
黒 陳培進 (フィリピン)
結果 黒勝
今回は、先日私が参加した2019周荘杯国際団体招待戦の第2ラウンド、フィリピン戦の対局を紹介したいと思います。
1. 炮二平五 馬8進7 2. 馬二進三 馬2進3
3. 車一平二 車9平8 4. 兵七進一 卒7進1
5. 車二進六 馬7進6 6. 馬八進七 象3進5
中炮過河車対屏風馬の良くある形から黒は左馬盤河を選択しました。 最近では黒が6回合で車1進1とする激しい変化も流行していますが、本譜の象3進5は昔ながらの実戦例が多い指し方です。
7. 炮八平九 卒7進1
象3進5に対する紅の指し方は色々ありますが、炮八平九は実戦例が最も多く私が研究している指し方です。 これに対し黒は車1平2としておくのが多いですが、本譜はさっそく卒7進1から仕掛けてきました。 やや少ない手ですが、急ぎ過ぎの悪手という訳ではなく、これも十分に考えられる手です。
8. 車二退一(図1) 馬6退7
8回合の黒の指し方は本譜の他に馬6進7、卒7進1の計3通りあります。
馬6進7の場合は、車九平八、車1平2、車八進四くらいで紅ペース。 卒7進1の場合は、車二平四、卒7進1、車九平八、車1平2、車四平二のような進行でこれも紅ペースです。
ただいずれの変化も形勢に大きな差がつくわけではないので、その後の指し方次第といった展開になります。 一応どれが来ても良いように想定はしていましたが、この瞬間相手がどれを選ぶのかはドキドキしながら待っていました。
9. 車二進一 卒7進1
車二進一は悪手ではなく普通の手ですが、ここでは車二平八とするのが最善でした。 卒7進1からの取り合いは紅が駒得なので、黒は車1進2くらいで受けるしかありません。 そしてそこで兵三進一と取っておけば、分かりやすく兵の一枚得で紅ペースでした。 実はこの変化は対左馬盤河の開局研究の際にまとめた順の一つだったのですが、実戦の緊張感のなかですっかり抜け落ちてしまっていました。
10. 馬三退五 炮8平9 11. 車二平三 車8進2
12. 車九平八 車1平2 13. 馬七進六 炮2退1
14. 車三退三 炮2平7 15. 車八進九 馬3退2
15回合で黒が紅のどちらの車を取るかは難しい問題のようで、相手もここで時間を使っていました。 私の読みでは炮7進5だと車八退二が先手なのではっきり紅優勢だと考えていましたが、その後の変化を考えると馬3退2とどちらが良いかは微妙なようで、実戦例も半々に分かれています。 ただいずれの変化にせよ、実戦中はやや紅が指しやすい展開になったのではないかと感じていました。
16. 車三平四 士4進5
16回合、相手は相当時間を使って考えてから士4進5と指しました。 馬2進3くらいが自然だと思っており、ソフトもその手を推奨していましたが、恐らく何か気になる順があったのでしょう。 ただ士4進5は直感的に悪手だと思いましたし、実際にこの手は悪手でその後紅が力強く攻勢をかける展開になりました。
17. 車四進五 炮7平8
18. 炮九進四 炮9退1
18回合では手の流れから言っても炮五平三を本線で考えていたのですが、馬7進8とされた時の次の良い手が思い浮かびませんでした。 あとでこの対局を見て頂いた特級大帥の趙国栄先生に聞くと、馬7進8には炮三退一があるのではとのことでした。 この発想は全くなかったのですが、確かに炮九平三など次に強烈な手があるので非常に良さそうです。 またソフトの解析だと馬六進五を推奨しており、次に馬五退三が絶好手になるので紅優勢とのことでした。 このあたり自分にはなかった色々な発想を知ることができ、非常に勉強になりました。
19. 車四退五 馬2進3 20. 炮九進一 車8進2
19回合の車四退五と車四退二、20回合の炮九進一と炮九進三のどちらが良いかの比較がなかなか難しいです。
21. 炮五平三 将5平4
21回合の炮五平三で、はっきり紅が良くなったと自信を持ちました。 相手は一瞬ノータイムで車8平7と寄りかけましたが、これだと炮三進五、車7退2、馬六進五で紅勝勢です。
22. 車四進三 車8進1 23. 馬五進七 車8進2
24. 車四平三 炮8平7(図2) 25. 炮三平六 車8平4
相手は必死に紅の攻勢を崩そうとしてきましたが、図2の局面からの炮三平六が渾身の一手でした。 普通に車三進一、炮7進6の交換でも紅は悪くないですが、本譜はこの後の手順で必ず駒得になります。 この一手は趙国栄先生にも非常に褒めていただき、印象に残る指し手になりました。
