シャンチー(象棋)オープン大会アヤメ杯決勝戦の棋譜を紹介します!

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(写真:優勝決定戦の様子、井上さん(左)と酒井さん)

今回は3月1日に行われたアヤメ杯の決勝戦の棋譜を紹介します!

〇アヤメ杯の記事

はじめに

アヤメ杯の最終ラウンドでは暫定1位の井上さんと、暫定2位の酒井さんによる優勝決定戦が行われました。

井上さん(紅)は暫定1位なため、引き分け以上で優勝が決まります。酒井さんには勝つ以外に優勝のチャンスがありません…。

そんな決勝戦ですが、結果は酒井さんが黒で勝ち、優勝されました!

さて優勝決定戦ではどのような対局がされたのでしょう…|д゚)

ちなみに井上さん、酒井さん両選手とも国際大会へ出場されている日本を代表するシャンチー(象棋)プレーヤーです!

国内選手同士の対局を是非お楽しみください(*´▽`*)

棋譜紹介

(棋譜の間に、酒井さんに頂いた感想コメントも紹介させて頂いています )

紅方:井上奈智

黒方:酒井清隆

結果:黒勝

1. 炮二平四 馬8進7 2. 兵三進一 車9平8

初手の士角炮は井上選手の得意な開局です。この開局の特徴はバランスのとれた、攻守兼備です。相手の手を見て、様々な陣形に変換することが出来ます。 それに対して、黒の馬8進7は多く指される対応です。そのほかには、炮2平5や卒7進1もあります。

3. 馬二進三 炮8平9 4. 馬八進七 卒3進1

5. 炮八進四 馬2進3 6. 炮八平七 車1平2

7. 車九平八 炮2進2 8. 相七進五 卒7進1

9. 車八進四 象3進5 10. 炮四進四 車8進6(図1)

(図1)

第10回合まで、両選手とも棋理通りに陣形の配置をしてきました。両選手の開局の基礎能力の高さが伺えます。

第10回合での炮四進四は局面を複雑にしようと言う思い切った一手です。この手自体に問題があるわけではありませんが、ここは試合全体の結果のためにポイントとなる重要な手だったように感じます。 この試合の背景として、紅は引き分けをとれば優勝することができます。これを考慮すると、兵七進一で兵交換により局面を簡単にして進める方が、絶対に勝たなければいけない黒にとって嬉しくない手のように感じました。

(酒井さんの感想:10. 炮四進四 は、馬の根がなくなって馬が弱くなりますし、黒から車8進6~車8平6~卒5進1の狙いも生じるため、紅は無理しすぎという感覚です。)

11. 炮四平三 卒5進1 12. 兵三進一 馬7進5

13. 炮三平四 車8平7 14. 車一進二 炮9平7

(酒井さん:13. 炮三平四 は 13. 兵三平四 の一手と思っていました。以下、13… 卒5進1 14. 兵五進一 炮2平6 15. 車八進五 馬3退2 16. 兵五進一 炮6平9 17. 車一平二 車8進3 18. 馬三退二 馬5進7などの変化があり、難しいです。 本譜はいい感じに車を活用できて、黒満足な形です。)

15. 炮四平三 車7退2 16. 馬三進四 車7平6(図2)

17. 馬四退二 車6進4 18. 車一平四 炮7進7

(図2)

ここまで数回合の中局はお互いに譲ることなく見事な展開です。

第17回合の紅の馬四退二は仕方のない手です。ほかの手を指すと、次に黒は卒5進1車八平五車6進1と進み、コマ得です。この変化を見ると、第16回合の馬三進四が最善ではなかったようです。第16回合では馬三進二車7平8車一平四と進む展開もあったかもしれません。このように進むと紅は十分です。

(酒井さん:相を1枚削ってポイントを稼ぎましたが、これを優勢にもっていくにはまだまだ大変な局面です。)

19. 士四進五 車6退1 20. 士五進四 炮7平9  

21. 馬二進四 馬5進7 22. 相五進三 車2進1

23. 炮三進一 車2進2 24. 炮七平三 馬3退5

25. 前炮退二 象5進7 26. 炮三平五(図3) 馬5進3

(図3)

