シャンチー(象棋)全日本選手権の棋譜紹介【酒井清隆選手対TRAN BAO GIANG選手】

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(写真:酒井さん(左)とGiangさん)

今回は酒井清隆さんに頂いたシャンチー(象棋)全日本選手権の棋譜を紹介します!

対戦相手は今年の全日本選手権で優勝されたGiangさんです!

棋譜には酒井さんの解説が入っていますので、皆さま是非お楽しみ下さい^^


○日本選手権の記事

棋譜紹介

全日本選手権4R、チャンさんとのゲームの自戦記になります。

紅方:酒井清隆

黒方: TRAN BAO GIANG

結果:黒勝ち

  1. 炮二平五 馬8進7 2. 馬二進三 車9平8 3. 車一平二 炮8進4
  4. 兵三進一 炮2平5 5. 兵七進一 馬2進3 6. 馬八進七 車1平2
  7. 車九平八 車2進4 8. 炮八平九 車2平8 9. 車八進六 炮8平7
 10. 車八平七 前車進5 11. 馬三退二 車8進9 12. 車七進一 車8平7
 13. 車七進二  (図1)

(図1)

戦形は左炮封車後列手炮となり、ここまでは定跡通りの進行です。

さて、ここで唐突に定跡講座です。

図1の局面ですが、

a. 13…炮7進1 には、14. 馬七進六 炮7平1 15. 相七進九 と炮交換します。
 15…車7退4 だと 16. 馬六進四で紅優勢のため 15…卒7進1 としますが、 16. 炮五平六 と攻めて紅有利です。

b. 13…炮7進1 14.馬七進六 卒7進1 と炮交換前に卒7進1 を入れる手はあります。
 以下、
 ・15.兵三進一 炮7平1 16.相七進九 車7退5 17.車七退四
 ・15.炮九平三 車7退2 16.馬六進五 馬7進5 17.炮五進四 炮5進4
 の変化が考えられますが、どちらの変化も互角のようです。

c. 13…炮7平8 には、14.炮九進四 炮8進3 15.炮九進三 と攻め合います。 以下、15.. 車7退4 16.仕四進五 車7進4 17.仕五退四 卒7進1  
 の同型の進行は、この激しい局面で手番を握っている紅が有利です。

d.13…炮7平8 14.炮九進四 炮8進1 と、炮九進四 を見てから炮を突っ込む手も有力です。
 これに対して 15. 馬七進六 炮5進4 16. 仕六進五 車7退4 は紅の負けです。
 正着は 15.兵七進一 炮8平3 16.兵七平六 の先棄後取で、この攻め合いは紅有利です。

e. 13…車7平8 に対しては 14. 炮五平三 車8退3 15. 兵一進一 と受けておいて、
 次に兵七進一を狙っていけば紅が指しやすい局面です。

これらの変化を見て分かるかと思いますが、黒は 卒7進1 の1手が入っていないために
馬が出遅れているのが問題であることが分かると思います。

13…卒7進1 14. 兵三進一 炮7平8 15. 炮五平二 車7退5
16. 車七退四 車7進2 17. 炮九進四 車7進1 (図2)

(図2)

そこで黒は 13…卒7進1 とこのタイミングで卒を突いてきました。

この手に対して 14. 車七退四 が第一感でしたが、じっと 14…卒7進1 と取り込まれると次に何を指していいか分からず、断念しました。
しかし、炮九進四 ~ 炮九進三 が速く、この変化で紅が優勢だったようです。

本譜の 14. 兵三進一 だと 14…炮7進1 15. 馬七進六 で先の b の変化に戻り、
紅の優位はなさそうに感じましたが、他に手が思い浮かばなかったのでは仕方がありません。

しかし、14…炮7平8 が想定しないなかった変化でした。
ここも第一感は 15. 炮九進四 で、15… 炮8進3 16. 炮九進三 の攻め合いなら紅有利だと思いますが、
15…炮8進1 に対する応手が分からず断念しました。ただ、後で解析したところ、15. 炮九進四 炮8進1 16. 兵三進一 炮8平3 17. 車七平八で紅有利のようです。

15. 炮五平二 はいい手ではありませんが、相手の攻めを遅らせて 炮九進四 を間に合わせようという手です。
15…車7退5に対して、16. 車七退四 の車のぶつけはこの戦型でよく生じる手筋です。
車交換なら兵の多い紅が優勢ですし、本譜のように逃げれば、後の 炮九進四 ~ 炮九進三 が先手になります。

こうして 17. 炮九進四 が何とか間に合いました。
17…車7進1で一見ピンチのようですが、炮を捨てて攻め合いに活路を見出します。

18. 炮九進三 士4進5 19. 車七進四 士5退4 20. 馬七進六 車7平8
21. 馬六進七 炮5進4 22. 車七退一 士4進5 23. 馬七進八(図3)

(図3)

炮を捨てている間に、一気に殺到します。
図3の局面では既に黒は受けが難しい局面となっています。
例えば 23… 仕5進4 だと、24. 車七進一 将5進1 25. 炮九退一 将5進1 26. 車七退一 で、
次に 炮九退一 からの殺を狙うといったイメージです。

なお、23. 馬七進八 では、 23. 馬七進九 の方がより黒の受けが難しかったようです。

23…車8平5 24. 仕四進五 車5平2 25. 帥五平四 車2退6 

26. 車七平八 士5進4  27. 車八進一 將5進1 

28. 車八退二 象7進5(図4)

(図4)

黒は車を捨ててきましたが、こう指すよりないのであれば紅優勢がはっきりしました。
この後、実戦では 28. 車八退二 と士を削りに行きましたが、これでは遅く、あまりよくありませんでした。
28. 兵七進一 と攻めを急いだ方がよかったようです。

29. 車八平六 馬7進6 30. 車六退五 炮8退4  31. 車六平二 炮8平6
32. 仕五進四 炮5退2 33. 車二進六 將5退1 (図5)

(図5)

士を削ったので、一旦は受けにまわります。図5の局面では 34. 帥四平五 と指していれば紅優勢を維持できましたが・・・

34. 車二平八 馬6進5 (黒勝)

34. 車二平八 が大チョンボ。34…馬6進5 で殺でした。

一局を振り返ってみると、定跡を外れたあたりで危ない局面はあったものの、
粘り強く指して何とか優勢の局面を作ることができました。
しかし、残局の入り口あたりでの指し方が甘く、最後の逆転を許す原因となっています。
このあたりに今後の課題があることが明確になったゲームだったと思います。


○Jiangさんからも大会を通じての感想を頂きました!

日本全国大会初日では、私は開局が苦手なので、江湖局スタイルで対局しました。 たとえば、最手で「兵1進1」や「馬2進1」という開局を使用しました。酒井さんにあたるまでは本当に大変でした。

酒井さんとの対局では中局で20回合で「炮」を取ったあと紅方が凄く強くなりました。それにより私は車を捨てないといけなくなりました。 18回合で は、黒はかわりに「炮5進4」と指す方が良かったと思います。中局で酒井さんは本当に深く考えていました。しかし、時間切れのギリギリのところで、酒井さんは沢山の間違いがありました。自分の感覚ではラッキーだったと思います。

今後、私も開局を研究します。


○おわりに

酒井さん、ありがとうございます!

Jiangさんと話していた中で、酒井さんの中局の計算はとても深くて、とても中局が強い…と言うお話になりました。本当にその通りです…|д゚)酒井さんの対局は思考や計算どちらもとても勉強になるな~と思います!酒井さんにもう一局日本選手権の解説を頂いていますので、そちらもお楽しみに!!(私が一番楽しんでいる^^♪)

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