シャンチー(象棋)世界選手権の棋譜紹介

実戦譜を見る

今回はシャンチー(象棋)の世界選手権の棋譜を紹介します!

可児選手の解説入りでの紹介です^^

みなさん是非お楽しみ下さい!

〇世界選手権の結果等はJXAの公式サイトをご覧ください!

はじめに

今回紹介する棋譜は可児さんの世界選手権の最終ラウンドの棋譜です!

可児さんにとってはとても重要な一局であったことと、内容もとても気持ち良く指せている内容でしたので評注入りの棋譜をブログに下さい~と依頼しました^^

当たり前なのですが…最終局が終わった後は可児さんからとてもやりきった感が溢れていました(^^)

私は帰りの空港でこの対局の棋譜をみたのですが…可児さんのやりたいことが実現できすぎている棋譜で可児さんすごいなと思いました。そして同時に(とくに最後の三回合あたりで)「相手これは辛いな~~…」と思いました;;最終局にこの内容で勝った可児さんと、負けた相手では全く違う世界選手権の感想になるだろうな~と思ってしまいました;;(相手も閉会式では普通だったのでそんなに気にしていないのかもですが、私だったらぐったりだ…)

皆さんも是非最終局の可児さんの強さをご覧ください(*´▽`*)

可児さんへの世界選手権のインタビューも合わせてご覧ください^^

棋譜紹介

今回紹介するのは、マレーシアで行われた第17回世界選手権の最終ラウンド、ブルネイの庄力铭選手との対局です。

ここまで8ラウンドを終えて、私は8ポイント(3勝3敗2和)で指し分けの状況でした。そのため最終戦次第で、この大会を勝ち越しで終わるか負け越しで終わるかが決まります。またNCNVの順位の点でもこの1局は非常に重要で、勝てば1位決定、和だと他の選手次第、負けたら多分ダメという状況でした。そのためなんとしても勝ってNCNV1位を獲得し、勝ち越して気分よくこの大会を終えたいと思い対局に臨みました。

世界選手権第9ラウンド

持ち時間60分+30秒

紅方 可児宏暉

黒方 庄力铭(ブルネイ)

結果 紅勝

1.炮二平五      馬2進3      2.馬二進三      炮8平6 

3.車一平二      馬8進7      4.兵七進一      卒7進1 

5.馬八進七(図1)      炮2進2     

図1

中砲対反宮馬の開局になりましたが、5回合馬八進七は私が最近よく指しているやや少ない変化です。ここでは黒が砲6進5と入り、砲五進四に対し①砲6平2と駒得する難しい変化②素直に馬3進5と取る落ち着いた変化の2通りが正常な布局進行となります。また黒の砲6進5以外の変化は、ソフトの解析によるとすべて紅ペースになりますし、過去の自分の経験からも紅が指しやすいという印象があります。

相手は私の馬八進七を見て、指し手が一旦完全に止まりました。そしてしばらく考えたあと、砲2進2という前例のない手を選択しました。これはおそらく普通に砲6進5だと私の研究にハマる危険を感じ、未知の力勝負に持ち込もうとしたのだと思います。

6.炮八平九      炮2平4 

全く想定もしておらず経験もなかった砲2進2に対し、どういう方針で駒を展開するか非常に悩みました。できればこの砲2進2を緩手にしたかったのですが、この布局で通常よくある手を指すと砲2進2が生きてくる可能性を感じたからです。例えば、車二進六と指すと、タイミングを見て砲2平4とし、次に砲4退1と車を追い払う手と車1平2と車を活用する手を見せるのが味が良い手になることがあります。また単に馬七進六と跳ねると、砲2平4としてブロックする手があり、これも砲2進2の顔が立つ気がしてやりにくかったです。

そこで実戦では考えた末に砲八平九と指しました。これは次に車九平八と左の車を使う手を用意するのと同時に、砲6進5とされた時に駒損しないようにした手で、平凡ながら着実な一手でした。

 これに対し黒は砲2平4としてきました。対局中は車1平2を本線で考えており、砲2平4は全くノーマークだったのでビックリしましたが、さすがに黒は両方の車が出遅れる格好になるので、この手は緩手ではっきり紅ペースだろうと感じました。

  7.車九平八      士4進5      8.兵五進一      馬7進6 

  9.車八進三      卒9進1     10.車二進六      卒7進1 

8回合で再び紅はどういう方針で指すか迷ったのですが、開局でのリードを生かすためにも緩むことなく真ん中から強く攻めていきました。これは自分の棋風にもあっていましたし、ソフトの分析でも最善でした。

