シャンチー(象棋)中国個人選手権の棋譜紹介【王天一選手対鄭惟桐選手】

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今回はシャンチー(象棋)中国個人選手権の準決勝の第2試合の棋譜を紹介します!

はじめに

準決勝第2試合:

「歴史に残る名局」

これまで全国個人戦の舞台で歴代の最強選手たちは精一杯戦い、この舞台で多くの名局を残して来ました!今年(去年)もまた、歴史に残る名局がいくつも誕生しました。  

今回紹介する対局も歴史に残る素晴らしい名局です!

今回紹介する棋譜は準決勝の王天一選手と鄭惟桐選手の対局です。中国国内レイティングの1位、2位選手同士の対決です! このシャンチー界のトップ対決はどのような一局だったのでしょう。

それでは、棋譜を見て行きます(*´▽`*)


〇この対局は以前ビデオでも紹介しました↓

動画の方が良い方はこちらをご覧下さい!

棋譜紹介

紅方:王天一

黒方:鄭惟桐

結果:紅勝ち

1. 相三進五 馬8進7 2. 兵三進一 卒3進1

3. 馬二進三 馬2進3 4. 馬八進九 車1進1

紅の初手は飛相局です。

王天一選手は強い攻撃で良く知られていますが、実際は飛相局などの穏健な開局を多く使います。王選手は相手の陣形の中で弱点を見つけると、攻撃を仕掛けて行きます。

第4回合までで、「紅単提馬対黒屏風馬横車」の比較的穏やかな陣形になりました。

5. 仕四進五 象7進5 6. 車九進一 車9進1

第5回合で紅には先に車九進一と指し、車1平6車一進一と進めることで、紅が双横車になる展開に進む指し方もあります。これも穏健な展開です。

7. 車九平六 車1平4 8. 車六進七 車9平4

第8回合までで、紅黒ともに車を1つ交換し、局面はとても穏健です。

9. 車一平四 炮8退2 10. 兵七進一 車4進3

第9回合では黒が卒7進1と指し、兵三進一象5進7と進む指し方もあり得ます。ただ、トッププロの考え方では一手損で高象にするのは陣形が乱れるため、このような指し方はコマの移動の効率が高くないと考えられています。

第10回合の紅の兵七進一は王選手の棋風が現れた一手です。とても平穏な局面で、いきなり攻撃を発動しました!

第10回合で黒が卒3進1と指すと、炮八平七卒3平4馬九進七(炮七進七士4進5と進むと、次に黒が車4平1と指し、紅の炮がなくなります)卒4進1炮七進五卒4平3炮七平三炮2平7車四進七車4平7馬三進四士6進5車四退一と進み、黒のコマの位置が窮屈なため、紅が有利です。

11. 馬三進四 車4平6 12. 兵七進一 車6平3  

13. 馬四進三 車3平8 14. 炮二進七 馬7退8

第10回合の紅の兵七進一はもともと兵をすてる手でしたが、第13回合までで、紅は逆に兵が1つ多くなりました。このような王選手の中局の進め方は深く、とても勉強になります。

ここまでで、黒も紅の攻撃を最小限に抑えました。

第13回合の黒の車3平8は穏健な指し方です。ここでは馬3進4と指し、紅の中兵を攻撃する積極的な指し方もあります。次に車四進三炮8平7炮二平三炮7進3炮三進四卒5進1と進むと、黒が十分です。

15. 炮八平六 馬3進4(図1) 16. 炮六進七 将5平4

(図1)

第15回合の黒の手はこの一局を劣勢にして行く手だったようです。ここでは黒は馬8進7や士6進5と指すと、局面は平穏で問題はありませんでした。

第16回合で紅は炮を放棄し、士をとりました。妙手です!王天一選手らしい強気で攻撃的な指し方です。

17. 車四進九 将4進1 18. 車四平七 将4平5  

第18回合までで、紅は1つの炮と黒の2つ士と1つの象を交換しました。この交換は、結論から見ると紅が有利です。ただ、紅がここからの入局と殺法をどのように指して行くのかはとても重要です。もし殺までたどり着かない場合、後々黒のコマが多く、黒はコマの多い優勢を発揮することが出来ます。そのようになると黒には逆転の可能性もあります。

