シャンチー(象棋)全日本選手権の棋譜紹介【可児選手対所司選手】

実戦譜を見る

シャンチー(象棋)全日本選手権大会の棋譜を紹介です!

紹介する棋譜は去年の世界選手権の日本代表メンバーである可児選手と所司選手の棋譜です^^

今回は優勝された可児選手の解説入りでご紹介させて頂きます!

皆さん是非棋譜並べをお楽しみ下さい♪

はじめに

毎年大きな大会では終了後に可児さんや酒井さん、所司先生と言ったシャンチー仲間の皆さんに解説入り棋譜を頂いております。今年は優勝の可児選手と長年の目標であった所司先生を倒された田中さんに棋譜を頂くことになっております^^(田中さんの解説入り棋譜は今後のお楽しみに!と言うことで^^)

実のところ私は大好きな酒井さん可児さん戦の対局の棋譜を頂きたかったのですが、対局終了後に「良い棋譜でしたか??(わくわく)」と聞いたところ、すご~くどよ~んとした空気で二人から「いや全然・・・」と言われまして、棋譜ゲットの目標を達成することが出来ませんでした(´・ω・`)ザンネン

それでもめげずに「棋譜頂戴!!!」とお願いしたところ可児さんから今回の棋譜を頂くことが出来ました!!可児さんありがとうございます~(∩´∀`)∩


〇日本選手権の記事

日本選手権の大会について、日本シャンチー協会の公式サイトに結果等がございますので是非ご覧ください!

また、可児さんの棋譜は当サイトでは沢山紹介しています!

是非バックナンバーからも可児さんの解説入り棋譜をお楽しみ下さい♪

棋譜紹介

2023年全日本選手権第1ラウンド

持ち時間30分+10秒

紅方:可児宏暉

黒方:所司和晴

結果:紅勝ち

今回紹介するのは2023年全日本選手権の第1ラウンド、所司さんとの対局です。

所司さんは長年日本人プレイヤーのトップとして日本シャンチー界をリードされてきた方で、昨年マレーシアで行われた世界選手権には一緒に日本代表として参加しました。今回の全日本選手権では、そんな所司さんと第1ラウンドから早速当たることになりました。

1. 炮二平五 馬8進7  2. 馬二進三 卒7進1

3. 車一平二 車9平8  4. 兵七進一 炮8進4

4回合で車二進六と過河車にせず、一旦兵七進一と様子を見るのは最近私がよく採用している指し方です。これに対し、それならばと黒は機敏に炮8進4と封車してきました。これは紅の右車の動きを制限すると同時に、タイミングよく炮8平5と中兵を取る手を狙っている積極的な手です。

5. 炮八進二 卒3進1  6. 兵七進一 象3進5

5回合では馬八進七が多いですが、いきなり炮八進二とする変化を選びました。これは次に兵三進一から兵卒交換をすることで、三路の馬の進路を確保しつつ黒の炮8平5を消して封車の圧力を緩和しようという狙いです。

これに対して黒はいくつか指し方がありますが、卒3進1と卒を突き捨てる手を選びました。この手は紅に狙い通り兵三進一とはさせないという強い対応の手です。

7. 炮八平九 炮2平1

7回合は兵七進一と兵を逃げる手もありますが、仮にいつか象5進3と兵を取られてもその瞬間黒は象が乱れておりやや悪形なので、ここでは兵を逃げない指し方を選びました。

本譜の炮八平九は兵三進一と突けなくなって狙いを失った炮を使い、相手の動きを牽制した手です。これに対し黒は馬2進1と砲2平1の2択ですが、馬を馬2進4と中央に跳ねる余地を残しておく意味で炮2平1のほうが若干良く、実戦例もほとんど炮2平1です。

8. 馬三退一(図1) 炮8進1

図1

馬三退一は少しひねった手ですが、この局面では最も多い手です。紅は当初の狙いだった兵三進一が実現できなくなったことで、このままだと右辺の封車の状態が続いてしまい少し面白くありません。そのため封車していた黒の炮に働きかけて状況の打開を図ります。本譜の炮8進1は引き続き紅の右車の動きを制限しつつ、紅の左馬の動きも牽制しており有力な手です。他には炮8平5という手もあり、以下炮五進四、士4進5、車二進九、馬7退8、炮五退二のような変化でいい勝負になります。

9. 車九進一 卒1進1  10. 炮九進三 馬2進1

11. 兵三進一 車1平2  12. 兵三進一 車2進9

紅は左車を横車に使い、三路の兵を突いていきます。もし11回合で黒が素直に卒7進1と取れば、車九平三として根がなくなった黒の左馬を狙っていき好調です。本譜は車1平2と一旦馬取りをかけてきましたが、無視して強く兵三進一と取り込みます。もしここでひるんで馬八進九とすると、卒7進1、車九平三に車2進5と卒を守る手が生じてしまい紅は大変です。

