“棋聚五洲”第1回世界シャンチー(象棋)インターネット棋王賽の棋譜紹介(所司和晴選手の評注棋譜です!)

実戦譜を見る

今回は所司先生に頂いた“棋聚五洲”第1回世界シャンチー(象棋)インターネット棋王賽の棋譜を紹介します!

国内のシャンチー(象棋)仲間の中ではわりと噂になったOlivier TessierさんはカナダのNC/NV選手です!(はじめての国際大会への出場でしたが…強い強い…!!と言うことで日本でも注目している選手です!)

近々カナダのシャンチー協会の方と交流対局があるのですが、Olivier Tessierさんも参加されるので、ちょっとでも知っておこう!と言う思いを込めた記事です!所司先生に棋譜を頂いてからちょっと寝かし過ぎた感じはしますが…交流会前のちょうど良い時期のアップかなと思っています!(*’▽’)

交流会に参加されるみなさん…、どうやらこの大会の時よりもOlivier Tessierさんはさらに強くなっているようですが、頑張って下さい!!

はじめに

(ここから所司先生の文章です)

インターネット世界大会6回戦です。 ここまで1局目負け、2局目引き分け、3局目勝ち、4局目勝ち、5局目負けと、5ポイントで指し分けの成績です。 6回戦、カナダのオリバー選手も5ポイントですが国際大会出場記録がなく、まったくの未知数です。

ただし後でオリバー選手の記事紹介でわかったのですが、チェスのマスターとのことです。 また一昨年のチャンギ(韓国将棋)世界大会に出場され、私はお会いしています。 このときは外国人で唯一大会の予選を通過されていますし、チェス、チャンギ、シャンチーいずれも強いので、今後ノンチャイニーズでの強力選手となります。

棋譜評注

紅方:所司和晴

黒方:Olivier Tessier

結果:黒勝

1. 兵七進一 炮8平5 2. 馬二進三 馬8進7

3. 馬八進七  卒7進1     4. 車一平二 車9平8

5. 相七進五 車8進6 6. 仕六進五 馬2進3(図1)

(図1)

私が紅方で、連載している仙人指路を採用しました。 炮8平5の左中炮はやや少ない作戦ですが、右中炮よりは多いです。いずれでも紅方は屏風馬に組みます。 紅方の中炮に最も対抗できるのが屏風馬ですので、紅方で屏風馬が使えるのは戦いやすいです。  

相七進五のところは迷いました。左の相が上がると炮2進4が嫌な筋です。ただ先後が違うので、さすがに紅方十分の順があるのではと思いました。 本譜の車8進6は普通の手の1つではありますが、少々意外でした。

7卒を突いている形で車をもぐるのは、車8平7とした場合に車が窮屈です。 士六進五はいろいろありますが、中央を厚くしながら車九平六の活用があり私好みです。 炮二平一は保留して、もし車8平7と来れば馬七進六のあと、炮二退一から炮二平三を目指せば、炮二平一、車8平7、炮一退一の順より手得になります。

図1の馬2進3は無難ですが、七兵が突いている形では馬2進1の方が多いです。馬2進3はこの馬が使いにくく、卒5進1としても中央が厚いので効果がありません。 黒方の布局に怖さはないですが、着実で無難な指し手が続きます。 図1で私はほぼ2択で迷いました。  

図1で車九平六と馬七進六の本譜で迷いました。 どちらが最善手なのかは非常に難しいですし、ほぼ同じぐらい有力に思います。 車九平六から車六進六と攻め込んでいくと炮5平6と粘り強く対抗されると思います。紅方が主導権は握っていますが、その後の進展は難しいです。

7. 馬七進六 炮5平6 8. 炮二平一 車8進3

9. 馬三退二 象3進5 10. 馬二進三 炮2平1

11. 馬六進七 車1平2 12. 炮八平七 炮1退1(図2)

(図2)

