第8回「財神杯」シャンチー(象棋)快速賽の棋譜紹介!

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第8回「財神杯」シャンチー(象棋)快速賽が広東省佛山市で開催されています!

快速戦なので持ち時間はもちろん短いのですが…

なんとその持ち時間は6分+3秒!! Σ(゚Д゚)

紅黒を入れ替えて2試合指し、引き分けだった場合、紅方6分+3秒、黒方4分+3秒(引き分けの場合黒の勝ち) の対局を行います。

快速戦とは言っても棋譜のレベルは素晴らしいので、是非皆さんにも見て頂きたいな~と思い、棋譜を紹介させて頂くことにしました(*´▽`*)

財神杯について

この大会では“火族騎士”と“冰族法師”の2組に分かれてトーナメント形式で試合が行われます。

火族騎士:

王天一、鄭惟桐、蒋川、趙鑫鑫、謝靖、徐超、汪洋、孟辰

冰族法師:

呂欽、徐天紅、趙国栄、陶漢明、柳大華、于幼華、孫勇征、洪智

上記の個人選手権の優勝経験のある選手(選手に補充が必要な場合優勝選手でなくても招待されます)が防衛側となり、それを攻撃する挑戦者として予選大会を勝ち抜いた選手が参加します!(挑戦者勢も香港の強豪選手や中国での有名選手等がほとんどです)

予選大会を勝ち抜いた挑戦者:李進、張彬、廖志龍、趙汝権、苗利明、庄玉庭、周涛、黄文俊、梁運龍、馮家俊、蔡佑広、呉魏、何偉寧、黄光穎、劉宗澤、段書航

〇知り合いの記事に棋譜がいくつかあります↓

财神杯火族守擂大胜 王天一郑惟桐汪洋晋级16强
1月12日,2020年第八届“财神杯”视频象棋快棋赛16强出炉。16进8对阵如下:徐天红vs周涛,赵国荣

棋譜紹介

今回紹介する試合は第8回財神杯の第1ラウンドの試合です。

黒は皆さんも良く知っている中国レーティング1位の王天一選手です。

紅の選手は皆さん恐らく初耳だと思います。実際私もはじめてこの選手を知りました。昔のアマチュア大会でもあんまりこの選手の名前を見たことがありません。(予選を通過した16人中、廖志龍選手以外は大師か名前を聞いたことのある有名なアマチュア選手です)

最強選手対予選大会でのベスト16位入りした棋力不明な選手(ただ私が知らないだけかもしれませんが)の対局はとても興味のある一局で、リアルタイム中継をずっと見ていました!

そして、是非みなさんにも紹介したいな~と思う対局でしたので、今回の記事で紹介させて頂くことにしました(*^^)v

それでは、試合を観戦していきましょう。

・・・ちなみにもう一度言います!

これは6分+3秒の棋譜です!

(私だったらこの持ち時間を見たらまずエントリーしない…笑)


紅方:廖志龍

黒方:王天一

結果:黒勝ち

1. 炮二平四 馬8進7 2. 兵三進一 車9平8

紅の初手は士角炮でした。この開局は柔軟性のある開局です。王天一選手に対し、この戦法を採用するのはとても意外でした。

2. 馬二進三 炮8平9 4. 兵七進一 炮2平3

ここまでで仙人指路対卒底炮の陣形にも変換しました。これは士角炮の特徴の1つです。士角炮はいろいろな陣形に変換できる柔軟性があります。

5. 炮八平五 卒3進1 6. 相七進九 卒3進1

第5回合の紅の炮八平五は強い手です。相三進五と指すと通常な穏健な変化になります。紅の選手が中国レーティングナンバー1の王天一選手の前でこのような攻撃的な戦法を使うのは、とても勇気のある手だなと思います(さすが予選を勝ち抜いた選手です!!)。

7. 相九進七 象3進5 8. 馬八進七 車8進4  

9. 車一平二 車8平3 10. 兵五進一 車3進1

第5回合の紅の中炮の選択により、紅には高相の弱点が出来ました。第9回合で黒は精確にその弱点を狙いました。紅の相の損はすでに避けることが出来ませんが、次にどのような選択をするのかがとても重要になります。

第10回合で選択した兵五進一はもっとも激しい変化です。今後馬七進五と進み、中炮盤頭馬急進中兵の陣形になりました。これは中国のアマチュア選手たちがとても好きな陣形で、とても激しい変化になります。

11. 馬七進五 車3退1 12. 兵五進一 卒5進1(図1)

(図1)

13. 馬五進四 卒7進1 14. 兵三進一 馬7進6

第12回合まで局面は両方対峙です。第13回合の紅馬五進四は少し急ぎすぎだったかもしれません。結果、紅の五路の良い位置の馬と黒の7路のまだ出てない馬の交換になりました。紅にとっては若干損なようです。ここでは車九平八と車が出て、今後戦場に投入出来るように指す方が良かったかもしれません。

15. 兵三平四 卒5進1 16. 兵四平五 馬2進4

第16回合の紅の兵四平五は好手です。多少損な局面ですが、最大限の攻撃力を維持しています。

17. 車二進四 卒5進1 18. 炮四進三 車3進2

19. 車二退一 車1平2 20. 車二平五 車2進6

第19回合で黒は卒5平6で、卒を保留する指し方もあり得ます。ただし、そのように指すと、右の車の出遅れと中路の防衛が薄いという懸念もあります。実戦の車1平2で卒を捨てる指し方は局面を総合的に判断した上での選択です。

21. 車五進一 士4進5 22. 兵五進一 象5進7

第21回合で紅がもし車五平七と指すと、紅の攻撃が緩み、黒の第19回合の車1平2の戦略目的を達成することができます。実戦の車五進一は最大限攻撃力を保留する勇気ある選択です。試合後の復盤で王天一選手もこの手を高く評価しました。

23. 車五平六 馬4進3 24. 車六進二 馬3進2

第23回合の紅の車五平六は随手(しっかりと計算せずに指した手)です。この局面の頃にはお互いに持ち時間がとても少なかったので長い計算時間は残っていませんでした。この手により、黒の馬がちょうど出ることが出来ました。ここではやはり車九進一と指して、早くもう1つの車を戦場に投入するのが紅の急務だったようです。

25. 馬三進四 車3退2 26. 炮四進一 炮9平6

27. 車六平八 炮6進3 28. 車八進三 炮3退2

29. 仕六進五 炮6平5

最後の数回合で紅は時間があまりありませんでした。第27回合の車六平八は見落としです。黒はただで馬を取りました。紅はジャンしても殺ではありません。

ここで、紅は投了しました。


〇試合の様子

(写真:王天一選手(左)と廖志龍選手)

〇おわりに

この試合で紅の廖志龍選手は最強の相手に対しても、恐れることなく攻撃して素晴らしい一局を残しました。中局でも複雑な局面を作り最後まで攻撃の姿勢を崩しませんでした。最後は時間と経験の差で負けてしまいましたが、高い棋力を発揮されました。これまで名前を知らなかった選手ですが、とても素晴らしい棋譜でとても実力のある選手なのだなと思いました。

中国には、このような”隠れ高手”いったいどれぐらいいるのでしょう…。

シャンチーの選手層の深さをあらためて感じました。

おわり

コメント

  1. […] […]

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