(写真:優勝された鄭惟桐選手)
今年の碧桂園杯では鄭惟桐選手が優勝されました!
鄭選手、優勝おめでとうございます!!(*´▽`*)
今回の記事では碧桂園杯の決勝戦の鄭惟桐選手と王天一選手の棋譜を紹介します!
試合について
碧桂園杯は、中国個人戦で優勝したことのある選手のみが招待され、参加することの出来る大会で、事実上、シャンチーの中で最もレベルの高い大会です。そのため、この大会では一局一局の全てとてもレベルの高い試合で、名局が多く生まれます!そう言った意味でシャンチー(象棋)ファンは全局チェックし、しばらくの間シャンチー漬けの日々を過ごすことが出来ます(*´▽`*え)
○試合について
開催日:2021年12月4日~11日
開催地:広東省佛山市順徳碧桂園度假村
持ち時間:60分+20秒、その後引き分けだった場合快速戦を行う
(快速:10分+10秒⇒紅6分+5秒、黑4分+5秒で和は黒勝ち)
参加選手:現役中国個人選手権チャンピョン(男子)
試合方法:トーナメント方式(一度負けても負けた中でさらに対局して勝つとトーナメントに戻ることも出来ます)
奨励:決勝は一局勝つと5万元、和は1.5万元、快棋で勝つと5万元、勝者区での決勝は一局勝つと4万元引き分けは1万元、快棋で勝つと4万元、その他試合に参加されている選手は参加すると1万元、トーナメントの各試合で勝つと2万元、和は1万元と言った感じで賞金が増えて行くのでとても複雑な奨励方法です。
(一局の結果ごとに奨励額がかわるため、全ての対局の内容が素晴らしものになることにもつながります!^^)
○優勝された鄭惟桐選手からひとこと
「今回の試合の過程はとても大変なものでした。碧桂園の皆さん、十年以上に渡って試合に大きな支持をして下さってありがとうございます!シャンチーの大会の開催の模範を樹立しました!日本のシャンチーファンの皆さん、応援して下さってありがとうございます!今後もより多くの交流をしましょう!!^^」
鄭さん、優勝おめでとうございます!
今後も是非日本との交流をお願いします(*^▽^*)
○対局表
試合方法が複雑なので対局表を見た方が組み合わせが分かりやすいです!
○決勝戦とライブ中継の様子
この大会はインターネットでライブ中継がされていたのですが、最後の鄭さんと王さんの対局の中継はとても豪華に党斐さん(大師)、許銀川さん(特級大師)、李鸿嘉さん(大師)で行われました!
これだけ豪華なら盛り上がりますね(*´▽`*)
○関連記事
こちらの記事の中には動く棋譜があるので棋譜観賞が出来ます!^^
棋譜紹介
今回紹介する棋譜は碧桂園杯決勝戦の快速戦です。この一局での勝利により、鄭惟桐選手は今年の碧桂園杯で優勝されました。お互いに対攻の激しい対局で、歴史に残る高いレベルの名局です。
紅方:鄭惟桐
黒方:王天一
結果:紅勝ち
1. 炮二平五 馬8進7 2. 馬二進三 車9平8
3. 車一平二 卒7進1 4. 車二進六 馬2進3
5. 兵七進一 馬7進6 6. 馬八進七 車1進1
開局は中炮過河車対屏風馬左馬盤河横車です。これは長年に渡って流行している開局です。この開局の特徴は対攻が激しいことで、一手でも間違えるとすぐに負けてしまう変化も多くあります。快速戦で使われることから両選手がどちらもこの試合で勝つという気持ちを持っていることが伝わってきます。このような開局では開局の変化の研究への深さが直接勝敗につながることが多くあります。
7. 車二平四 馬6進7 8. 馬七進六 車8進1
第7回合の紅の車二平四は多く使われる王道な変化です。そのほかには、兵五進一(一番激しい)や車二退二(一番穏健)、炮八進三、炮八平九などの変化もあります。
