所司和晴選手のお話し【その2】

インタビュー・対談

所司和晴選手にお話しをお伺いしました!

以前ブログの記事で所司選手がシャンチー(象棋)をはじめるきっかけになるまでのお話しをお伺いしました。 今回はその続きです。

今回の内容は「シャンチーの勉強を始めた当時の、勉強の様子について」のお話しになります。

○前回のお話しはこちら

所司先生のシャンチーとの出会い

2つの勉強場所

所司選手は中国シャンチーの専門棋士の趙国栄さんと将棋を通じて知り合いました。

そして、そこからシャンチーと将棋の相互研究が始まったそうです。趙さんとの勉強は「将棋」と「シャンチー」を同時に二面指しし、対局後は検討をするかたちで定期的に勉強会をしていたそうです。趙さんは中国シャンチー界で最も高い「特級大師」の称号を持つトッププレーヤーの一人です。そんな趙さんとの勉強会は大変有意義なものだったそうです。

また同時にそのころ日本のシャンチーの大会では沈浩さんと言う留学生が活躍していました。その沈浩さんを中心に、日本選手との試合の棋譜の研究や中国の専門棋士の名局鑑賞等を行う集まりを開催していたそうです。沈浩さんは当時の全日本選手権でも数年間にわたり全勝優勝していた強豪選手です。この研究会もまた所司選手のシャンチーの勉強に大きな影響を与えるものだったそうです。

所司選手はこの2つの勉強の機会を通じてシャンチーの勉強をしたそうです。

所司選手のモチベーションと棋譜

所司選手にお話しを伺っている際に気が付いたことがあります。

それは所司選手にとって、自分の棋譜が紹介されることがシャンチーに取り組むモチベーションに繋がっているということです。以前に中国シャンチーの専門棋士である許銀川さんとの対局の棋譜が取り上げられたことがあるそうで、その時もとても嬉しかったそうです。

確かに私がシャンチーをはじめて以降、所司選手と試合にご一緒させて頂くことが多くあり、所司選手の試合への取り組み方をそばで見てきました。その中で感じたことは、棋譜の質にとてもこだわりがあるのだな、と言うことです。

所司選手は開局の段階で知らない局面になれば立ち止まって時間をかけて考えます。例えば相手が入門したばかりの人であっても、後半で挽回出来るだろうと前半で手を抜くと言ったような対局はしない方です。また、対局中に持ち時間がどれほど少なくなっても、出来るだけ時間を使い、一手一手しっかりと考えて丁寧に指される方です。

ご本人がよく「快速戦は得意ではない」とお話しされるのですが、おそらくそれは試合内容へのこだわりがあることが理由にあるのだろうなと感じます。

さすが、将棋のプロ棋士だなと感じます。

現在も色々な場面で所司選手の棋譜は多く紹介されていますが、今後も所司選手の棋譜がより多くの場面で紹介されることを応援しています。

写真左は2018年ダブルスマッチで中国陳麗淳選手とペアを組んで試合に出ている様子(この試合は所司選手と陳麗淳選手のペアが優勝しました。)右の写真は2018年に中国代表団が来日されたときの様子です。日本選手相手に多面差しをされているのは蒋全勝選手です。

中残局での躓き

所司選手がシャンチーの勉強をはじめたばかりのころ中残局で何度も悔しい思いをしたそうです。所司選手は日本将棋でも定跡の研究が好きとのことで、シャンチーでも開局の研究はしっかりされたそうです。

実際に試合をすると開局では良い局面になり優勢になるのですが、中国系の選手で小さいころからシャンチーに触れている方々は終盤力があり、中残局で逆転負けしてしまうことが多かったそうです。その都度、何度も悔しい思いをしたそうです。

そんな所司選手の中残局の勉強方法を伺ったところ、基本的には実戦の局面を丁寧に復盤し、分析することを中心に行っているとのことです。中局などに関しては本などを読んで勉強したことはないそうです。

実戦で自分が指した手を一手ずつ丁寧に分析して行くことはとても重要な勉強のようです。

また、所司選手はシャンチーの勉強をはじめて2、3年のころから勉強にコンピューターのソフトを取り入れはじめたそうです。  

数年前に所司選手と中国アモイでの試合に参加した帰りの空港で、所司選手がパソコンのソフトで試合の分析をしていた姿を見て、通りがかった中国の方が、「何だか彼はすごいね」と横にいた私に声をかけて行かれたことがあります。その姿を横でいていた時に私の中で「所司先生=パソコンを持って分析する人」と言うイメージが強く残りました。当時は私もソフトをあまり多く使用していなかったので、とても「現代的な人だな!」と感じていましたが、もっともっと前からソフトを取り入れた勉強をしていたのですね。

シャンチーの普及していない日本では強い方に指導して頂ける機会が少なく、現在はコンピューターソフトを取り入れた勉強が一般化しています。そう言った意味で私の見たパソコンで棋譜を勉強する所司選手の姿は、現在の日本人選手の姿とだいたい同じなのだろうなと思います。

(ソフトを使った勉強については、今まで中国のプロ選手に何度かお話しをお伺いしたことがあるので、今後記事に出来たらいいなと思っています)

所司選手の考えるシャンチーの面白さ

所司選手の思うシャンチーの面白さをお伺いしました。

「シャンチーは一局の手数が80手前後と短く、コマの動きが速いので、一局を手軽に指すことが出来ます。そのため、昼休みに一局!などで遊ぶことが出来る楽しさがあります。 また、日本将棋を知っている人は早く強くなりやすいです。」とのことです。

(でも上級者に対してはもっと別の深いコメントもありますよ!と仰っていたので、いずれ深いお話もお聞きしたいなと思っています!)

興味がある方は是非、シャンチーをはじめてみて下さい!

おわりに

所司選手がシャンチーを始めるきっかけとなった趙国栄先生との出会いは、シャンチー界の中ではとても有名なお話です。現在も中国の専門棋士の方の中では所司先生=趙国栄先生のお弟子さんと言うイメージを持たれている方も多いように思います。

そして趙先生もまた、所司先生との関係の深さから、日本選手と会う機会があれば、丁寧に接して下さっています。5月に行われていた「2019周荘杯国際団体招待戦」でも、会場にいらした趙さんは、日本選手と一緒に復盤をして下さったとのことです。これには日本チームの選手も大変感謝していました。

(周荘杯での所司選手と趙国栄先生との記念写真)

今回は所司選手のお話しをお届けしました。

今後も所司選手のご活躍を応援しています! (*´▽`*)

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