19. 車七退一 将5退1 20. 馬九進七 馬4進3

第20回合の紅の馬九進七もまた上手な一手です。一般的にコマ損をしている攻撃側は攻撃の兵力を温存するためコマ交換をさけ、逆にコマの多い防衛側がコマを交換し、局面を簡単化させたいと考えます。ここでは、紅はあえて自らコマを交換しました。これは黒の馬が攻防のための重要な位置にいるため、その馬を交換することが紅にとって有利と判断した手です。まさにトッププロの大局観です。

21. 車七退五 象5進3 22. 車七平八 炮2平4

第22回合で黒が炮2平5と指すと、紅は馬三進二!と指し、車8退2(車8退3車八進六将5進1車八退一将5退1車八平二、紅が勝勢です)車八進六将5進1車八平二炮5進4(次に黒には車8進7の殺があります。もし紅が次に帥五平四炮5平8と進むと、黒が十分です)馬二進四!車8退2馬四退三と進むと、紅がコマをとり戻し、黒の陣形がとても悪いので紅が大優勢です。

23. 車八進三 馬8進7 24. 車八進一 車8平4(図2)

(図2)

第23回合で紅が車八進三と黒の馬を跳ねさせた後、車八進一と指した手はとても上手な手順です。それにより黒は車8平4と指すことしか出来ず、車、馬と炮が牽制されました。

第23回合で紅が車八進四と指すと、黒は炮4退1と指し、紅は次の有効な手段がとくにありません。

25. 馬三退四 車4退1 26. 兵三進一 馬7退5

第25回合で黒が車4進1と指しても、紅が兵三進一と指し、車4平6車八平六馬7退8車六平七と進むと、これも紅が大優勢です。そのため実戦の指し方の方が粘りが強い指し方です。

27. 兵五進一 馬5進6 28. 兵三平四 馬6退5    

29. 馬四進二 車4進1 30. 馬二進一 将5平6

31. 馬一進三 馬5退3 32. 車八平七 馬3進5

33. 車七平八 馬5退3 34. 車八平七 馬3進5

35. 車七平八 馬5退3 36. 車八平七 馬3進5

37. 車七平八 炮4平3 38. 車八進二 炮3退2

第38回合で黒が将6進1と指すと、紅は馬三退一と指し、次に馬一進二将6進1車八平四将6平5兵四進一と進むと、紅がほぼ殺の形になります。

39. 馬三退四 車4退4 40. 車八退二 馬5進4

第39回合で紅の馬三退四はとても厳しい攻撃です。また、ここでは紅に兵四平五と指す攻撃手段もあります。次に黒がもし卒5進1と指すと、紅は車八退六で殺の形になり、次に黒が何を指しても紅が大優勢です。

第39回合の黒の車4退4は頑張った手です。次に紅が間違えて馬四進五と指すと、黒は炮3進9と指し、黒が車得です。

第40回合で黒が馬5進6と指すと、紅は兵四進一と指し、これも紅が大優勢です。

41. 車八平四 将6平5 42. 車四平五 将5平6  

43. 馬四進三 将6進1 44. 兵四進一 炮3進1

45. 兵四進一 将6退1 46. 帥五平四 車4進1

47. 車五進二(図3)

(図3)

最後の数回合の殺法は紅が精確に指しました。黒は守る方法がなく、第47回合までで絶殺の局面なりました。


〇おわりに

この試合は紅が強気な攻撃と深い計算の殺法、大局観を十分に発揮した一局でした。すべての手がとても精確で素晴らしい手ばかりです。同時に黒もほぼミスすることなく指しました。その中で黒のミスの手を探すのであれば馬3進4の手になりますが、普段そのように指しても、そこから攻撃を発動する相手はあまりいないと思います。そして、劣勢の状況の中でも黒も一番粘り強い手を指し続けました。

そのようなレベルの高い対戦相手同士だったからこそ、この素晴らしい名局が誕生しました!

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