今回は可児宏暉さんに頂いた“棋聚五洲”第1回世界シャンチーインターネット棋王大会の評注棋譜を紹介します!
○大会の記事
この対局は観戦しており「何だか可児さん勝っちゃいそう…!!」と思いながら見ていました。途中で持ち時間がへったことで徐々に引き分けモードになりましたが、持ち時間が少ない中でも落ち着いて引き分けをとれたことは素晴らしいことだな~と思って見ていました。
これまで持ち時間がお互いに少ない中の対局では、中国系の選手の方の指し慣れた感じに局面を乱され逆転負けも良くあることでした。今回は最後まで可児さん主導な引き分けになった対局で一局の内容も素晴らしいので、みなさん是非お楽しみ下さい!!(*´▽`*)
棋譜紹介
紅方 鄭義霖(東マレーシア)
黒方 可児宏暉
結果 引き分け
今回紹介するのは“棋聚五洲”第1回世界シャンチーインターネット棋王大会の第6ラウンドです。ここまでの私の成績は2勝2敗1和で、翌日の最終ラウンドに勝ち越しの可能性を残すためにも、なんとかしてポイントを取りたいなと思いこの対局に臨みました。 相手の鄭義霖さんは東マレーシアの強豪で、国際大会の経験も豊富です。天天象棋のレートも私より格上だったので、この相手に黒番だと大変だなと思いながら指し始めました。
1. 炮二平六 炮8平5 2. 馬二進三 馬8進7
3. 車一平二 車9進1 4. 馬八進七 車9平4
5. 兵七進一 馬2進3 6. 車二進四 車4進5
7. 炮六平四 卒5進1 8. 仕六進五 車1進1
布局は過宮炮対中炮のオーソドックスなものになりました。私は過宮炮に対し最近はずっと卒7進1とする布局を採用していましたが、勉強不足のせいかなかなか上手く指しこなせず、非常に勝率が悪い状況が続いていました。そうしたこともあって、初手炮二平六とされた時に卒7進1の布局でこの相手に勝てるイメージが全く湧かず、悩んだのですが勢いで中炮を採用してみました。中炮は以前一時期採用していたので全くの未経験ではないですが、かなり久しぶりだったので自信は全然ありませんでした。
9. 相七進五 車1平6 10. 車九平六 車4進3
11. 帥五平六 馬3進5 12. 炮八進四 車6進5(図1)

12回合紅の炮八進四までは布局通りの進行だったのですが、次に私が指した車6進5が布局を外れた手でした。ここでは卒5進1とするのが正解で、これに対し炮四進五、車6進1と炮を捨ててから炮八平五と馬を取るのが正しい布局の進行です。この変化はすっかり忘れていました。なお卒5進1に素直に兵五進一と取ると、車6進5、兵五進一、炮五進二、車二平六、士6進5、炮八平五、馬7進5、車六進一(進二だと馬5進7から馬7進5の攻撃が厳しく黒優勢)、炮5平7、車六平五のような進行で形勢的にはほぼ互角です。実戦ではこうした卒5進1以後の変化が良く分からなかったので、きっと違うだろうなと思いながらも勢いで車6進5と駒を進めてみました。
13. 炮八平五 馬7進5 14. 馬七進六 車6平7
15. 馬六進五 車7進1
復盤しながら検討すると、炮馬交換後の紅の馬七進六は布局を外れた黒を少しとがめ損なっている印象を受けました。
ここでは車二平六、士6進5、車六進二、車6平7、車六平五、車7進1で駒の損得はないものの駒の種類や配置の差で紅が優勢の展開です。なお、馬七進六に対しては黒も車6平7ではなく車6平5とすべきで、以下馬六進五、車5平4、帥六平五、車4退3から駒を取り返した方が本譜より黒の形が良かったと思います。
16. 車二進五 車7退1
16回合紅の車二進五は意外な一手でした。それは15回合が終わった時点で黒は少し劣勢だと思っており、次車二退一とじっと受けられたらどうして良いか分からず困ったなと悩んでいたからです。実際車二進五は少し勝ちを急ぎすぎた手で、黒は車7退1と卒林線の好位置に車を引き十分対抗できる形になりました。
17. 車二平三 車7平5 18. 炮四平二 車5平8
19. 炮二平一 車8平9 20. 車三退三 車9平4
21. 帥六平五 炮2進1
相手の攻撃を防ぎながら兵を取り、21回合炮2進1で相手の馬と車を串刺しにしたところではっきり優勢になったと確信しました。
22. 炮一平二 車4平8 23. 炮二平三 卒9進1
24. 車三平一 車8平1 25. 炮三進七 士6進5
26. 炮三平一 卒5進1 27. 車一平二(図2) 車1進3
28. 仕五退六 炮2平5 29. 車二平五 卒5平4

