今回は第30届“五羊杯”全国象棋チャンピョン招待大会の棋譜紹介をさせて頂きます!
こちらは第2回目の記事になります!
今回も第1回目の記事に引き続き優勝された鄭惟桐特級大師の棋譜を紹介させて頂きます!!
是非第1回目の記事も合わせてご覧ください^^
(中国語の要項ページはこちら)
棋譜紹介
〇はじめに
今回紹介するのは2023年五羊杯の準決勝の鄭惟桐選手対汪洋選手の一局です。
この一局は歴史に残る名局だと思います!
素晴らしい一局ですので皆さん是非棋譜鑑賞をお楽しみ下さい!^^
紅方:鄭惟桐
黒方:汪洋
結果:紅方勝ち
(棋譜を動かして見たい方はこちら)
1. 兵七進一 卒7進1 2. 炮二平三 炮8平5
3. 馬八進七 馬8進7 4. 相七進五 馬2進1
5. 車一進一 車9平8 6. 馬二進一 炮2平4
7. 車九平八 車1平2 8. 車一平六 士6進5
9. 車六進四 車8進7 10. 炮三退一 車2進6
開局は人気の対兵局紅兵底炮です。両選手ともに定跡の棋譜通りに布陣して行き、正々堂々とした展開で進みました。ここまでで局面は均勢です。
11. 車六平三 象7進9 12. 車三進一 車8退3
13. 兵三進一(図1) 卒3進1 14. 馬一進三 車8進2
第13回合の黒の卒3進1は正着です。ここで黒が車2平3と指すと、紅は車八平七と指し、次に紅には炮三進二の手があるため、紅の先手です。
第14回合で紅が馬一進三と指した手はこの一局のポイントです。次に黒がもし卒3進1と指し、兵三進一車8進2馬三進四と進むと、紅の先手です。
15. 兵七進一 車8平7 16. 炮三平七 炮4平3
第15回合で紅が兵七進一と指し、馬を放棄した手は勇気と知恵の溢れる天才的な一手です。ここで紅が馬三進五と指し、黒が卒3進1と指し、相五進七炮5進3と進むと、局面は平穏で概ね均勢です。
17. 馬七進六 車2退1 18. 炮七進六 車2平4
19. 炮八平七 炮5進4 20. 仕六進五 車4進3
第19回合の紅の炮八平七は攻勢を維持するための攻撃的な手です。ここで、紅が炮七平三と指し馬をとり戻し、黒が炮5進4と指し、士六進五車7平6炮八平七車4平3と進むと、黒が十分な局面です。
21. 相三進一 車7平8 22. 相一退三 車8平7
23. 相三進一 車7平8 24. 相一退三 車8進3
25. 炮七平四 将5平6 26. 炮七退二(図2) 車8平7
第25回合の紅の炮七平四は妙手です!次に黒がもし車4平5と指し、仕四進五車8平7炮四退七と進むと、紅はぴったり黒の殺を守ることが出来ます。また、黒がもしも次に士5進6と指し、車三平五士4進5車五退三と進むと、紅はコマ損ですが兵が多く、黒の陣形が乱れているため(紅の炮七進七により、黒の1路の馬の根が失われる等)、紅が十分な局面です。
第26回合の黒の車8平7はこの一局の敗着のようです。黒は局勢を誤判断していたかもしれません。黒はコマ得かつ双車炮の攻勢があるため、黒は自分が有利と認識し、相をとって攻撃を発動しました。しかし実際のところ、ここで黒は士5進6と指し炮をとったほうが良かったようです。次に車三進一士4進5と進むと、コマ交換により、紅の反撃するための兵力が弱まり、黒のコマ得の優勢が確実になります。 第26回合で紅が炮七退二と指した後、紅の七路の炮は防衛用のため簡単に移動することが出来ません(例えば、紅が炮七進九と指すと、黒には車4平5の殺があります)。このように進むと、戦いはまだまだ長いです。
27. 車八進三 車4平5 28. 帥五平六 車5退1
第28回合の黒の車5退1は速敗の手です。ここで黒が車5平6と指し、車八平五車6進1炮七平四車7平6帥六進一車6退7と進むと、紅はコマをとり戻し優勢な局面になりますが、黒は速敗しません。
29. 炮七進九 将6進1 30. 車三進一 車7平6
第29回合の紅の炮七進九の手から、紅の勝ちが決まりました。
ここからの紅のきれいな殺法を鑑賞して行きましょう。
31. 帥六進一 車6退1 32. 帥六退一 車5平4
33. 帥六平五 馬1退3 34. 炮四平九 車4進1
第33回合で黒が士5進6と指し炮をとると、紅は車三進一で速勝です。
第34回合で黒が馬3進1と指し、車三進一将6進1車八進四士5進4炮七退二士4退5炮七平九と進むと紅の勝ちです。
35. 車三進一 将6進1 36. 車八進四 馬3進5
37. 車八平五(図3)
最後の一手で紅は車を放棄し、馬をとりました。これは素晴らしい妙手です!次は紅の重炮により勝ちです。最後の殺の形から考えると、第26回合で黒が早めに炮をとらなかった手が失敗の原因であることが分かります。
おわりに
この一局では、黒は中局でコマ得し、さらに双車炮の強い攻勢があります。一般のシャンチーファンのみでなく、対局した汪洋選手本人も黒が有利という錯覚を持ったのではないかなと感じます。しかし鄭惟桐選手は最初から最後まで正確に局面を把握し強い手を指し続け勝利しました。この一局で鄭選手はまるでAIのような精確な指し方と計算力を示しました。人類最強とも感じる鄭選手の素晴らしい一局でした!
鄭選手の棋譜紹介のバックナンバーも是非ご覧ください!
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