今回は可児宏暉選手がチームジャパン合宿で発表した研究内容のプレゼンを紹介します!
この時の合宿では一番の研究発表でした!!
はじめに
○はじめに
このブログでは可児さんはもうすでにお馴染みの「強い人」です!(*´▽`*)なんだそれ~と言う感じですが、他に可児さんを表す表現があまりありません…笑。
可児さんがなぜ強いのか、その一つに研究熱心なことが上げられると思います!
今回はその可児さんの研究テーマである「中炮過河車対屏風馬平炮兌車紅急進中兵」の開局の様々な変化のプレゼン内容をまとめたものになります!(現在も研究を進めているので、今後も新しいプレゼンが楽しみです!)
ちなみに可児さんの人物像は「好青年」と言うひと言に尽きるしっかりした方なのですが…、棋譜だけ見ると怖い人です…!(勝ちたさがこもった…難解の一手一手が特徴のとても怖い選手です。笑)
でもそんな可児さんが同じチームメンバーなら頼もしいこと間違いなしです!そして私は基本的にいつもチームメンバーですのでとてもハッピーです(>_<)
○アジア団体戦がはじまります!
来週からインターネット上でアジア団体戦が開催されますが、可児さんも出場されます!
(この開局も一局ぐらいあるのでは・・・?と期待しています!)
日々の研究の成果を存分に発揮して頂ければ!と思います!
頑張れ日本チーム! (*´▽`*)
そして頑張れ可児さん!!
(きっと大会で良い棋譜があれば可児さんは記事をくれますので、それも楽しみにしています!^^)
棋譜紹介
紅方:蒋川
黒方:尚威
結果:紅勝ち
1.炮二平五 馬8進7 2.馬二進三 卒7進1
3.車一平二 車9平8 4.車二進六 馬2進3
5.兵七進一 炮8平9 6.車二平三 炮9退1
中炮過河車対屏風馬平炮兌車という非常にメジャーな布局になりました。 ここで紅の次の一手は、多い順に馬八進七、兵五進一、炮八平六、馬八進九、炮八平七といった具合に色々考えられます。本局はその中でも特に激しい兵五進一(急進中兵)を紅は採用しました。
7.兵五進一 士4進5
急進中兵の兵五進一に対しては本譜の士4進5が最も自然で圧倒的に多い手なのですが、馬3退5という手もなかなか面白く有力です。 紅は何もしないと次は炮9平7とされ、以下炮五進四にも馬5進3が妙手となり駒損になってしまいます。
ここでは炮八進四が最も有力で実戦例の多い指し方で、対して黒は卒3進1、兵七進一と卒を捨ててから炮9平7と回るのがポイントです。 ここで紅の指し方は炮五進四と車三平二の2種類に分かれます。 車三平二の場合は車交換をして比較的穏やかな展開になるので、ここでは炮五進四について触れたいと思います。
炮五進四に対して黒の応手は3通りで、多い順に馬7進5、象7進5、象3進5です。 いずれも有力ですが、個人的に一番有力でやられて嫌なのは象3進5の変化です。 変化の一例を示すと、象3進5、車三平四、馬7進5、車四平五、車1平3、兵七進一、馬5進7、車五平四、馬7進8といった進行です。紅のほうが兵が2枚多くうち1枚は河を渡っており駒得ですが、紅の駒は明らかに左辺が出遅れています。また黒は象3進5と上がった効果で車1平3と右の車も活用することができており、指しやすく楽しみが多い展開のように感じます。ただ形勢的にはほぼ互角で、まだまだ難しいです。
この変化の注意点としては、象3進5、象7進5のどちらも共通で次に車三進一と馬を取ってくる手があるということです。これは炮2平7と車を取れば黒が駒得ですが、中央が悪形で危険なため駒得でも指しにくい展開だと思います。ただソフトの評価ではどちらも100点以上黒が優勢と出ますし、正しく応対すれば駒得なので黒十分だとは思いますが、こういう展開が嫌な人は指さないほうが無難かもしれません。ちなみにこの変化の場合は、象3進5のほうが黒の右車がいなくなった場合に炮八進三の殺があるため、黒としては神経を使いそうです。
