快速トーナメントの棋譜紹介(*´▽`*){所司和晴選手対楊帆選手

実戦譜を見る

(写真、左:楊さん、右:所司先生)

今回は楊帆さんに頂いた、快速トーナメントの評注入り棋譜を紹介します!

○大会の記事

そう言えば昨日は七夕でしたね(*’▽’)

昔は七夕祭りみたいなものが近所でありましたが、きっとほとんど今年は中止になっているのかな~と思います;;…残念ですが…、コロナ関連の色々が早く落ち着くと良いな~と思います(´・ω・`)

はじめに

今回紹介する棋譜は快速トーナメントの第4ラウンドの棋譜です。

両選手とも3ラウンドまで全勝の6ポイントで、4ラウンド目で早くも入賞にかかわる対局が行われることになりました。

快速トーナメントでは持ち時間が10分+5秒と短いですが、今回紹介する棋譜は短い持ち時間の中でも難しい内容の対局を指されているな~と言う印を受けた棋譜です。またちなみに、この大会では楊さんが優勝し、所司先生は3位に入りました。そのため大会に参加された方の中でも棋譜の質はトップクラスだと思います!

ただ見ている時は席の配置の関係で1~3台は時計が壁側を向いており、対局者以外からは残りの持ち時間が見えずにいました。なので時間での緊迫感などを感じることが出来ませんでした…(残念;)

とは言え最後の時間が切れた瞬間の「あっ…!!」と言った感じのところの雰囲気は感じ取りました・・・。確かに棋譜を見ると続きの対局も気になります…!

最終局面まででもとても良い対局なので、みなさん是非ご覧ください(*´▽`*)

棋譜紹介

評注は楊さんに頂きましたが、その後評注を読んで所司先生からもコメントを頂きましたので追記しています。

紅方:所司和晴

黒方:楊帆

結果:黒勝ち

 1. 兵七進一 炮2平3 2. 相三進五 馬2進1

開局は仙人指路対卒底炮です。紅は通常中炮が多いですが、所司選手は相を上がるのが好きです。前での開局でよく七路の相を上がっていましたが、今回は三路の相を上がりました。この試合のため準備したようです。

3. 馬八進七 車1平2 4. 馬七進六 馬8進7

5. 車九進一 象7進5 6. 車九平四 士6進5

第5回合で黒がもし卒7進1と指すと、紅は兵三進一と指し、その後卒7進1車九平三象7進5車三進三と進むと紅の車が外に出ます。これは所司選手の好きな戦法です。

第6回合で黒が卒3進1と指すと、紅には炮八平七の受けがあります。黒は得がありません。

7. 炮八平六 車9平6

所司選手が相手で、私は黒なので、この一局は引き分けでも十分に受け入れられる結果です。そのため、局面を簡単化するため、車9平6で車交換をしました。 ただ、実際のところこの手は一番良い選択ではありません。

黒の第7回合の車9平6に対して、紅は実戦では車四進八と指しましたが、士四進五や兵三進一などのほかの手を指す方が、効率が高かったようです。次に黒が車6進8と指すと、紅はついでに馬二進四で、コマをスムーズに展開することが出来ます。

このような展開があるため第7回合で黒にとって一番有力な手は車2進6と指し、中兵を攻撃する手でした。紅がもし馬二進三と指すと、黒は車2平4で両当たりにすることが出来ます。

●所司先生「士四進五が考えましたし、やはり有力でした。 兵三進一は炮8進7のジャンがありまずいです。 」

8. 車四進八 士5退6 9. 兵三進一 車2進4

10. 馬二進三 卒7進1 11. 兵三進一 車2平7

12. 仕四進五 …………

試合後の復盤でも話しましたが、私は、紅にはこの時、炮二退一と指す手もあるかなと考えていました。次に炮8進4馬三進四車7進2と進むと、局面が複雑です。

●所司先生「12着目は単に馬三進四が勝ったと思います。以下車7平5に車一平三が有力でした。」

12. ………… 卒3進1

13. 兵七進一(図1) 車7平3

(図1)

黒はここでチャンスを逃がしました。 ここでは炮3進7で紅の相をとる手がありました。 実戦では紅も黒も気付きませんでした。(10分5秒の試合でしたので、この場面でじっくり考えませんでした)

