可児宏暉選手の紹介
可児選手は私のシャンチー(象棋)仲間の一人です。
そして日本シャンチー界の期待の若手選手です!
今回は可児さんにお願いし、実戦譜の評注を書いて頂きました。
可児さんは日本将棋の経験もある選手で、その棋風は日本人には少ない(ような気がする)「攻撃型」の選手です。そんな可児さんと試合をしてみると何か他の選手とは違います。何だかとても大変なのです。それは可児さんの指す一手一手がとても深く計算された上で出される(攻撃的な)強い手だからだと思います。そのため可児さんとの試合はどれも複雑で応対が難しい手の連続です。対戦相手としてはとても大変な相手ですが、同じ日本チームの選手としてはとても心強い選手です。
可児さんは、若さと才能に満ち溢れた日本の期待を背負った選手です!(私からの期待もものすごいです。可児さん頑張って!)
また、可児さんは今月中国で初の国際試合に挑まれます。そのため私の中ではとてもホットな選手です。可児さんの初の国際試合が良いコンディションで挑めるように、私も陰ながら、一生懸命サポートして行きます。
シャンチーファンのみんなで、可児選手の活躍を応援して行きましょう!!
実戦譜と評注
2019年3月10日 第2回シャンチーネットリーグ
10回戦 持ち時間 30分+5秒
紅 可児 黒 楊 結果 和
1. 炮二平五 馬8進7 2. 馬二進三 車9平8
3. 車一平二 馬2進3 4. 兵七進一 卒7進1
5. 車二進六 馬7進6 6. 馬八進七 車1進1
中砲過河車対屏風馬左馬盤河という人気が高く実戦例の多い開局になりました。
黒の6回合車1進1のところでは、象3進5や象7進5と上がる手も多いですし、いきなり卒7進1と仕掛けていく指し方もあります。そんな中でも本譜の車1進1は最も実戦例が多く、有力とされている指し方です。
7. 炮八進三 卒7進1
7回合での紅の指し手は色々あり、兵五進一や車二平四のような指し方が普通です。
ただその進行は楊さんも熟知していると思い、あえて実戦例の少ない砲八進三を選びました。この手の狙いは次に兵七進一と突いて黒の馬を取ることです。そこで楊さんは卒7進1と仕掛けてきました。
8. 炮五進四 馬3進5 9. 車二平五 炮8平5
10. 炮八平五 士6進5
8回合の砲五進四の局面では黒は一見馬6退8と車が取れますが、そうすると次に砲八平五と回って重砲で一発KOです。したがって馬3進5と取るより仕方ありません。これも砲八進三と上がった意味の一つになります。
11. 車五平四 車8進4 12. 仕四進五 馬6進8
13. 兵五進一 炮2進1 14. 車四進二 炮2退2
15. 車四退二 馬8進7(図)
11回合で紅には本譜の他に兵三進一と取るのも有力です。ただこれだと次に砲5進2から砲交換になり、全体的に局面が穏やかであまり面白味がないように感じ本譜を選びました。紅としては、先に馬を取られて駒損しても鉄門栓の筋を見せながら攻勢をかければ十分戦えるとの判断です。なお13回合の黒の砲2進1は細かなテクニックで、車四平七と卒を取ると車が四路から離れてしまうため攻撃の迫力が落ちてしまいます。これでもすぐにはっきりと悪くなるわけではないですが、本譜は車を四路にとどめる指し方にしました。
16. 兵三進一 炮2進3
図の局面では、兵三進一と車九平八でかなり悩みましたが、結果的には車九平八が正解でした。兵三進一には、本譜の砲2進3でもいいですし、砲2進5でも黒ペースになってしまいます。車九平八には卒7進1と取り込まれるのが気になりましたが、ソフトの解析では車八進三、車8平7、馬七進六で若干紅ペースだそうです。ただ紅は駒損していますし、この局面で紅十分との形勢判断は自分にはできませんでした。
17. 車四退四 馬7退9 18. 車九平八 車8平6
19. 車八進五 車6進3 20. 仕五進四 馬9退7(図)
18回合での黒の車8平6は意外でした。確かに砲の助け方は難しいですが、本譜の順は紅としては駒損を回復できるのでまずまず不満のない展開です。
21. 仕四退五 将5平6
この局面は普通に士を引いて守りましたが、砲五進一とすべきでした。士を取られたあと中兵まで取られるのが気になりましたが、それには車八平四で必至がかかり紅勝です。中兵を取らず黒が正しく応対すればまだまだ難しいですが、紅ペースで攻勢をかけるチャンスでした。
22. 相七進五 炮5進3
この局面は2度目のチャンスで、砲五平二が正解でした。何が狙いか少し分かりづらいですが、中兵を守りつつ側面から攻勢をかけようという手で、直前の黒の将5平6をとがめにいく手になります。本譜も決して悪手ではありませんでしたが、消極的で和になりやすい展開になってしまいました。
23. 馬七進五 馬7進8 24. 炮五進一 車1進1
25. 車八平四 車1平6 26. 炮五平四 将6平5
27. 車四退三 象7進5 28. 車四平二 車6進1
砲馬交換となり、駒割りは黒の卒1枚得です。ただ紅の駒の配置が悪いわけではないので、この程度の差なら大きなミスが出ない限りだいたい和になります。
29. 車二進七 士5退6 30. 車二退五 炮5退2
31. 馬五進六 車6進1 32. 車二進二 車6平4
33. 車二平五
最後に再び砲馬交換をしたところで和になりました。
総評
全体を振り返って、紅黒双方に大きなミスはなく、形勢がどちらかに大きく振れる局面はありませんでした。ただ紅が先に駒損するこの戦型は形勢判断が難しく、高い棋力がないと指しこなすのはなかなか大変だなと感じました。また21・22回合では紅が攻勢をかけリードする順があっただけに、それを発見できなかったのは残念です。この後はもっと地力をつけて、積極的に勝ちに行くシャンチーが指せるよう頑張りたいと思います。
おわりに
可児さん、評注を頂き、ありがとうございます。
とてもレベルの高い試合だなと感じました。
私もこの開局を黒で使うことがありますが、7回合の炮八進三もあまり多くない変化ですし、その後の11回合の車五平四も指されることの少ない変化です。前に私も可児さんとこの開局で練習させて頂いたことがありますが、紅の攻撃を受けるのが大変だったと言う思い出(大変辛い思い出コーナーに残っています。笑)があります。
今回この開局の評注を頂き、自分の試合を見直すこともさせて頂き、とても勉強になりました。この開局は指されることの少ない変化ですが、勉強しなければ実戦で辛い思いをする変化だなと思うので、私ももう少し研究してみます。
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