可児宏暉選手に実戦譜の評注を頂きました!(所司和晴選手との対局紹介)

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(写真:アヤメ杯の時に撮った曽根さん(左)と可児さん(*^^*))

今回はシャンチー(象棋)仲間の可児宏暉選手に頂いた実戦譜の評注を紹介します!

可児選手、ありがとうございます!

今回の試合の対局相手は所司和晴選手です。日本のシャンチー界で長く活躍されている所司選手と若手選手の中でもとくに期待されている可児選手との対局です!(これはちゃんと見なければ…!!←訳あって評注を頂いてから記事のアップまで少し長くお時間を頂きましたが、素晴らしい試合です^^)

皆さま、是非お楽しみください(*´▽`*)

実戦譜評注

2019年7月14日

第25回全国選抜トーナメント 第2R

持ち時間 30分+30秒 

紅 所司和晴

黒 可児宏暉

結果 黒勝(紅の時間切れ負け)

今回は国内大会である第25回全国選抜トーナメントの第2R、所司選手との対局を紹介したいと思います。

 1. 炮二平五 馬8進7 2. 馬二進三 卒7進1

3. 車一平二 車9平8 4. 車二進四 馬2進3

4回合紅の車二進四は自然ではあるものの、実戦例は非常に少ない手です。

この局面で車を進める場合は車二進六の方が圧倒的に多く、そこから黒が平炮兌車や左馬盤河などで対抗するのが主流な戦い方になります。 ただ本譜の車二進四が悪手ということは全くなく、形勢的には全くの五分で有力な一手です。

この大会で所司選手は他の対局でも車二進四を採用していたので、恐らく事前にこの手を深く研究していたのだと思います。 私としては車二進四という手は知ってはいたものの、深く研究したことも実戦経験もほとんどなかったので、「大変だなあ」と思いながら一手一手考えて指し進めました。

5. 兵三進一 卒7進1 6. 車二平三 馬7進6

7. 馬八進七 炮8平7

6回合黒の馬7進6は実戦例の少ない手で、ここでは炮8退1、車三平二のような進行が多いです。 私が指した馬7進6は少し罠のような意味合いがある手で、紅がもし車三平四とした場合には構わず炮8平7と勝負します。

以下車四進一には炮7進7と攻め合って、黒は駒損であるものの分かりやすく厳しい攻めがあるため十分戦える格好です。また攻め合いを恐れ相三進一などと受けた時には、車8進4と馬を支えてやや黒ペースになります。

実戦は車三平四ではなく馬八進七と進んだため、先ほどの攻め合いの順と比べると、やや穏やかな展開になりました。

8. 車九進一(図1) 炮2退1

(図1)

8回合紅の車九進一を見て、私はかなり悩んで時間を使いました。これ自体は普通の手ですが、黒としてはどちらかの象が上がる手や、単に炮7進6と取る手など有力そうな手がいくつか見え、対局中はどれが最善か分かりませんでした。

実戦では炮2退1と引いて次に炮2平7を見せる攻め重視の手を選びましたが、本譜の進行を見ると一手の価値がどれほどあったかは少し微妙なところです。

ソフトの解析だと象3進5がこの局面での黒の最善で、以下車九平四、炮7進5、車三退二、馬6進4のような進行でほぼ互角とのことでした。

9. 車三進一 炮7進5 10. 車三退三 馬6進4

11. 車三進一 馬4進3

10回合黒の馬6進4に対して紅は炮五退一で来るだろうと読んでおり、そのあとの黒の指し方にかなり悩んでいました。ただ実戦は予想に反し車三進一で、直感的にこれで少し黒が良くなったと感じました。

やはりここでは炮五退一もしくは車九平七が自然な受け方で、わずかながら紅ペースだったと思います。 またソフトによると、車九平六、馬4進3、車六進六という攻め合いの順もあるようで、この順は読んでいなかったですし、やられていたら結構大変でした。

12. 車九平七 炮2進3 13. 相七進九 炮2平1

14. 相九進七 車1平2 15. 車七進一(図2) 炮1平6

(図2)

実戦はこのあたりで早くも互いに持ち時間が少なくなってきており、時計を気にしながらの対局になりました。 そんな中、15回合黒の炮1平6は時間に追われた手で良くなかったです。先にじっくり象3進5などで自陣を固めておくべきでした。

ここまで少し黒ペースだと感じていましたが、炮1平6で攻守が入れ替わり、若干紅ペースになってしまったと感じました。

16. 車三平四 炮6平7 17. 兵五進一 士4進5

18. 兵五進一 象7進5

18回合の兵五進一を少し軽視していました。取ると車四進二が見えているので咄嗟に象7進5と上がりましたが、正確には卒5進1と取り切ってしまうほうが本譜より若干優ったようです。

19. 兵五平四 炮7退3 20. 炮五進一 卒3進1  

21. 車七平三 車8平7

21回合紅の車七平三は悪手で、もし炮7進8としていればはっきり黒優勢でした。

本局一番のチャンスだっただけに、発見できず残念でした。

22. 相三進一 馬3進4  23. 炮八平五 炮7平6

黒としては炮7平6が勝負手になると感じていましたが、後で検討すると指すのが一手遅かったです。22回合の時点で指していれば、本譜と同じような進行でも馬が中卒を守っている分、本譜より戦いやすい展開になっていました。

24. 兵四平三 馬4進5  25. 車四平五 車7進4

26. 車三進三 象5進7  27. 車五進三 象7退5(図3)

(図3)

27回合紅の車五進三が味の良い手で、現状は少し紅ペースです。 ただ紅は相が乱れていますし、駒割的には和の可能性も十分にあります。 相変わらず時間は無いですが、大きなミスをしないことに気をつけて粘り強く指そうと思っていました。

28. 車五平九 炮6進5  29. 仕四進五 車2進6

30. 炮五進四 車2平1  31. 車九平七 将5平4

32. 車七平六 将4平5  33. 車六平七 将5平4

34. 車七平六 将4平5  35. 車六平七 将5平4

31回合紅の車九平七以降しばらく繰り返し手順になりますが、車九平七に対しては将5平4ではなく象3進1が正しい受け方でした。 将5平4だと本譜のこのあと進行のように炮五平二から象が取られてしまい、少し危なくなってしまいます。

36. 炮五平二 車1平3 37. 炮二進三 将4進1

38. 車七平六 士5進4 39. 炮二平七 炮6退1

40. 車六平一 車3平4 41. 車一退二 炮6退2

42. 相七退九 士4退5 43. 車一平五(図4)(時間切れ)

(図4)

43回合、紅が車一平五と指したところで時間が切れてしまい、黒の勝ちとなりました。

ただ形勢的にはほぼ互角で、おそらく指し続けていてもどちらかに大きなミスが出ない限り和だったのではないかと思います。

おわりに

【総評 】

知識も経験もほとんどない開局でしたが、全体的に大きなミスなく指せたのは良かったです。 ただ序盤からかなり時間を使ってしまったように、未知の局面での読みのスピードや局面理解の速さにまだまだ課題があるなと感じました。 結果的に時間が無かったことが中局で相手のミスを見落としたり、細かな手順前後の損得を読めなかったりしたことにつながったので、今後は少しでも速く正確に読めるよう地道に努力を続けていきたいと思います。

以上

○おわりに

可児選手、いつもありがとうございます!

このブログで日本の期待を背負った若手選手の棋譜を紹介出来ることは非常に嬉しいことです!また、可児選手から頂く棋譜は内容がとても素晴らしいので読んでいて非常に勉強になります!!!今後も是非、評注記事の執筆をお願いします!(^^)!

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