14. 馬三進四 車3平5 15. 車一平三 炮8退1

16. 炮二進四 炮8平7  17. 炮二平三 炮7平3

第17回合で、紅が強気に指す場合、炮二進三と指すことが出来ます。 このように進むと紅は攻撃モードに入ります。

18. 相七進九 後炮平2

第18回合で紅は相を上がるのは必要な手です。そのように指さないと、黒には次に馬1進3の先手があります。 紅が相を上がった後、黒は後炮平2と指しましたが、そのように指してもとくに攻勢がありません。 ですが、ここで何を指すか実際黒もわかりませんでした。

黒がもし車5進2と指すと、紅は馬四進六で対攻モードに入ります。これは黒のこの一局の穏健に指すと言う戦略方針と合いません。

19. 馬四進六 炮3進2

第19回合の黒の炮3進2は紅の馬の動きを制限する手です。 ここで黒がもし間違えて炮3平4と指すと、紅は前馬進五で象をとることが出来ます。

20. 相九退七 卒1進1 21. 車三進四 炮2進1

この2回合で黑は車5進2と指したくありませんでした。車5進2は悪い手ではありませんが、私のこの一局の戦略から外れるために指したくありませんでした。ただ、攻撃型の棋手なら絶対に指す手です。

では、何を指すのか。実際のところ黒にもよくわかりませんでした。ただ考えている間に時間がどんどん少なくなります。そのため、この2手は黒にとって明確な目的はありませんが、弱点を出さず、時間をあまり使わないように手番を相手に渡しました。難しい局面を相手に考えさせる手です。(これも快速戦の一つ技です。)

22. 兵五進一 車5平6 23. 車三平四 車6平7

24. 炮三平二 炮2進3

黒はここで、ミスをしました。 第24回合で黒は卒5進1と指すべきでした。次に兵五進一炮3平5と進み黒が中炮にすると同時に、紅の馬六進四の進路も封じることが出来ます。

25. 馬六進四(図2) 馬7進8

26. 炮二進三 …………

(図2)

紅の馬六進四はこの一局の紅の最大のチャンスの手でした。

それに対して黒の馬7進8は一番頑張った受けです。ここでもし間違えて馬7進6と指すと、炮二平五士6進5炮五退一車7退2馬四進六と進み紅が大優勢です。

第26回合で紅は炮二平五のほうが有力です。次に士6進5炮五退一車7進5相五退三馬8進6炮六平四と進むと、紅にチャンスがあります。

●所司先生「おっしゃるように炮二平五が勝りました。解説通りも紅方有利ですし、以下士6進5に山崎さんの指摘の馬四退二、炮3平8、帥五平四、車七退四、炮六平七で紅方優勢ですね。最後の炮六平七いい手ですね。途中の炮3平8で車7平8も炮六平七で紅方良いですね。なるほどです。」

26. ………… 士6進5 27. 車四平三 車7進1

第27回合、紅は黒の車7退1の手を考慮して、車四平三と車交換しました。これにより、紅の攻勢がしばらくなくなります。黒もほっとしました。

第27回合で紅がもし車四平二と指すと、車7退1車二進一車7平6炮二平一と進み、紅の底炮の攻勢があるので、黒がまだまだ苦しい局面です。

28. 馬四退三 炮2平5 29. 馬六進五 炮3退3

30. 炮六進四

ここまでで局面が均勢です。紅が炮六進四とコマを動かした直後、時計を押す前に紅の時間が切れました。 ここからまだ指し続けると、卒9進1馬三進一馬1進2のように進み、複雑な馬炮残局で、試合はまだまだ長く続きます。

この複雑な戦いが突然終了したことに、両選手とも遺憾な気持ちが残りました。


 ○おわりに

この一局で、紅は準備した開局を使い先手を取得することが出来ました。黒は多少の後手を許して、穏健に対応していきます。

複雑な局面で黒は出来る限り時間を無駄に使わないように指し進めました。途中で深く考えていないため、黒に一手重要なミスが出ましたが、それに対して紅も時間の緊迫から、正しい攻撃手段を指せませんでした。

この一局で黒は激しい攻撃で勝ったのではなく、紅の時間切れまで、紅の攻撃を受け続けた感じです。 快速戦で持ち時間が少なかったためにこのような棋譜になってしまいました。

この試合は持ち時間30分間の試合より棋譜の質が落ちます。両選手ともにミスや攻撃の手を指せなかったことがあります。ただ、10分5秒の持ち時間だったことを考えると、この試合の内容もわりと深く、高いレベルの内容を指せたかなと思います。

おわり

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