シャンチー(象棋)全日本選手権決勝戦の棋譜紹介【山崎秀夫選手対可児宏暉選手】

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(写真:左、山崎選手 右、可児選手)

今回はシャンチー(象棋)の全日本選手権決勝戦の棋譜を紹介します!

決勝戦は山崎秀夫選手と可児宏暉選手の対局です!

今回は可児選手の評注入りでお届けします!

はじめに

今回の日本選手権は5+2方式の試合でした!

5+2と言うのは予選賽5ラウンドの上位4名による準決勝+決勝(2試合)で行われる試合方式です!

〇日本選手権の記事


1日目の予選賽で山崎秀夫選手は全勝で決勝進出を決め、可児選手は2位での予選通過でした!準決勝でも両選手とも無事に勝ち上がり、決勝戦が始まりました!決勝戦では45分+10秒の持ち時間だったため予選賽(30分+10秒)よりも慎重に指すことが出来たためか、可児選手はこの一局は丁寧に指していたな~と言う印象を受けました。とは言え途中から可児選手の持ち時間がとても少なくなってきていたので「時間は大丈夫かな?」と心配しながら見ていました(´・ω・`)

そして概ね可児選手優勢局面を見てから松野さんと少し打ち合わせをして対局テーブルに戻ると…

もう終わっていた~!!

(;゚Д゚)!!!

と言うことで…

記念すべき若き新チャンピョンの誕生を目にしたのは運営をお手伝いして頂いていた秋吉さんただ一人でした…(羨ましい…)

今回紹介する棋譜はこの決勝戦の棋譜になります!

皆さん、是非お楽しみ下さい!!


〇準決勝の棋譜↓

(この一局も名局です!!)

棋譜紹介

(評注:可児宏暉)

今回紹介するのは2020年全日本選手権の決勝戦です。

私は1日目の予選を2位で通過し、2日目の準決勝も運良く勝って決勝まで来ることができました。相手の山崎さんは豊富な知識と経験がある日本の絶対王者で、私も普段から何度も練習対局で教えて頂いている師匠のような存在の方です。

そんな山崎さんと決勝の舞台で対局できることは、それ自体私にとって非常に光栄で嬉しい出来事でした。

1. 炮二平五 馬8進7  2. 馬二進三 卒7進1

3. 車一平二 車9平8  4. 車二進六 馬2進3

5. 兵七進一 炮8平9  6. 車二平三 炮9退1

7. 馬八進七 炮9平7  8. 車三平四 士4進5

9. 炮八平九 車1平2  10. 車九平八 馬7進8

11. 車四退二 (図1)

(図1)

山崎さんはどんな布局でも指しこなすオールラウンダーなので、一体どの布局を選ぶのだろうと思っていたところ、意外にもオーソドックスな中砲過河車対屏風馬平砲兌車の出だしとなりました。

ただ11回合の車四退二はこの局面では5~6番目に指されているやや少ない手で、局後の感想でも「多分あまり知らないだろう」と思い採用したとのことでした。ちなみにこの局面では他に砲五進四、車四進二、砲九進四、車八進六、馬三退五など紅には多くの選択肢があります。実際私はこの車四退二という手の存在は知っていたものの、研究したことも実戦で指されたこともありませんでした。以前からいつかこの局面での変化は網羅しないといけないと思いつつ疎かになっていた部分を見事に突かれた格好で、非常に苦しい出だしとなりました。

11. ・・・・ 炮7進5 

紅の車四退二に対し砲7進5と馬8進7で非常に迷いました。あとで調べると実戦例は馬8進7のほぼ一択で、これに対し紅は砲五平六とし、その後の黒の指し手が色々分かれるようです。対局中も恐らく馬8進7が本筋だろうなとは感じていたのですが、砲五平六のあとの構想があまり上手く描けませんでした。実戦で私が指した砲7進5は本来11回合で紅が車四進二と指した時の変化で、この変化は研究したことも実戦経験もありました。そこで少し形は違うものの戦い方を知っている砲7進5で勝負しようと思いました。

12. 相三進一 炮2進4  13. 馬七進六 炮2退1(図2) 

(図2)

全く自信のない中で指していましたが、13回合黒が砲2退1とした局面を調べると、2016年の蒋川対許銀川戦の棋譜が見つかりました。ここに至るまでの手順は若干異なりますが、この段階で特級大師同士の対局と同局面になったということは、形勢的にあまり差がないのだと思います。