9. 仕六進五 車1平6 10. 車四平二 炮8平5
第9回合の紅の士六進五は等着です。黒の動向を見て、次の局面の展開方針を決めて行きます。ここで、紅がもし馬六進五と指すと、黒は馬7進5と指し、相七進五炮2進1馬五進七炮2平6馬七進九車8平1と進むと、コマの大交換後に引き分けの形勢になります。
11. 車二平三 車8平7 12. 車三進二 車6平7
この数回合で紅は連続で2回車交換をさけました。そしてやっと三路で車交換をしました。これにより、交換後、黒の車は卒の進路で動きが邪魔される7路にあるため、すぐに使うことが出来ません。6路や8路にあるよりも、黒車の位置が若干不利です。このような細かい点からも、特級大師の力を感じます。
13. 炮八平七 車7平4 14. 馬六進七 車4進2
15. 車九平八 卒7進1 16. 兵七進一 炮5平7
この数回合で紅黒ともにコマの位置を調整し、相手の三路を狙います。
ここまでで、お互いに対攻する形勢になりました。
17. 車八進四 車4進3 18. 炮七進二 車4平3
第18回合で紅が車八平三と指すと、車4平3車三退一車3進1と進み、その後、黒には炮2進7と指し、先に攻撃を展開する手があります。このように進むと黒が有利です。
19. 相七進九(図1) 卒7平6 20. 兵七平六 炮7進5
第19回合の黒の卒7平6は敗着です。ここでの正解は卒7平8です。ただ一見なにが違うのかよくわかりません。卒7平8の場合、もしも実戦のような展開へ進むと、兵七平六炮7進5炮五進四炮7平3!炮五退一炮3退2と進み、次に紅がもし車八進三と指すと、黒には炮3平7の妙手があり、黒が優勢です。そのため、紅は相九進七と指す必要があります。そして、黒は炮2平1と指すことが出来ます。紅は炮が一つ交換され、攻勢が減ります。黒がコマ得で、長期戦になると有利になります。ただ、実戦で黒は卒7平6と指したため、炮3平7の妙手がなくなりました。
快速戦ではトッププロでもこのような筋をよむのは難しいです。多くの場合、第19回合で普通の選手は馬7進5相三進五卒7進1の変化を選択します。これは無難な指し方で、黒は不利になりません。ただ、王天一選手の棋譜は極力コマ交換をさけ、複雑な局面を維持する特徴があります。そういう意味では、今回の一局での王天一選手は自分の棋風の特徴から負けてしまったと言えます。
21. 炮五進四 炮2平1 22. 炮五退一 炮1進4
前の分析のように、第21回合で黒が炮7平3と指すと、炮五退一炮3退2車八進三と進み、紅が大優勢です。そのため、ここで黒は炮2平1と指しました。
23. 兵五進一 炮1退2 24. 馬七進五 士4進5
第23回合の紅の兵五進一は必要な手です。このように指さない場合、次に黒が炮1平5と指し、士五進四(帥五平六車3平4士五進六車4進1帥六平五炮7平5と進むと黒の勝ち)馬7進5士四進五馬5進3帥五平六(帥五平四なら炮5平6)車3平4と進むと黒勝ちです。
25. 馬五進七 将5平4 26. 炮七平六 士5進4
27. 兵六平七 馬3進4 28. 車八進三 士6進5
29. 炮五進一(図2)
ここまでの数回合での紅の一連の殺法はとてもきれいです。ほぼ全部が強制的な指し方で、黒は抵抗する余裕がなく、負けてしまいました。
このようなきれい殺法を観賞できるのは、シャンチーファンとしてとてもうれしいです。
○おわりに
今回は碧桂園杯の決勝戦の棋譜を紹介させて頂きました!
シャンチーの名局が多く生まれる碧桂園杯がこれからも長く続くことを祈っています(*´▽`*)
コメント
[…] 今回も第1回目の記事に引き続き優勝された鄭惟桐特級大師の棋譜を紹介させて頂きます!! […]