8.兵五進一 炮9平7 9.車三平四(図1) 卒7進1
実戦例は少ないですが、卒7進1の代わりに卒5進1と取ると比較的穏やかな展開になります。
一例を示すと、卒5進1、馬三進五、象3進5、炮五進三、車1平4、炮八平四、車8進7,馬八進七、炮2進4、車九平八、車4進6と進み、ここで紅は困ったように見えますが、以下馬五進六、車4退2、炮五退三、車8退2、車八進三と進むのが好手順で定跡のようになっています。形勢的にはほぼ互角です。(2018年甲級リーグ 黄竹風 和 謝靖 )
10.馬三進五 卒7進1
馬三進五は駒の出を重視した攻撃的な手ですが、普通に兵三進一と取る手もあります。こちらのほうが穏やかな展開になります。 また卒7進1のところでは、卒7平6とするややトリッキーな手もあります。 次に放っておくと馬7進8、車四平三、馬8退9、車三退一、象3進5、車三進二、馬3退4と車を殺す筋がある(車が三路を避けると炮7進8からの攻めが厳しい)ので、車四退二と取るのが普通です。 以下卒5進1、炮五進三、馬3進5、車四進四、炮2退1、車四退二、象3進5、炮八平三のように進むのが定跡手順で、若干紅ペースだと思います。(2009年甲級リーグ 申鵬 勝 李雪松)
11.馬五進六(図2) 車8進8
車8進8の場面では、馬3退4と引く手も有力です。黒は馬が引く事で駒損はしませんが、中央が薄くなるため非常に危険です。ただ馬が引いたことで右の炮を左辺に持ってくる余地などが生まれ、攻撃はその分強力になります。そのため急進中兵の中でも特に激しい戦いになります。 変化の一例を示すと、馬3退4、兵五進一、馬7進8、車四退四、炮7進8、士四進五、馬8進9、兵五平六、馬4進5、馬6進4、炮7退2という展開です。 形勢的にはほぼ互角ですが、両者攻め合いの非常に難しく激しい戦いです。 ちなみにこの変化の難しさは、あの王天一でさえ一手のミスであっという間に負けてしまったほどです。(2016年全国冠軍南北対抗賽 許銀川 勝 王天一)
12.馬八進七 象3進5
紅は馬八進七が最も自然で多いですが、炮五退一や馬六進七もあります。 また黒は馬7進8として、以下車四平三、馬8進6から紅の左車を取りに来る手がありますが、この時点でのこの変化は、正規の変化(象3進5、馬六進七、車1平3、馬7退5が入った形)に比べ黒は損です。黒が車を取ったあと、馬六進七、卒5進1、前馬進五と士を削る手があり、紅優勢になります。(1986年全国象棋団体賽 趙国栄 勝 蔡福如)
13.馬六進七 車1平3 14.前馬退五(図3) 卒3進1
14回合黒は卒3進1が最も多い手ですが、ここでは他にも多い順に馬7進8、車3平4、卒7平8といった手があります。 馬7進8の場合は、車四平三、馬8進6、車三進二、馬6進4、士四進五、馬4進3、帥五平四、馬3進1、車三退五が定跡手順で互角の比較的穏やかな展開です。 車3平4の場合は、士四進五、車8進1に炮五平四がオススメの一手で、難しいですが紅が少しリードしていると思います。この変化は以前私が上海棋院で指した棋譜がシャンチーメイツにも掲載されています。
卒7平8は個人的に最も嫌な変化で、士四進五、炮7進8、炮八退一、車8進1、車九進二、馬7進8、車四退五が定跡手順です。ここで次に炮2進4とされた場合、紅が劣勢にならないように指すには車四平二と車交換を求めるしかありませんが、交換した場合黒が劣勢になってしまうため、車8平9と避けます。そこで車二平一と再度交換を求め、車9平8、車一平二、車8平9と繰り返し手順になり、ここで和になってしまう順があります。 自分が紅方の時に相手が強豪であれば和でも良いのかもしれませんが、勝ちたいときにこの順に逃げられてしまう可能性があるというのは個人的には少し不満があります。(2005年 全国象棋個人戦 洪智 和 許銀川)
