今回は私のシャンチー(象棋)仲間である、田中篤選手にインタビューをさせて頂きました!
田中選手は私がシャンチーをはじめる前から選手として活躍していましたが、お住まいが青森県と言うこともあり、普段試合の時以外にゆっくり会ってお話しする機会がありませんでした。そのため、田中選手とシャンチー経歴は全て「謎」でした。
そこで、このブログで「田中選手を知ろう!」と言う企画を計画しました(笑)。そんな質問攻めの企画でしたが田中選手からは快くOKを頂き、今回の記事になりました!(ありがとうございます!)
そして、出来るだけ田中選手の人柄(雰囲気)を知ってもらえるように文章もそのまま田中選手の書いたように残しています。(田中選手と話している時の雰囲気そのままです!)
それではみなさんインタビューをお楽しみください!(^^♪
はじめに
【田中選手のシャンチー経歴】
1994年 日本シャンチー協会入会
2001年 世界選手権初出場
(公開対局で、フィンランド代表Jouni Ramo選手に敗れる)
2003年 世界選手権NC/NV部門初入賞(5位)
2007年 同8位
2009年 同6位(前半3敗1和から後半猛追、4勝4敗1和。キャリアハイ)
2010年 日本リーグで所司和晴選手を破る
アジア選手権初勝利(NC/NVだけで構成されたチームとしても初勝利する)
2011年 世界選手権NC/NV部門7位
2015年 同6位
2018年 全日本選手権6位
2019年 上海友好城市招待戦 NC/NV部門7位
(最終戦の相手がJouni Ramo選手。18年前のリベンジを果たす)
以上
私がシャンチーをはじめるだいぶ前からの経歴です(*‘∀‘)このブログを始めて以降、私の知らない昔のシャンチー協会の活動や選手の人のお話を聞くことの出来る機会が増えました。内容もとても興味深いものが多く、記事として残してくことに意味を感じています。
ではこれ以降は田中選手のインタビューになります!皆さま、お楽しみください!
シャンチーとの出会いと現在
Q、シャンチーの勉強を始めたきっかけと時期を教えて下さい。
A、大学在学中だった1994年、中国に留学していた同級生がおみやげに駒を買ってきたのがきっかけです。ルールは内山書店で自分で入門書買って覚えました。 以後、「馬鹿な出会いが利口に化けて、よせばいいのに一目惚れ」で今に至ります。ここまで続いて、代表になって、国際大師と和にできたりするなんて、嘘みたい。
Q、シャンチーの勉強を始めた当時の様子や、どのように勉強をしていたのか教えて下さい。
A、ネットも強いソフトもなかった頃なので、都心へ出た際内山書店に寄って買い込んだ本をひたすら並べる、しかありませんでした。将棋の勉強と同じようなことをすればいいかな、と、一番並べてたのが「象棋名局賞析辞典」。
ソフトは「象棋巫師」で時々解析かけてみるくらい。便利なものなので大いに活用すべきとは思いますが、実際やっているのは人なのだ、ということも忘れないようにしています。
Q、現在の日々のシャンチーへの取り組み方について教えて下さい。
(勉強方法や青森と言う遠方での勉強の苦労話やおすすめの本等を伺いました)
A、相手がいません(苦笑)。必要だなと思ったので、ネット対局の時間が増えてます。
あと、残局の細かいところで勝ちにする、和に持ち込む、そういう力をつけるには江湖残局(四大名局、といわれる基本問題があって、そこから駒を一枚増やす、減らす、位置をずらす、これで解ががらりと変わり、無数のバリエーションが派生する)なのかな、と最近思ったりして。
遠方に住んでいるのは大変は大変だけど、おかげで国際試合の移動に耐性がつきました。国際試合未経験の選手向けに、「弘前で私と公式戦をして、弘前城でも見て帰ってもらう」なんてのもやってほしいものです。
心に残った国際試合
Q、一番思い出に残っている国際試合はどの大会ですか、その理由も教えて下さい。
A、NC/NVだけのチームで初めて勝利を挙げた(対オーストラリア)、2010年アジア選手権。最後私が勝って2-1で日本の勝利となったのですが、「お待たせ!勝ちました!」と部屋に入ったら、結果を待っていた所司先生(おそらく35回合過ぎたあたりで私が負けるのを見るのは偲びないと、途中で部屋に引き上げたらしい)
「ええ!?あれを勝つんですか!?」
…あんなに驚いたの見たことない。
以降「所司先生を驚かす」がモチベーションの一つになってます(笑)。
○その時のお話しを所司先生にも伺いました。
Q、2010年のアジア選手権の対オーストラリア戦で田中さんが勝った時のことを覚えていますか?
A、はい、このときは田中さんが勝たれた報告に本当にびっくりしました。
形勢としては引き分けもまず無理だろうと思っていました。
相手はオーストラリアの新しいチャンピオンと聞いていましたので強豪です。 当時急に多くの国際大会に出場されるようになった方です。 35回合よりもう少し先まで見ていたように思いますが、田中さんが苦しい戦いを、よくあきらめずにがんばったと思います。 終わった後すぐに棋譜を見せていただきましたが、嫌みをつきながらの戦い方は本当に迫力がありました。
この一局に団体戦での折れない戦いの大切さをすごく感じました。 私はこんな戦いでの勝利は勝ち取っていませんが、いつか私もこんな勝ち方してみたいです。
とのことです。(よっぽど驚かれたのですね…。笑)
(2010年のアジア選手権は、所司先生、田中選手、曽根選手が出場されました)
○その時の棋譜はこちらで見ることが出来ます。
ライバルチームについて
Q、日本のライバルと言われるドイツ選手のここ数年間のレベルの上がり方等に対してどのように感じていますか?またその他のN/C・N/V選手の近年の様子をどのように見ていますか?
