シャンチー(象棋)中国個人選手権・決勝戦の棋譜紹介【汪洋選手対王天一選手】

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今回はシャンチー(象棋)中国個人選手権の決勝戦の棋譜を紹介します!

はじめに

これまでシリーズ化して書いて来た中国個人選手権の記事ですが…

今回紹介する棋譜は中国個人選手権、決勝戦の棋譜です!

つまり…

最後の一局です!

(ようやくシリーズが完結しました…笑)

2019年の決勝対決は2018年の中国個人戦の優勝者である汪洋選手と中国国内レイティング1位の王天一選手です!決勝戦にふさわしい最強対決と呼べる戦いです!

それでは、どのような一局だったのか…

見て行きたいと思います(*´▽`*)

棋譜紹介

決勝戦:

「最強同士の対決」

紅方:汪洋

黒方:王天一

結果:黒勝ち

1. 兵七進一 炮2平3 2. 炮二平五 象3進5   

3. 仕六進五 馬8進7 4. 馬二進三 車9平8

開局は人気のある仙人指路対卒底炮です。紅の士六進五は柔軟性を持った指し方です。黒の対応を見て局面を展開します。

5. 兵三進一 炮8進4 6. 炮八平六 士4進5

7. 馬八進七 炮3進3 8. 車九平八 馬2進3

第7回合の黒の炮3進3は正着です。

その後、黒が馬2進3と正馬にする手は攻撃にも防衛にも使える指し方です。

第7回合で黒が馬2進1と指すと、紅は車九平八と指し、今後黒の1路の馬は攻撃目標になりやすくなります。

9. 馬七進六 炮3平7 10. 馬六進八 車1平2

ここまで、双方定跡通りに進んでいます。紅の馬の動きが自由で、黒は卒が2つ多いです。どちらにもチャンスのある局面です。

11. 車八進二 車2進3 12. 馬八進六 車2進4  

第11回合では黒は車2進3と指さない場合、紅は馬八進七と指し、優勢です。

13. 馬六進七 将5平4 14. 炮五平八 炮8退5(図1)

15. 馬七進九 炮7進1 16. 相三進五 炮7平1

(図1)

第15回合の紅の馬七進九は軟手です。その後、黒が炮7進1と紅の馬を圧制すると、紅の2つの馬の動きが制限され、車も出遅れているため、黒が反先になりました。

第15回合では紅は馬七退五と指す手もありそうです。次に象7進5馬三進四将4平5馬四進六炮7平3馬六進五炮8平6車一進二と進むと、紅はコマ損ですが攻勢があります。まだどちらも戦える局面です。

ですが実際のところ、この局面を事前に詳しく研究していないと、王天一選手に対していきなりコマをすてる手を指す選手はほとんどいないと思います。そう言った意味で、紅の馬七進九は合理的な選択です。

17. 炮八平九 卒7進1 18. 馬三進四 将4平5  

19. 車一平二 炮8平9 20. 車二進九 馬7退8

第19回合までの局面で、紅はすでに兵が3枚少ないです。そのため、ここで紅が車一平二と指し、その後車が交換されてしまい局面が簡単化されるのは少し不利なようです。 第19回合で紅は馬四進六と指し、馬3退2車一進二と進むと、より積極的だったようです。

21. 炮六平七 馬3退2 22. 馬四進五 卒3進1

23. 馬九退八 炮1平9 24. 馬八退六 馬2進4

25. 馬五退六 馬8進7 26. 炮七退一 馬4進5

この一段の中局で黒はずっと卒が3枚多い優勢を維持しています。

第26回合で黒の馬4進5の馬交換により、局面はさらに簡単化しました。ここまでで、紅のコマの位置が良い優勢はほとんどなくなりました。そして、黒の卒の多い優勢が少しずつ大きくなりました。

27. 後馬進五 馬7進5(図2) 28. 炮七平九 炮9進3

(図2)

第27回合で紅が馬を交換せずに後馬進八と指すと、馬7進6馬六進七後炮平3炮七進七馬6進5と進み、黒は卒が4枚多く、大優勢です。

第28回合で紅は炮七平九と指し、兵の数の劣勢を挽回したい気持ちが強いためか、相が攻撃されることを許しました。ここで紅が士五進四と指すと、前炮進3士四進五後炮平8士五進六と進み、黒は優勢ですが、紅は実戦よりもう少し粘れたかもしれません。

29. 相五退三 炮9平7 30. 相七進五 馬5進4   

31. 炮九進五 馬4進5 32. 仕五進六 炮7進8

第31回合で紅の相が必ずなくなる局面になりました。そのため、ここで紅は炮九進五と指し、出来るだけ黒の卒を減らすように指しました。これは引き分けのために頑張った指し方です。

33. 帥五進一 馬5進7 34. 帥五平六 炮9退1

35. 仕四進五 炮7平3 36. 後炮平七 卒3進1

第35回合の黒の炮7平3は紅の馬や炮の動きを制限し、自分の右側が一方的に攻められないようにするための指し方です。優勢の中でも防衛を忘れない点もトッププロの大局観です。

37. 帥六退一 炮9退3 38. 兵五進一 炮9進1

39. 炮七退一 炮9平4 40. 炮七平六 炮4進2    

黒はさらに1つの炮を交換しました。局面がさらに簡単化した後、黒の卒と象の多い優勢はとても大きく、すでに勝勢と言えます。

41. 帥六進一 炮3退3 42. 仕五進四 卒3平4

43. 馬六進七 将5平4 44. 兵五進一 卒4進1

45. 兵五平六 馬7退8 46. 仕六退五 馬8退6

47. 馬七退八 卒9進1 48. 炮九退二 馬6進5

紅は不利な状況下でとても頑張りました。第48回合の紅の炮九退二は次に炮九平六と指し、最後の対攻を狙った手ですが、黒はそのチャンスを与えませんでした。

49. 炮九平七 炮3平1 50. 兵六進一 炮1退2(図3)

(図3)

第50回合まで、黒の右側の馬炮卒と紅の馬炮兵がお互いに重要な位置にあるため、動きは窮屈ですが、黒はまだ2枚の卒が動けます。紅には対攻するチャンスがない限り、これ以上の抵抗は無意味です。ここまでで、紅が投了しました。


〇おわりに

この試合では、急攻撃や激しい殺法はありませんでしたが、これこそ最高レベルの試合です。開局は紅がコマの位置の有利を持ち、黒は卒が多いという有利を持ち、それぞれ戦える展開になりました。その後、中局以降で黒が反先した後、良いタイミングで多くのコマを交換して行き、黒は卒の多い優勢が大きくなりました。紅は局面の挽回をすべく、卒をとり返すことを考えますが、そのタイミングで相が攻撃され、なくなりました。その後も紅はとても粘り強く指しましたが、黒は残局を精確に指し、完璧な勝利に手に入れました。

この勝利により、王天一選手は3度目の中国個人選手権の優勝を果たしました!

おめでとうございます! (*´▽`*)

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