ここまでの数回合もまた両選手とも見事な展開です。

第26回合の炮三平五は中級者によく見られるミスです。もともと三路の炮には根があるので逃げる必要はありません。炮三平五のジャンにより、紅の炮が黒の車と馬に同時に狙われます。また、このジャンにより黒の2路の炮も車以外にさらに馬での根も付くことになりました。このことから紅の炮三平五は先手に見えるのですが先手のあとすぐに後手になります(「先中後」の一手です)。

ここでは直接馬七退五と指すと、黒は車2平4と指すことが出来ないので、紅はまだ対抗することが出来ます。

(酒井さん:第25回合までは難しい形勢だと思っていましたが、26. 炮三平五を見て優勢を感じました。次の26…馬5進3がピッタリです。)

27. 馬七退五 車2平4 28. 馬五進三 炮9平4  

29. 馬三進二 炮4退4(図4) 30. 馬二退三 炮4平7

(図4)

第30回合紅で紅は最後のチャンスを失いました。もうすでにこの形(紅士相不全)では、守る方針では紅が守り切れません。

ここでは紅は馬二進三と対攻する選択しかありません。次に炮4平7車八進一!馬3進2馬三進五車4平5(士6進5なら馬五進七紅逆転)馬五進七将5進1馬四進五と進むと、局面は黒優勢ですが、紅も2つの馬で混戦でのチャンスを狙える可能性があります。

31. 馬四退五 炮7平4 32. 馬三進四 馬3進5

第31回合で黒が卒5進1と指すと、車八平五車4平5車五平三車5進3馬三退四炮2退1と進み、黒は中路をコントロールし、ほぼ勝勢です。

33. 馬四進五 車4平5 34. 車八進一 象7退5

35. 車八退一 炮4進1 36. 兵一進一 炮4平1

37. 車八退一 炮1進1 38. 馬五退七 炮1退3(図5)

(図5)

ここまでで紅は士相が少なく、劣勢です。

結果は黒の勝ちです。

(後半棋譜を省略)

(酒井さん:本局を振り返ってみると、中盤は難しい戦いが続いたゲームでしたが、第26回合で優勢になった後は何とか勝ち切れてよかったです。)


〇おわりに

日本の大会では優勝決定戦は中国系の方とベトナム系の方が指されることが多いので、今回は日本選手同士の対局が実現してとても嬉しく思います(^^)

優勝された酒井さん、準優勝された井上さん、

お二人とも本当におめでとうございます(*´▽`*)


また、お二人の棋譜を見て感じたのですが…

日本人強い!|д゚)

今後の国際大会が楽しみです!!^^


〇対局中のお二人を見守るみんな

とても緊張感のある瞬間でした!!


〇おまけ…

実戦の10回合の紅の炮四進四の手が私にはとても難しい手だな~と思い、一週間わりとずっとこの手の意味を考えていました。井上さんは士角炮が得意な方なので四路の炮の使い方が詳しいと思うので、井上さんの炮の動きにはわりと注目して棋譜を考えていました。でもよく分からず…;;

酒井さんにそれを話したところ実戦のように進みその後「もし 11…卒7進1 12.車八平三 と指したら、次に炮三進三の狙いがあって黒は困るという 意図は分かりますけどね。」と…!おお、なるほど!そう言うことか…!(内心:でもな~…そう進むことはほぼないような…?う~ん…酒井さんもきっとこの手の本当の目的を知りたいですよね…?←決めつけた人)・・・一週間も真面目に考えたので…そろそろ答えを聞いてもいいと思う…!|д゚)?と言うことで・・・

井上さんに直接聞いてみました(・ω・)ノ

「炮四進四」の手の目的を教えて下さい!!

そして井上さんのお返事…「炮四平三と馬を制圧することと、左炮を安定させることです。ディフェンスラインを高くして局面全体を制圧する意味です。」

結論から申します。

井上さんはやっぱりかたかった…!

井上さん=かたい指し方をする人と言うイメージですが、まさに井上さん!と言う手だったわけです。分かって幸せです(←?)。確かに言われてみるとまさに井上さんなのですが…うんうん…。そして今回の対局はまさに酒井さんな棋譜でもあります。と言うことで、なんとな~く二人の個性が凝縮された一局のように思います(*’▽’)


みなさん、次回の記事もお楽しみに(^^)/

おわり

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