本譜で紅方十分と思いますが、いつの間にか紅方の指しやすさが縮まっていると感じました。炮二平一のタイミングなど、もう少し保留した方が良かったのでしょうか。

11回合、馬六進七に車1平2はさすがです。ここで馬七進九は車2進7、馬九進七、将5進1で、形は乱れますが黒方大丈夫です。 図2の炮1退1は車2進3を予想していましたが、そこで兵三進一から交換すれば、次に馬三進四~馬四進六の先手を目指せます。 炮1退1は車九平六としたとき炮1進5が手損になるので引きにくいですが、冷静に見ると落ち着いた手です。

13. 兵三進一 卒7進1 14. 相五進三 炮1平7

15. 相三退五 馬7進6 16. 炮一進四 車2進7

図2は次の一手を迷いました。ここでは深く読むと紅方の利はないのかもしれません。 図2で車九平六として炮1進5なら兵三進一の交換もありました。ただ私は当分車を九路に置いておくのが好きで、本譜の兵三進一も本筋の1つに思います。 他に兵五進一も考えましたが、これは車2進6がいい位置です。この順は先ほど車2進3としなかったのが得をしています。 三兵を交換しましたが、炮1平7が嫌な筋です。 安定した形と思い相三退五としましたが、ここは相三進五とすべきだったかと後悔していました。 ただ相三進五も悪くないようでした。

16回合、車2進7から車2退1は違和感のある動きです。黒方は厳しい手はないのですが、はっきりしたミスはなく安定しています。 炮七平六はせっかく車が七路に寄れましたので車筋を通しましたが、兵七進一は間に合わない流れには感じていました。  

17. 車九平七 車2退1 18. 炮七平六 炮6平7

19. 馬三進四 車2平5 20. 馬四進二 前炮進2(図3)

(図3)

19回合、車2平5とされた場面で、黒方は車、馬、炮、炮の4枚で紅方の右翼を攻める体制ができ、私は苦しい展開になったと感じました。 ただ怖いながらまだ互角の形勢だったかもしれません。じっと兵一進一や、炮一進三または兵七進一で開き直っても勝負でした。 焦りを感じて、馬四進二の敗着を指してしまいました。ここが最も大きな反省点です。 これは前炮進2(図3)と圧馬にされ、どうにも動きが取れなくなりました。

21. 兵一進一 馬6進7 22. 馬二進三 馬7進5

23. 帥五平六 馬5退7 24. 相三進一 馬7進9

25. 帥六進一 后炮平4 26. 馬七退六 車5平4

27. 馬三退四 炮7進4(図4、投了図)

(図4)

馬6進7で黒方は一気に勝つ体制になりました。 続く馬7進5が決め手です。相三進五は前炮進5、相五退三、炮7進8の殺です。 以下も緩みなく完璧に指されてしまいました。

投了図以下士五進四は車4進1と炮を取られてしまいます。

また帥六退一は炮7進1で車が取られてしまいます。

これで2勝3敗1和と負け越しとなりました。

翌日の7回戦が予選最終局で、上位8名の方がさらに上のトーナメントに進みます。 最終局はシンガポールの女子選手と当たり勝つことができ、トータルは3勝3敗1引き分けで終えることが出来ました。 ノンチャイニーズとしては日本選手の可児選手、オリバー選手に次いで3位(4位がセルゲイ選手)となりました。

おわりに

所司先生、評注棋譜を頂き、ありがとうございます!

この大会で所司先生が負けてしまった時はとても衝撃的でしたが、可児さんが総合順位で上に行ってくれたのでとても安心した(…←嬉しかった)ことを覚えています。

今度のカナダとの交流会はこの大会がきっかけとなり決まった大会です。この所司先生とOlivier Tessierさんの対局も色々な意味でカナダとの交流を持つきっかけとなった一局だと思います!

また、今度のカナダとの交流会でOlivier Tessierさんが日本選手とどのような対局をするのかとてもたのしみです(*’▽’)  

日本選手にとってもベラルーシのセルゲイ選手とは別の新しいライバル選手が登場したことは、棋力向上を考えるととても素晴らしいことだと思いますので、今後も出来るだけ多く練習対局が出来ると良いなと思います!

今後のOlivier Tessierさんのご活躍を応援するとともに、日本選手が今後も多くの素晴らしい棋譜を残すことが出来ることを応援しています!

おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました