“棋聚五洲”第二回世界シャンチー(象棋)インターネット棋王賽の予選賽の棋譜紹介!

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“棋聚五洲”第二回世界シャンチーインターネット棋王賽の予選賽が開催されました!

予選賽の棋譜より、楊帆さんに頂いた評注入り棋譜を紹介します!

はじめに

○大会概要

開催日:2021年12月4-8日(予選)、12月9-12日(決勝)

持ち時間:20分+5秒(一手3分以内に指す)

試合方式:個人戦(天天象棋利用)

予選賽は7R

○決勝戦結果:

マレーシアの黎徳志選手(中国の大師です!)が優勝し、準優勝は中国の程鳴選手でした!

入賞された皆さま、おめでとうございます!(*´▽`*)


“棋聚五洲”第二回世界シャンチーインターネット棋王賽の予選賽が12/4-8にかけて開催され、日本からは可児宏暉選手、所司和晴選手、田中篤選手、曽根敏彦選手、楊帆選手が出場されました!

予選賽は7ラウンドの対局をし、上位14名+中国から2名の選手を加えた16名で決勝トーナメントが行われます。日本の選手は決勝に進むことは出来ませんでしたが、可児選手は勝ち越しで9ポイントを獲得し23位に入りました!素晴らしい好成績です!

また、参加された皆さんは力いっぱい戦い、それぞれに満足の行く内容の対局があったようで、とても勉強になった大会でした!

今回は楊帆選手に本大会の一局から解説入り棋譜を頂きましたので、皆さん是非お楽しみ下さい(*´▽`*)

また後日田中選手にも棋譜を頂けそうですので、そちらもお楽しみに!!^^


○可児さんとの対局相手が書いた記事↓

“棋聚五洲”棋手来稿|橘中秘里探棋缘

対局相手が試合後に可児さんとの対局について感想を書いていたのを発見しました!

(中国語のページですが^^)


棋譜紹介

今回紹介する棋譜は棋聚五洲杯の4Rの対局です。相手はシンガポールの李華興選手です。私にとってはミスなく今の実力を発揮できた一局です。また、開中残局がそろって研究する価値のある棋譜だと思ったので紹介させて頂きます。

紅方:李華興

黒方:楊帆

結果:黒勝ち

  1. 炮八平五  馬2進3    2. 車九進一  卒3進1

初手の炮八平五は通常の炮二平五と逆方向です。相手が慣れていないと、開局で時間をつかうことや、覚えた棋譜を間違えて指す可能性があります。アマチュアの大会ではよく使われる盤外技です。初手から李選手も勝つために色々なことを考えたことが分かります。

  3. 車九平四  馬8進7    4. 馬二進三  卒7進1

第3回合の紅の車九平四は少ない指し方です。通常はここで馬八進七黒車1平2と進みます。

前日に李選手の前のラウンドの棋譜は監督の中村さんからすでに送られてきたので、李選手のこの指し方はすでに把握済みです。そのおかげで、開局の対策を準備することができました。第3回合で黒は車1平2と指す通常の手順を省略し、直接屏風馬にしました。後になるとわかりますが、この一手はとても得です。

  5. 馬八進七  象3進5    6. 車一進一  士4進5

  7. 兵五進一  車1平4 

第7回合で紅は中炮双正馬双横車急進中兵の陣形になりました。これはアマチュア選手の愛用する典型的な開局の一つです。この開局の特徴は次に盤頭馬の攻撃により、コマを中心に集中させ、強い攻撃力があることです。相手は対応を少しでも間違えるとすぐに負けてしまいます。ただ、プロのレベルの選手は大体正しく対応することが出来るため、この陣形の変化を使うことは比較的少ないです。この開局の攻防規律も研究されているので、紅が良くても引き分けになることが多いです。そのため、トッププロの試合でこの開局はあまり見ません。(たまにプロの試合でも、黒が引き分けでも必ず勝ちの扱いになる快速戦の時、勝ちたい紅が激しい対局にするために用いることがあります)

第7回合で黒は車1平4と指し、重要な位置を占領しました。次に紅がもし馬三進五と指し、炮2進4兵七進一炮2平3相七進九炮8進4兵三進一車4進6!と進むと黒が優勢です。ここからわかるように、第3回合の黒の車1平2の一手を省略した手はとても得です。ここでもし車が2路にあると、車4進6の強い手がなくなります。 

 8. 車四平六  炮8平9

紅は仕方なく車四平六と指し車を交換しました。ただ紅の車の往復の移動は開局での失敗の特徴の一つです。このような指し方はできれば避けたいです。

  9. 車六進八  士5退4   10. 炮二平一  車9平8(図1)

(図1)

第10回合までで、紅は双馬双炮車中兵と6歩移動しましたが、黒は双馬双卒車炮象と7歩移動しました。そのため、黒はすでに反先(開局成功)と言えます。

 11. 車一平八  炮2進2   12. 馬三進五  馬7進6

 13. 兵五進一  馬6進5   14. 馬七進五  炮9進4

 15. 馬五進六  炮2平4   16. 兵五平六  馬3進4

ここまでで、黒は紅の中炮盤頭馬急進中兵の開局の攻撃手段の一番多い盤頭馬と中兵を交換しました。そして、黒は卒も多いためすでに優勢です。

 17. 車八進五  馬4進6   18. 仕六進五  車8進6

 19. 炮五進一  車8平7   20. 炮五平一  車7平9

 21. 車八退二  卒7進1   22. 車八平五  車9平3

 23. 相七進五  卒1進1

第22回合で紅は不利の局面の中で頑張った手を指しました。紅の車八平五と指した手により、次に黒の馬が移動したら、黒の中卒をとることが出来ます。

第23回合で黒には卒5進1車五進一馬6進4車五進一車3平1の手段があります。黒は中卒がなくなりますが、馬が良い位置にあるため満足です。

 24. 相五進三  車3退1   25. 車五退一  馬6退4

 26. 車五進三  車3平7   27. 車五平一  車7進1

紅は相を一つ失ったかわりに黒の二つの卒をとりました。

 28. 炮一平五  士6進5   29. 炮五進四  馬4進6

 30. 炮五平九  馬6進8   31. 車一平六  車7平2

第27回合で黒がもう一つの相をとらないのは、先に紅の辺兵をとりたいと考えたためです。ただ紅は炮五進四炮五平九の手段により、辺兵を守りました。とても頑張った指し方です。

 32. 帥五平六  車2進3   33. 帥六進一  卒3進1

 34. 車六退三  馬8退6   35. 車六平四(図2)  馬6退5

(図2)

第35回合で黒には馬6退4炮九平七馬4進2炮七進二卒3平4と進めて行く攻撃があります。次に黒には馬2進3や馬2進4、卒4進1など色々な攻撃手段があります。このように進むと、紅は守りが難しいです。実戦ではそこまで読めませんでした。

 36. 相三進五  馬5進4   37. 車四平六  車2退6

 38. 炮九進三  象5退3   39. 帥六退一  車2進6

 40. 帥六進一  車2退2   41. 相五退三  車2平7

 42. 炮九平八  車7進2   43. 炮八退七  車7退2

 44. 炮八平四  車7退2   45. 帥六退一  車7平6

 46. 炮四平五  象3進5   47. 帥六平五  車6退1

第47回合で黒には卒3進1の手がありました。チャンスを一つ失いました。

 48. 炮五平六  車6進2

紅は中盤でとても粘り強く頑張りました。ここまでで、黒の持ち時間はすでに一分を切りました。そして紅はまだ5分ほどあります。紅の李選手の指す手は精度が高くありませんが指す速度は速いです。これもシンガポールをはじめ、東南アジア選手の全体的な特徴です。今後、持ち時間の少ないネット大会が増える中、スピードを上げて指して行くことは重要な課題の一つです。

第48回合で黒は馬4進6と指すと、局面はまだ複雑のままで、黒は勝つ可能性の高い局面です。ただ時間が少ない中、複雑な局面のままではミスが出て逆転される心配もあります。そのため、黒は車交換を選択し、局面を簡単化しました。