 9回合黒は車1平2とぶつけてくるだろうなと読んでおり、その時車交換と車八平六のどっちが良いか悩んでいたのですが、実戦では落ち着いて卒9進1でした。この手はこの瞬間かなり甘いですが、次に車9進3とすれば車が重要なラインの守りに働き、反宮馬らしい粘り強さが出てくる形となります。そのため私は10回合で車二進六と先着し、相手の主張を通さず激しく戦う順を選びました。

11.車二平四      馬6進7     12.兵五進一      炮4退1 (図2)

13.車四進一      士5進6    

図2

黒も反発し、局面は本局最大のポイントである13回合を迎えます。焦点は車取りをかけられている紅の車をどうするかです。

車四退一と普通に1個引いておいても、砲6平5、兵五平六のような進行で紅が良さそうだと思っていましたが、駒交換になりやすく下手をすると和に逃げられる危険があるなと感じました。

そのため実戦では車を捨て、一切緩まず一気に攻め倒す方針でいきました。非常に大事な1局だっただけにリスクのある選択をするのは勇気がいりましたが、どっちの手が失敗した時に後で後悔しないかを考え、これでダメだったら仕方ないと覚悟を決めて車を捨てました。

14.兵五進一      士6進5   15.兵五平六      将5平6    

16.炮五平四      将6平5    17.兵六進一      車1平2    

18.車八平四      馬3退1    19.兵六進一      車2進1    

20.炮四進五      車2平4    21.炮四進一      車4進1    

22.炮四平九      車9進3

かなり時間を使って念入りに読んでいたこともあって、車を捨ててからは流れるように攻めを繋げて駒得まで持っていくことができました。

22回合黒は車9進3としましたが、ここでは車9進2と車を連携させ、紅に車交換を求めながら防御する形を取られるほうが嫌でした。この場合車交換しても黒の駒損は解消できませんが、車なし対車ありの構図になると、駒得でも勝つには技術が必要で少し大変です。

実戦では車9進3を見て、この勝負勝てると自信が持てました。

 23.前炮進一      象3進5     24.車四平八      将5平4 

 25.仕六進五      士5進6(図3)     26.馬七進五      卒7平6 

 27.車八進六      将4進1     28.車八退一      将4退1 

 29.車八進一      将4進1     30.車八退四      将4平5

図3

26回合あたり、勝勢なのは感じていましたが、具体的な攻め方はかなり悩みました。一番の攻撃の型としては後砲平八という手が浮かんでいたのですが、車4平1のような形で対抗された時、しっかり攻め切れるか自信がありませんでした(ソフトで分析すると正しく指せば攻めきれるようです)。ここまで慎重に読み進めたせいであまり時間は残っておらず、実戦では30回合車八退四と引いて、多少緩んだとしても攻めが切れなさそうな安全策を選びました。

 31.馬五進六      卒6平5     32.後炮平六      車4平1 

 33.炮九退三      卒3進1     34.兵七進一      車9平1 

 35.炮六平九 (紅勝)(図4)

図4

32回合黒は車4平1で先手を取る予定だったと思いますが、砲九退三の返し技を見逃しました。普通に砲を取ると馬六進七で車が取られますし、9路の車に当たっているので放置も出来ません。諦めムードを表情に見せつつも反撃の機を狙っていた相手でしたが、この手を見て明らかに動揺しているのが分かりました。

これに対し卒3進1は当然の応手でしたが、こちらは強気に兵七進一と取り込みます。今度は車9平1と別の車で砲を取れますが、それには砲六平九がぴったりでした。黒は前車進三から一応車と馬砲の交換になるため部分的には駒損ではないですが、すでに1枚駒損をしているので全体で見たら駒損ですし、先ほど紅が取り込んだ兵も攻めに効いてくるので受けも大変です。したがって砲六平九を見て粘って指し続ける心が折れ、投了となりました。

〇最後に

最終成績に大きくかかわる重要な1局でしたが、相手の緩手を厳しくとがめることができて完勝となりました。内容的にも非常に気持ちよかったですし、この1局で勝ち越しとNCNV1位を決め、良い形で初めての世界選手権を終えることができました。


可児さん、解説入り棋譜を頂き、ありがとうございます^^

皆さん、可児さんの大成功棋譜はいかがでしたか^^(すごいですよね!!)

こう言った対局を世界選手権で指せるのは本当にすごいことです!!

今後も可児さんの国際大会での活躍にとても期待しています^^

次回は所司先生の解説位入り棋譜もご紹介しますので、そちらもお楽しみに♪

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