26. 車三進一 炮7平8 27. 仕六進五 車4退1
28. 車三平一 炮8進4
27回合の士六進五は冷静な好手で、単に車三平二だと炮8平7、車二進一、車4平7、車二平一、炮7進8と進み、駒得で紅優勢ではありますが、相を削られて少し気持ち悪い格好です。
本譜は28回合車三平一で駒得が確定し「これは勝てる」と思ったのですが、炮8進4がいやらしい手で急に不安になってきました。
29. 車一進一 炮8平3 30. 相七進九 炮3進1
31. 馬六進八 卒3進1 32. 馬八進七 炮3退4
30回合は直接炮取りになるので相を端に跳ねましたが、相七進五と中央で連結させるほうが安全でした。 また31回合の馬六進八は悪手で、ここは馬六進四が正解でした。 黒の馬3進1、馬1進2の攻めが怖かったのですが、趙国栄先生に聞くと車一平三、車三退六と受ければ問題ないとのことです。 てっきり車一退二と卒を取るものだと思っていたので、指摘されなるほどと思いました。
さらに32回合では、馬八退七と炮のほうを取るべきとの指摘も受けました。 車4平3、馬七退六、車3平1,炮九平八で依然駒得なので紅が有利を保っているとのことです。 このあたり立て続けに正しい判断ができず、せっかく築いた駒得の優勢が一気に縮まってしまいました。
33. 馬七進八 車4平1 34. 炮九平八 車1退4
35. 炮八退一 卒3進1 36. 馬八進七 車1進1
37. 車一退二 車1平2
35回合、炮八平五なら引き分け模様になることは分かっていましたが、先ほど一度優勢になったことで「勝たねばならない」という意識が生まれてしまい、正しい判断ができませんでした。 結局は時間がなく読み間違いもあったことで、37回合車一退二から引き分け狙いに方針を変えるのですが、明らかに判断が遅すぎました。
38. 車一平五 車2進6 39. 仕五退六 車2平4
40. 帥五進一 卒3進1 41. 帥五平四 象5進3
42. 馬七退五 車4退5 43. 車五平七 車4平5
44. 車七進一 車5進2
このあたり互いに時間はほとんどなかったのですが、43回合で黒が駒交換ではなく炮3平5を選べば、もっと黒が勝ちやすい残局になっていました。 また44回合、車5進2と兵を取るのではなく車5平6から紅の士を取り切っていれば、黒の必勝残局でした。
45. 車七進二 将4進1 46. 車七退四 車5平9(以下省略) 時間のないなかで黒にもミスが出たことで、46回合を終えた時点で現状は必和残局の形勢です。 私も当然頭ではそのことを理解していましたが、結局このあと時間のなさと経験不足から一瞬の隙を突かれ負けてしまいました。 残局中、常に残り時間が10秒ほどしかなかったのは痛かったですが、それ以上に国際試合ではノータイムでも正しく指し続けられるくらいの残局の力をつけなければいけないなと痛感しました。
45. 車七進二 将4進1 46. 車七退四 車5平9(以下省略)
時間のないなかで黒にもミスが出たことで、46回合を終えた時点で現状は必和残局の形勢です。 私も当然頭ではそのことを理解していましたが、結局このあと時間のなさと経験不足から一瞬の隙を突かれ負けてしまいました。 残局中、常に残り時間が10秒ほどしかなかったのは痛かったですが、それ以上に国際試合ではノータイムでも正しく指し続けられるくらいの残局の力をつけなければいけないなと痛感しました。
おわりに
【総評】
開局で若干事前の研究手順を忘れたところはありましたが、29回合の駒得をする局面まではかなり上手く指し進めることができました。 趙国栄先生にも「ここまでは大帥の指し方と変わらない。非常に良く指せている。」と褒めて頂き、非常に嬉しかったです。
ただ駒得が確定してからの中残局で一気に崩れてしまい、それまで良かった反動で一気に自分の弱さが露呈した印象でした。 もし勝てていれば私の国際大会初勝利だっただけに結果は非常に残念でしたが、海外の強豪相手に自信と課題の両方を得られた印象深い一戦になりました。
【最後に】
はじめての国際試合でこの棋譜の内容の深さは本当に素晴らしいです!
今後の国際試合が楽しみです!(とにかく私からの期待がものすごいですが、今後とも応援していますので、頑張って下さい^^!)
引き続き、可児選手には色々な対局の評注をお願いしているので、みなさま、次の可児選手の評注も楽しみにしていて下さい(^^)ノ
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