A、ドイツの国民性として「頑固」 …いやいや、自分の信念をなかなか曲げないところがあるように思いますが、論理的思考そのものが文化みたいな国ですし、若いうちは柔軟なので、呉松月選手みたいのがまとまって出てきたらそれは怖い。けど、今のところ一人なので、やっぱり大変なのかな、と思います。
NC/NV全体で言うと、タイのクリシュナ選手、ベラルーシのコルチツキ選手のように、初めてなのにめちゃくちゃ強い、というのが出てくる可能性が常にあって、そこも気をつけないといけない。
ロシアやフィンランドの選手に足元すくわれないようにもして、インドネシアのイワン選手、所司先生と直接対決となったら全力で勝負。こういう戦い方になるかな、と思います。
最後に、これから世界選手権を目指す人に。
決して侮ってはいけません。
「こんなの楽勝」となめてかかってひどい目にあった人を、私は何人も見ています。
シャンチーの魅力
Q、田中選手は将棋も指される方だと聞いています。将棋と共通するシャンチーの魅力、また将棋とは異なるシャンチーの魅力について、田中選手の考えをお聞かせください。
A、同じ目的でプレイするのに、人によってアプローチの仕方が違う点。大げさだけど、自らのと違う価値観に直面することによって常に自らが試されます。これは共通しています。
で、シャンチーは将棋より、自陣の固さの上限が低い(取った駒を打って補強することができない)ので、危険なところでの勝負をしなければならない。将棋のプロ棋士とか、プロとも互角に戦うアマチュアのトップレベルになると話は別だと思いますが、アマ初段の将棋に必要なものは、シャンチーの中にも一通りありますし、私(アマ二段)レベルだと、将棋で終盤ギリギリの勝負になった時、シャンチーの経験(将棋よりも危険なところでの勝負)がものをいうことが多々あります。
Q、田中選手にとってシャンチーとは何ですか、田中選手の思うシャンチーの魅力を教えて下さい。
A、シャンチーとは私自身(おい)。
国際試合で私が指したゲームは、いいところも悪いところも全部、私という人間の全てが入ってると思います。普段隠してる部分も全部出せる。印象に残るゲームだと、私自身のような駒までいる。
国際試合で他国の選手と指す時も、この5年くらいは、日本人とか中国人とか関係なく、人と人、普段の仕事とか肩書とか関係ない(こういうのをオフにできる時間は大切だと思いますよ)、本当にただの人と人の勝負なのだ、と思えるようになってきました。
Q、「私自身のような駒までいる」とのことですが、シャンチーのコマの中で田中選手自身に似ているなと思うコマはどのコマになりますか?
A、何考えてるかわかんなくて最初は扱いに困るところがあるけれど、 これほど面白い奴もなかなかいない、という点で「炮」だと思います。
おわりに
Q、田中選手にとっての今後のシャンチーの目標を教えて下さい。
A、今年の世界選手権でNC/NV部門3位以内に入れば棋聯大師なので、最初で最後のチャンスのつもりで挑みます。あと、もう一人くらい、国際試合を戦えるプレイヤーを育ててみたいのと、本にはできなくても、自分の代表キャリアをまとめておきたい。日本のシャンチー仲間にも「田中がNC/NV部門で何回入賞したのか覚えてない」とか言われてしまうので…(笑)。
Q、日本のシャンチーファンにひとことお願いします!
A、もっとシャンチーを好きになってください。ファンを増やしてください。
選手にはいろいろ面白い人がいるので見に来てください。 一緒に国際試合を戦うことになったりすると、めちゃくちゃに面白いです。 あと、交通費出してもらえれば、全国どこでもシャンチー教えに行きますよ。
以上
○おわりに
今回は田中選手にインタビューをさせて頂きました。
みなさま、楽しんでいただけましたか(*´▽`*)
2010年のアジア選手権対オーストラリア戦でのエピソードが個人的にはとても面白かったです。(所司先生の反応を想像すると面白過ぎて…→そして容易に想像できるところあたりも…。笑)
また、ライバルチームへのアドバイスもとても参考になります。今後若い選手が出てきたら是非このページを読んで頂きましょう! (個人的には遠方のため移動慣れと言うのは国際試合で重要なプラス要素だなとも感じました←私はこれからもずっと国際試合への移動問題に悩み続けると思います…)
そして、田中選手が世界選手権で棋聯大師を獲得できるように応援しています!
世界選手権が終わったら感想を伺えたら、と思います(^▽^)/ その時も是非よろしくお願いします!
また、今回はインタビューにご協力頂き、本当にありがとうございます!
コメント
所司先生にまで取材するとか、どこまでGJなんですか(笑)。
上海友好城市招待戦の表彰式の画像を使っていただいてるので補足すると、
左端のおじいちゃんがタイのクリシュナ選手、
私から一人置いて右側がベラルーシのコルチツキ選手です。
田中さん
コメントありがとうございます!写真の説明も頂けて嬉しいです!(承認遅くなってしまいすみません!)
いやいや、所司先生の反応を想像したら聞かなくては!となりました。笑
(とても驚いたようで、今でもよく覚えているようです。笑)
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