15.炮五退一 卒3進1
卒3進1に対して実戦例は主に3通りで、本譜の炮五退一が最も有力ですが、他にも素直に兵七進一と取る手、馬七退五とする手があります。 兵七進一の場合は、以下馬7進5、兵五進一、炮7進8、士四進五、車3進4と進み、駒損ながら黒ペースです。 馬七退五は狙われている相にヒモをつけながら、次に炮八平六から車九平八と左車の活用を見せた指し方で、これはほぼ互角の展開になります。
16.相七進五 卒3進1 17.炮八退一 車8退2
定跡通りの進行です。黒は馬が1枚少ないものの、駒の配置の差と河を渡った2枚の卒で十分対抗できるという判断です。ただこの時点でソフトは既に紅ペースだと評価しています。
18.馬七進五 馬7進8 19.車四平三 炮2退1
20.車三退二 卒7平6
20回合、紅は車九平七など他の手でも十分な展開ですが、車三退二は馬8進6の筋を消してより激しく戦おうという意図があったようです。
21.后馬進六 卒6進1
卒6進1は計算を間違えた悪手でした。以後炮八平七から紅の左車の活用を許してしまい、黒としては大変です。卒3進1としておけば、まだまだ戦える形でした。
22.炮八平七 車3平2 23.車九平八 卒3平2
24.車八平七 炮2平3 25.馬五進七 卒6進1
26.炮七平四 炮3進8 27.相五退七(図4) 車8平7
25回合、黒は卒6進1から勝負に出ますが、炮七平四と卒を取るのが冷静な判断です。もし炮五平六と避けた場合には、車8平4から攻勢をかけられ紅もかなり大変になります。 27回合黒は車と炮の両取りがかかっていますが、車が逃げて車三進四と炮を取られたのでは、駒損に加え紅の攻勢が非常に強いため勝負になりません。そこで車8平7から紅の車を盤上から消す本譜が正しい粘り方になります。
28.車三進四 車7退5 29.馬七進八 車7進4
ここまでで紅が駒得をしており優勢ですが、車がないため攻撃には技術が必要です。実戦ではこのあと特級大帥の流れるような見事な攻撃が光ります。
30.馬八退九 車7平4 31.炮四進七 象5進3
31回合紅の炮四進七が①象の連携を断つ②将が2段目に上がるのを防ぐ③士が動けば左辺に移動して馬後炮などの攻撃を狙うという一石三鳥の好手です。
32.馬九進七 将5平4 33.馬七退八 士5進6
33回合紅の馬七退八は、放っておくと次に馬六進七、将4平5、兵五平六、士5進4、炮四平八で必至(受けがない形)です。
34.馬六進七 将4進1 35.兵五平六(図5) 象3退5
35回合兵五平六は、車4進4の殺を防ぎながら、次に炮五進七の殺を見せています。
36.馬七進八 将4退1 37.炮四平九 馬8進6
37回合黒の馬8進6は一見すると勝負を投げた形作りの手に見えるかもしれませんが、紅が炮九進一、象5退3、馬八退七、将4進1、馬七退五とジャンで車を抜く筋を防いでいます。
38.前馬退七 将4進1 39.馬八進七(紅勝)
以下将4進1と将4退1の2択ですが、将4進1の場合は後馬退九、車4退1に馬七進五から馬九進八で詰み。将4退1には前馬退五、将4進1、馬五進四、将4進1、炮九退一で即詰みです。
相手に全く粘る余地を与えない見事な寄せの手順でした。
○おわりに
今回の対局も素晴らしいですが、解説の細かさも素晴らしいです!!
私は可児さんのプレゼンからこの開局にとても詳しくなりました!!わーい
可児さん、来週からのアジア団体戦も頑張って下さい!( *´艸`)
おわり
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