シャンチー(象棋)インターネット大会”橘梅杯”の棋譜紹介【劉家康選手対可児宏暉選手】

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シャンチー(象棋)インターネット大会”橘梅杯”の棋譜を紹介します!

今回は可児宏暉選手の評注入り棋譜を紹介します!

皆さん是非お楽しみ下さい!(^^)!

〇 ”橘梅杯” 所司先生の棋譜紹介

可児さんの棋譜は沢山紹介していますので、是非他の棋譜もお楽しみ下さい♪

とくに上海棋院での華辰昊選手との棋譜は名局ですし、今回の棋譜とも一緒によむと相性が良さそうなのでご覧ください^^

また、今回紹介する一局は中炮過河車対屏風馬平炮兌車紅急進中兵の開局なのですが、こちらも以前可児さんに頂いた合宿プレゼンの記事があるのでご興味のある方は是非ご覧ください(*´▽`*)

棋譜紹介

橘梅杯第4R 2022.7.3

持ち時間 20分+1手10秒加算

紅方 劉家康(マカオ)

黒方 可児宏暉

結果 黒勝

今回はオンラインで行われた橘梅杯という大会の第4ラウンド、マカオの劉家康選手との対局を紹介します。

この大会ここまで私は1勝2和で、上位2名による優勝決定戦への進出は厳しい状況でした。そのため結果よりも次につながるような良い内容を指そうと心がけて臨みました。

1. 炮二平五 馬8進7  2. 馬二進三 卒7進1

3. 車一平二 車9平8  4. 車二進六 馬2進3

5. 兵七進一 炮8平9  6. 車二平三 炮9退1

7. 兵五進一 士4進5  8. 兵五進一 炮9平7

9. 車三平四 卒7進1  10. 馬三進五 卒7進1

11. 馬五進六 卒5進1(図1)

(図1)

 ここまで中炮過河車急進中兵対屏風馬平炮兌車の布局に進んでいますが、11回合卒5進1が近年流行しているもののまだ実戦例の少ない新しい指し方です。私はこの指し方を研究したことがあり、以前協会の技術報にも「急進中兵最前線」として研究内容を寄稿しました。ただまだまだ理解が足りないせいか実戦で指しこなすのは結構難しいという印象で、あまりこの変化を採用したときの勝率は高くないのが現状です。とはいえ対急進中兵ではどの変化も複雑で難しいので、当面はこの変化でいこうと決め今回も採用しました。

なおここでは車8進8とするのが最も多い普通の指し方になります。

12. 馬六進七 馬7進8  13. 車四平三 炮2退1  

14. 相三進一 車1進2  15. 車三平七 炮2平3

 14回合紅の相三進一は自然な手で時々指されますが緩着です。ここでは馬八進七か兵七進一が正常な変化となります。紅は相が上がったことにより15回合で車三平七と馬を守ることができますが、炮2平3が力強い反撃の一手です。 

16. 馬七退五 象3進5

 16回合馬七退五は正着です。ここでは馬七退九と引く手を以前天天象棋で指されたことがあるのですが、車1進1、車七平九、炮3進8、士六進五、炮3平1、馬八進九と進み黒優勢です。ただ黒の右辺が非常に手薄なので、優勢とは言ってもまだまだ油断できる形ではありません。

 また本譜馬七退五に対する黒の象3進5は大事な手です。この手を指さないと馬五進四または馬五進六のように強引に炮の連携を断つ手があり危険です。

17. 炮八平六 車1平4  18. 仕六進五 馬8進6

19. 馬五進三 車8進2

 19回合紅の馬五進三は次に車七進二から駒得を狙いつつ、馬の位置を立て直す味のいい一手です。実戦はここでかなり悩んでしまったのですが、実は車七進二には車8進3という返し技があり、逆に紅の車が死んでしまうためこの順は成立していませんでした。そのため黒は本来ここで左の車を移動させる必要はなく、卒7進1のように指しておくほうが本譜より良かったです。

20. 馬三退四(図2) 卒7進1

(図2)

 卒7進1の局面では、ソフトの示す最善は馬6進8でした。対局中もこの順は少し考えたのですが、炮五平二、馬8退7、炮二進四のように進むと紅に押さえつけられているような感じがして読みを打ち切ってしまいました。ただここで車8平6とすると意外と紅は馬の扱いが難しく、黒としては十分戦える展開でした。