27回合黒の車1進3は大きなチャンスを逃した手でした。ここではもう一度卒5進1とし、攻撃しながら車を抜かれる筋を消すのが正解でした。対局中は紅の車二進三、士5退6、馬五進三という分かりやすい強烈な攻めを警戒し安全策をとりましたが、27回合での卒5進1に対しこの手順で進むと、車1進3、士五退六、卒5進1、士四進五、炮2進6の詰みがあり黒の勝ちでした。また紅の他の手に対しても正しく指せば黒が優勢の展開でした。ただこの大会は一手3分以内という縛りがあったため、このような危険だけど正しく指せば勝てるという筋は今の自分の実力ではなかなか読み切れず指せなかったです。
30. 仕四進五 車1退3
細かいですが9路の卒にヒモをつける意味でも車1退5のほうが少し良かったです。
31. 炮一退三 車1平7 32. 炮一平七 卒4平3
33. 相三進一 卒3進1 34. 車五平一 車7平6
34回合車7平6の場面では時間がほとんど残っておらず、「次炮七平五とされたら面倒くさいけど、炮5進4で炮七平五、士5退6、炮五退二とかだとややこしくて紛れそうだし・・・」という感じで勝たねばという焦りもあって軽いパニック状態でした。ここでは難しいですが士5退6が正解で、これなら炮七平五には炮5進5と出来ますし、車一退一には車7進1として順調です。
35. 車一進三 士5退6 36. 車一退四 卒3進1
37. 車一平七(図3) 車6平5

卒を一枚取られちょっと差が縮まったものの依然黒優勢です。37回合車6平5は勝負に出た手でしたが、ここではじっと卒3平2と逃げておくべきでした。
38. 炮七退四 炮5進5 39. 仕五退四 象3進1
39回合紅の仕五退四をなぜか読み落としていました。ここでは仕五進四、炮5平9で相を2枚削って勝負と思い込んでいたので(それでも良いかは分かりませんが)、そういう意味で車6平5からの黒の攻撃は失敗でした。
40. 車七進一 卒1進1 41. 相一退三 炮5平8
42. 炮七平五 士4進5 43. 車七平二 炮8平6
44. 車二平八 将5平4 45. 車八平六 将4平5
46. 仕六進五 炮6進1 47. 車六平四 車5進1
こっちが攻撃を失敗して焦っている間に逆転されそうな雰囲気でしたが、なんとか持ちこたえて最後は和になりました。
おわりに
最後に
それほど詳しくない開局でしたが、大きな失着をせず中局でリードを奪えたのは良かったです。この点に関しては今大会、そして日頃の対局を通してみても、自分の開局・中局のレベルはそれなりに進歩してきているのかなと感じています。ただやはり時間の無い中で優勢を勝ちにする力が自分はまだまだ欠けているなと改めて思いました。これは以前からの課題であり私のシャンチーの永遠の課題にもなりそうなところですが、本局のような強豪との残局戦を通して今後一歩一歩成長していければと思います。
この大会で可児さんはNC/NV選手の中で一番高い順位でした!!そのため国外のシャンチー界の方々にとても大きな注目を浴びました(*´▽`*)そのおかげで日本チームのメンバーみんなとてもハッピーでした!(ちなみに…この大会の最後の一戦の緊張感はものすごかったです!観戦ではじめて普通ではないドキドキ感を味わいました…笑)
○その時の記事
可児さん、今回は評注を頂きありがとうございます!
この開局は私が黒でわりと使う開局なので、とても勉強になりました!改めて棋譜をならべると本当に名局だな~と思います!両選手ともレベルが高いです…(素晴らしい!)
マレーシアの鄭さんはこれからも国際大会で当たる可能性の高い選手だと思うので、次回の対局にも期待しています(*´▽`*)わくわく!
おわり
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