12回合で黒は車2進9と馬を取りましたが、象5進7と兵を取っておく手も有力です。象の形が乱れますし紅の主張を通すようでやや指しづらいですが、本譜よりも穏やかな戦いになります。この象5進7の変化は2010年に王斌特級大師と蒋川特級大師の対局があり、結果は和になっています。

13. 兵三進一 炮8平6(図2)

図2

黒の炮8平6は、馬が取られそうな瞬間に車をぶつけるというシャンチーでよくある手筋です。黒としてはこれで車交換をすれば馬が1枚多い状態を維持できるので、兵が多い紅に対抗できるという考えでした。しかしここでは紅に抜群の切り返しがあります。

14. 車二進三 炮6平9

車二進三は黒が見落としていた妙手で、これで形勢がはっきり紅優勢になりました。黒は車交換しても馬一進二と車を取り返した手が炮取りになるため、馬得を維持することができません。そうなると兵が多くてすでに河を渡っている紅がはっきり良くなります。

この車二進三があるため、13回合で黒は炮8平6とせず車2平3としておくほうがまさりました。以下兵三進一、車3退5と進むと、黒は対抗できる形です。

15. 車二平四 炮9平8  16. 兵三進一 士6進5

14回合黒の炮6平9がひねり出した感じの手で予測していなかったので、ここで初めて時間を使って考えました。車交換してから相三進一と炮を取るような進行でも紅優勢だと思いましたが、この位置の炮をわざわざすぐに取る必要もないと感じ、車二平四とすぐに駒損を回復せず将来の攻撃を見据えた手を選びました。この判断はソフトの解析でも最善とのことで良かったです。

16回合黒は士6進5と先受けのような手を選びましたが、車2平3と相を削りながら兵取りをかけて、少しでも嫌味をつけられるほうがこちらとしては嫌でした。

17. 車九平七 炮8進2  18. 馬一進三 炮8平9

17回合を迎えた時点で、持ち時間には大きな差がありました。おそらく紅が残り26~27分、黒が残り5分くらいだったと思います。そのため対応手を考えやすい直接的な攻撃の手ではなく、多少緩んでも安全に手番を渡すほうが黒は困るだろうと思いこのあたりは指しました。

19. 兵三進一(図3) 車8進3

図3

紅の狙い通り黒にミスが出ました。すでにだいぶ苦しい状況ですが、8路の車が上がると底線の守りが薄くなってしまいます。中卒を守るなら、車2退6のほうがまだ多少粘りがききました。

20. 兵三平四 車2退4 21. 車七平四 象5進3

黒の車2退4は車2平7からの反撃を見据えた手ですが、次の車七平四が紅の決め手です。次に兵四進一からの詰みがありますが、8路の車が底線を離れたことで黒には有効な受けがありません。黒の象5進3は兵を取りつつ、上部に逃げ道を確保してなんとか即詰みを回避した手です。

22. 炮五進四 車8平5 23. 兵四進一 士5退6

24. 前車進六 将5進1 25. 後車進七 将5進1

26. 前車平五 将5平4 27. 車五平六 将4平5

28. 車六平五 将5平4 29. 車五退三 車2平4

30. 仕六進五(図4) (紅勝)

図4

色々勝ち方はありますが、22回合で炮五進四と砲を捨てたのは分かりやすい勝ち方だったと思います。士5進4としても兵四進一から即詰みなので黒は車8平5と炮を取るより仕方ないですが、紅は士を削りつつ最後に車を取って大きく駒得できます。依然黒は非常に危険な状況のままで、反撃の手段もなくここで投了となりました。

一局を振り返ると、事前の研究がうまくはまって形勢的にも時間的にも優位に立ち、そのリードを落ち着いて勝ちに繋げることができた快勝譜でした。大会の第1ラウンドでこのような良い対局が出来たことが自信になり、その後の優勝につながった気がします。大会全体で見ると6勝1和でしたが、危なっかしい内容の対局も何局かあったので、気を引き締めて来年も優勝できるよう1年間頑張りたいと思います。


〇おわりに

可児さん、ありがとうございます^^

今回の棋譜は前半から一手一手丁寧に解説して下さっているので初心者の方にも読みやすく勉強になる解説だったと思います!

今年は国際大会もあるので、そちらでの可児さんのご活躍も期待しています!!

そして本当に優勝おめでとうございます!!


可児さんのインタビュー記事も是非ご覧ください↓

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