車を交換した後、紅は黒の辺卒をとることが出来ます。これは計算漏れではなく、すでに読んでいた結果です。ただ、今の実力(指すスピード含め、ミスの出る確率を考えた結果)を総合的に考えて車交換すべきと判断しました。

 49. 車六平四  馬4進6   50. 炮六平九  卒3平2

 51. 炮九進三  馬6退4   52. 炮九平一  馬4進3

 53. 仕五進六  馬3退1(図3)   54. 仕四進五  卒2平3

(図3)

第53回合までで、馬卒士象全対炮双士の残局になりました。通常この局面は引き分けですが、黒にはもう負けるリスクがありません。局面が簡単なため、一分間の時間でも余裕をもって指すことが出来ます。ここから黒はシステムが引き分けと自動判断するまで引き分けせずに、相手のミスを待ち続けると決めました。

 55. 炮一進四  士5退6   56. 炮一退三  卒3平4

 57. 炮一平五  士4進5   58. 帥五平四  卒4進1

 59. 炮五平八  馬1退3   60. 炮八退五  馬3進5

 61. 炮八進五  馬5進7   62. 帥四平五  象5退3

 63. 炮八平五  士5退4   64. 帥五平六  馬7退6

第62、63回合で、黒が象と士を下げた手は将の力を利用する目的の手です。

 65. 炮五退二  馬6進8   66. 炮五退二  馬8進7

第65回合の黒の馬6進8は罠を仕掛けた手です。次に紅がもし帥六平五と指すと、卒4進1士五進六馬8進6と進め黒は炮をとります。実戦では紅は罠にかかりませんでした。ここまで、紅はまだ冷静に残局の局面判断が出来る余裕があります。

 67. 炮五進四  将5進1   68. 炮五退一  馬7退6

 69. 炮五進一  卒4平3   70. 炮五退三  将5平4

 71. 帥六平五  卒3平4   72. 炮五進三  馬6進7

 73. 帥五平四  将4平5   74. 炮五平八  馬7退8

第74回合で紅は黒からの連続するジャンや捉炮に疲れが出たのかもしれません。炮五平八と指し、炮を中路から移動させました。本来はこの残局では紅の炮を中路に置いておくのは引き分けの定跡です。

 75. 炮八退五  馬8退6   76. 炮八平六(図4)  馬6進7

(図4)

第76回合の局面では、黒の卒には根があります。それでも紅が炮八平六と指した手は次に炮六進二と指し卒をとり、馬対双士の簡単な局面で引き分けにしたいと言う気持ちのある手です。ただ、この手から、紅の連続の攻撃に対し黒の心は動揺し、冷静な判断を失っているように感じました。

さて、ここでこの一局の最高潮の局面です。黒の馬6進7は妙手です。次に紅がもし帥四平五と指すと、黒は卒4進1で士をとり、これも黒勝ちの局面です。

 77. 帥四進一  馬7退5   78. 帥四退一  馬5進4

第78回合までで、黒は妙手で炮をとり勝勢になりました。

 79. 帥四進一  馬4退2   80. 帥四退一  馬2退3

 81. 帥四進一  卒4進1   82. 仕五進六  馬3進4

 83. 帥四退一  将5進1

この一局では、黒は事前の準備により開局が成功しました。中盤までとても優勢に進めることが出来ました。相手が速指しで、それなりに粘り強い指し方をする方だったため、黒は複雑な局面でなかなか入局することが出来ませんでした。時間が少ない中、仕方なく局面を簡単化し、ほぼ引き分けの残局に入りました。しかし、残局では連続で相手に圧力をかける手が続いたため、相手にミスが出ました。そのミスを捕まえて、妙手で勝つことが出来ました。

すべての手が正しい完璧な一局と言えませんが、今の実力を発揮できた棋譜です。


○おわりに

楊さん、評注を頂きありがとうございます。

観戦していた時は、途中からは時間差があるものの負けはなさそう…、引き分けだろうな、と思って見ていましたが、最後はきれいに勝ちの局面になり「おお~」となりました!

読者のみなさんにも評注をお楽しみ頂ければ、嬉しく思います!


○決勝トーナメント出場者リスト

優勝は黎徳志選手でした!

コメント

  1. […] […]

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