 またソフトによると本譜の卒7進1は次善手でした。攻めとしては遅い手ですが、次こそ馬6進8が厳しいのでなんとか間に合うのではないかという判断です。

21. 相一進三 卒7進1  22. 車九進二 卒7平6

23. 車九平八 車8進7

 紅は出遅れていた左車を出動させ攻め合いです。

細かいところを言うと、22回合黒は先に車8進7としてから卒7平6とすべきでした。本譜の進行では影響ありませんでしたが、23回合紅に車七平二とする手があり、車8平6、炮五平四と進むと難解な局面になってしまいます。また車交換に応じると攻めの迫力が落ちてしまいます。ソフトの解析ではどちらの変化でも本譜と大差なく黒優勢と評価していますが、この変化に進むと描いている攻撃プランが崩れてしまい、自信のない展開になっていました。

24. 馬四進二 炮7平6

 炮7平6が攻めにも働くので、この交換は黒にとって得だと思っていました。ただ紅は他に有力な手はなく、黒の象の連携を断つ意味もあるのでこの馬四進二が最善だったようです。

25. 車八進七(図3) 士5退4

(図3)

 車八進七のジャンに対する黒の応手は炮3退1、車4退2、士5退4と3通りありますが、本譜の士5退4が唯一の正解です。炮3退1だと、炮五進五のジャンに車6平5と取れず(車七進三から詰み)、士5退4、車七平四(炮を取ると、車4進5で黒勝ち)となったとき、卒6平5と取れないため(取ると炮五退六がジャンになり大変)、かなりややこしいですが紅優勢となります。また車4退2だと、炮五進五~車交換のあと車七進二と炮を取ってこれは分かりやすく紅優勢です。

本譜の士5退4は見た目かなり勇気のいる一手でしたが、この手をしっかり指せたことがこの後の勝ちにつながりました。

26. 車七平四 卒6平5

 紅は車七進二と炮を取っても、そのあと厳しい後続手がないため黒に車4進5とされ(落ち着いて士6進5でも良いです)、以下車七平四、車4進1、炮五進五、卒6進1、士五退四、車4平6で黒の一手勝ちです。そのため本譜の車七平四は紛れを狙った粘り強い指し方でした。

27. 帥五進一 車8平6  28. 車四進二 車4進5

 ここまでで黒は思い描いていた攻撃が実現し、調子よく紅を追い詰めています。

 紅としては苦しい展開ですが、28回合では炮六進七という勝負手気味の粘り強い手がありました。この手は車4退2のあと車交換から車四進二と炮を取り、まだまだ勝負を長引かせようという指し方です。もし指されていたら実戦でもこのように進んだと思いますし、そうなったら黒としてはまだまだ大変でした。

 ただソフトの解析では炮六進七に士6進5と上がる妙手がありました。以下普通に炮六平三、士5退4、炮三平六と進むと黒は何をやっているか分からないように見えますが、これには意味があります。士6進5と上がる前に馬6進7とすると、車四退四、車6退2に炮六平四~炮四退七とする返し技がありますが、士を取らせた場合この順が消えています。また紅が炮三平六と黒の2枚目の士を取らなかった場合には、馬6進4から車を抜く筋が生じています。これは炮が象を取る前の六路にいた状態では、馬6進4に炮六退六が返し技として生じていたため成立していなかった順です。いずれにせよ相当難易度の高い指し方で今の自分の棋力では厳しい手順でした。

29. 車四退三(図4) 馬6進7

(図4)

 車四退三が全く読みになかったこともあり見落としてしまったのですが、ここでは車4平5が生じていました。もし相七進五と取れば、馬6進4~炮3平4で詰みです。

30. 炮五平四 車4進2

 車4進2が狙っていた決め手で、これで必至がかかりました。

31. 馬二進三 炮3平6  32. 相三退一 車6平5

33. 帥五平四 車4退1

 32回合紅の相三退一は車6平5~馬7進8の詰みを消す意味がありました。そのため車6平5~車4退1での詰みとなりました。


〇おわりに

この大会は運営の関係でいつもより観戦できた対局は少なかったのですが、見ることの出来た対局から、マカオ選手の棋力の成長の速さを感じました。日本はマカオとこれまでに何度も交流会をしていますが、毎回マカオの選手は強くなっているな~と感じます。ただ今回はとくにそれを強く感じました。今回の可児さんの相手の劉家康選手も前回よりもとても強くなっており、とても強く印象に残りました。

また、台湾の選手のみなさんもとてもお勉強をされているな…と感じる棋譜でした。

コロナでインターネット大会が増えたことでこの数年間多くの選手の進歩を身近でみることが出来ていますが…とくにマカオ選手の成長は止まることがなく…今後の世界選手権やアジア選手権では強豪ライバル選手になるな・・・と思いました!マカオの女子選手も本当にお強かったです…(大変だ~~~)

日本のみなさんと私ももっと頑張ろうと思いました!!

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