14. 馬三退五 馬8退7

実戦では14回合で紅は馬三退五と馬を引きましたが、意図は十分理解できるものの紅の右辺が薄くなるので少し違和感がある指し手でした。対局中は全く考えつきませんでしたが、先ほどの特級大師同士の対局では紅は砲五進四としており、分析するとこの手のほうが良さそうです。

また馬三退五に対しては、黒も馬8退7ではなく砲7平1のほうが優っていたようです。

15. 馬五進七 炮2進3  16. 車四退三 炮2退2

17. 兵五進一 炮2平5(図3) 18. 炮五平三 車2進9

19. 馬七退八 炮5平9  

(図3)

17回合の兵五進一、砲2平5のやりとりでは黒が得をしたと感じました。ただ紅が空心砲を恐れず砲五平三としたのはさすがの強い手で、まだまだ自信はありませんでした。ちなみに砲2平5に対しうっかり士六進五と上がってしまうと、車交換後の車8進8が絶好手で黒の勝ちになります。

20. 車四平八(図4) 馬7進6  21. 兵五進一 馬6進5  

22. 炮三平五 馬5退3

(図4)

20回合の車四平八も山崎さんらしい力強い指し回しですが、局後の感想では馬六退五のほうが良かったとのことでした。私もどこかのタイミングで馬六退五と引かれる手を気にしていましたし、実戦の進行のように黒の狙われていた馬が軽快に跳ねて敵陣の脅威になったことを考えても、車四平八はやや急ぎ過ぎだったと思います。

23. 兵五進一 炮7平5  24. 仕六進五 炮9平8(図5)

25. 車八平六 炮8進3 

(図5)

あとで分析すると、24回合黒は砲9平8ではなく砲9平7とするのが正解でした。紅は放っておくと車8進8、帥五平六、砲7進3から車を抜く筋がありますし、車が縦に逃げると馬3進4から馬後砲の殺が生じます。よって仕方なく馬六進四とし、砲7進2、馬四退五、砲7平2、馬五進七と進んで、黒にだけ車があり卒も多いので黒優勢です。実戦の砲9平8に対しては馬六退七と引くのが渋い受けで、もしこれを指されていたら黒優勢なもののまだまだ大変でした。

26. 相一退三 炮8平9  27. 馬六退四 車8進9  

28. 馬四退二 前馬進2  29. 車六進一 車8退2  

30. 車六平八 車8進2  31. 帥五平六 車8平7 (図6)

(図6)

26回合で砲8平9をと指した時には「これ受ける手あるんだろうか?勝ったんじゃないかな」と心の中で思っていたのですが、わりと早く全く考えていなかった馬六退四と指され非常に焦りました。幸い時間がまだ少し残っていたので前馬進2の好手順を発見し攻めを繋ぐことが出来たのですが、このあたりやっぱり地力が違うなと感じさせられました。

32. 帥六進一 炮9退1  33. 帥六退一 炮5進2  

34. 帥六平五 炮5退5(図7)

(図7)

33回合の時点で黒がかなり優勢ですが、紅の帥六退一では別の手の方がまだ粘れたと思います。実戦では砲5進2でかなり決定的な差がついてしまいました。ただ私自身砲5進2で紅に受けがなく投了だと勘違いしていたので、ノータイムで帥六平五と指され再び非常に焦ることとなりました。このとき自陣を安全にして紛れを減らせる砲5退5という手が生じていたのは、本当に運が良かったです。

35. 炮五平三 象7進9  36. 炮三平二 炮5退1

37. 車八平四 炮9進1  38. 車四進四 車7退2

39. 炮二退二 車7平5  40. 帥五平六 車5平4

41. 帥六平五 馬3進5  42. 相七進五 車4平5

43. 帥五平六 車5平4  44. 馬八進六 将5平4 (図8)

(図8)

なんとか最後は読み切って詰みまで持って行き、この勝負を勝つことができました。

35~36回合で象7進9、砲5退1と敢えて象を連携させず端にやり、砲を引いて馬の進路を作ったところは地味ですが好判断で、少しだけ自分の成長を感じることができました。


最後に

この対局で勝てたこと、そしてこの大会で優勝できたことは非常に嬉しかったのですが、今冷静に振り返ってみると本当に運が良かっただけだなと感じています。自分が実力的にまだまだなのは痛感しているので、のちのち今回の優勝がまぐれだったと言われないよう今後も頑張っていきたいです。


可児選手、優勝本当におめでとうございます!

また素晴らしい評注を頂き、ありがとうございます!

今後の可児選手のご活躍を応援しています( *´艸`)

おわり

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